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愛しい貴方と共にこれからも
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「ニーナ、ケーキばかり食べてないで、一度お水を……」
「嫌だ嫌だ!! お母様なんて大嫌いなんだから!! お水なんて絶対飲まないわ!!」
「わ、チビがミルク吐いた!!」
両親の結婚三十周年を祝しての庭園でのお茶会は、可愛らしい声や大人の悲鳴で賑やかなものとなっていた。主に大騒ぎとなっているのはフィオネとマーリットの周辺だが、招待客は皆見咎めること無く温かい視線を向けていた。
「何だか、うちの子の小さい頃を思い出すわ」
「ええ。うちも娘が夜泣きが酷くて……」
テーブルでは、招待客達が過去を懐かしむようにそんな会話を繰り広げていた。
「も、無理。ちょっと休憩」
マーリットがそう言って、席に座った。その顔には、酷いクマが出来ていた。
「まさか、新生児がこんなに大変だなんて思ってもみなかったわ」
「私も……イヤイヤ期がこんなに大変だなんて想定外よ」
姉二人が同時に深いため息を吐き、つい私は吹き出してしまったのだった。
「お茶会の準備、色々任せちゃってごめんね、ルイーセ」
「ホント。助かったわ」
このお茶会の準備を始める時期に、丁度マーリットの出産とニーナのイヤイヤ期が重なってしまったのである。そして姉に代わって、私が主体となって準備を進めたのだ。
「テーブルコーディネートも、お茶菓子もとっても素敵よ。流石、我が妹だわ」
「ふふっ、実は、こういうのが得意なお友達から色々アドバイスをもらったの。だから、私一人の力ではありませんわ」
お茶会の主催者となるのは初めてだったので、何も分からぬ状態からのスタートであった。
そこでエリザに相談したところ、テーブルコーディネートの仕方から招待状の書き方に至るまで全部分かりやすく教えてくれたのだ。
花の決闘後、私はエリザから正式に謝罪を受けた。しかし彼女に対して怒りを抱いてはいなかったので、友達になりたいとその場で提案したのである。
手紙のやり取りから始まり、今ではフランチェスカと彼女と私の三人でお茶会をする程の仲になっていた。
「あら、それも貴女の実力のうちじゃない」
「え?」
「頼れる友達がいるってことは、それだけルイーセが魅力的ってことだもの。ね? フィオネ」
「ええ。間違い無いわ」
そう言って、姉達は私のことを褒めてくれたのだった。優秀な彼女らにそう言われるのは、嬉しいものの少しだけ照れくさくもある。
「ただいま、変わり無かったか?」
招待客に挨拶回りをしていたウェンデが、席に戻ってきた。彼の片腕には、ユーリが抱えられている。
「ごめんなさいね。今日はべアンじゃなくてウェンデ様に抱っこされたいって聞かなくて……」
「いいえ、どうぞお気になさらず。ルイーセ。体調は大丈夫か?」
「ええ、落ち着いてますからご心配なく」
ドレスの上からお腹を撫で擦りながら、私はウェンデに微笑んだ。悪阻でベッドで寝たきりの日々もあったが、近頃は大分落ち着いてきたのである。
「そうか。良かった」
私達がそう話している間にも、ニーナがぐずったり、マーリットの子の泣き声が聞こえてきたりと、周囲が静かになることは無い。
「その……子育ての大変なところばかりを見せちゃって、申し訳無いわ」
フィオネがニーナを宥めながら、苦笑いをして私達にいった。
「いいえ、確かに大変そうだけれども……それ以上に、きっと楽しいですもの」
「そうだな。二人が三人になったら、今よりも一層賑やかになるだろうし、な」
そう言ってから、私とウェンデは何も言わず笑い合った。
「楽しみだな」
「ふふっ、そうですわね」
親子三人となった後の生活に思いを馳せながら、テーブルクロスの下で私達はそっと手を繋いだ。
終わり。
「嫌だ嫌だ!! お母様なんて大嫌いなんだから!! お水なんて絶対飲まないわ!!」
「わ、チビがミルク吐いた!!」
両親の結婚三十周年を祝しての庭園でのお茶会は、可愛らしい声や大人の悲鳴で賑やかなものとなっていた。主に大騒ぎとなっているのはフィオネとマーリットの周辺だが、招待客は皆見咎めること無く温かい視線を向けていた。
「何だか、うちの子の小さい頃を思い出すわ」
「ええ。うちも娘が夜泣きが酷くて……」
テーブルでは、招待客達が過去を懐かしむようにそんな会話を繰り広げていた。
「も、無理。ちょっと休憩」
マーリットがそう言って、席に座った。その顔には、酷いクマが出来ていた。
「まさか、新生児がこんなに大変だなんて思ってもみなかったわ」
「私も……イヤイヤ期がこんなに大変だなんて想定外よ」
姉二人が同時に深いため息を吐き、つい私は吹き出してしまったのだった。
「お茶会の準備、色々任せちゃってごめんね、ルイーセ」
「ホント。助かったわ」
このお茶会の準備を始める時期に、丁度マーリットの出産とニーナのイヤイヤ期が重なってしまったのである。そして姉に代わって、私が主体となって準備を進めたのだ。
「テーブルコーディネートも、お茶菓子もとっても素敵よ。流石、我が妹だわ」
「ふふっ、実は、こういうのが得意なお友達から色々アドバイスをもらったの。だから、私一人の力ではありませんわ」
お茶会の主催者となるのは初めてだったので、何も分からぬ状態からのスタートであった。
そこでエリザに相談したところ、テーブルコーディネートの仕方から招待状の書き方に至るまで全部分かりやすく教えてくれたのだ。
花の決闘後、私はエリザから正式に謝罪を受けた。しかし彼女に対して怒りを抱いてはいなかったので、友達になりたいとその場で提案したのである。
手紙のやり取りから始まり、今ではフランチェスカと彼女と私の三人でお茶会をする程の仲になっていた。
「あら、それも貴女の実力のうちじゃない」
「え?」
「頼れる友達がいるってことは、それだけルイーセが魅力的ってことだもの。ね? フィオネ」
「ええ。間違い無いわ」
そう言って、姉達は私のことを褒めてくれたのだった。優秀な彼女らにそう言われるのは、嬉しいものの少しだけ照れくさくもある。
「ただいま、変わり無かったか?」
招待客に挨拶回りをしていたウェンデが、席に戻ってきた。彼の片腕には、ユーリが抱えられている。
「ごめんなさいね。今日はべアンじゃなくてウェンデ様に抱っこされたいって聞かなくて……」
「いいえ、どうぞお気になさらず。ルイーセ。体調は大丈夫か?」
「ええ、落ち着いてますからご心配なく」
ドレスの上からお腹を撫で擦りながら、私はウェンデに微笑んだ。悪阻でベッドで寝たきりの日々もあったが、近頃は大分落ち着いてきたのである。
「そうか。良かった」
私達がそう話している間にも、ニーナがぐずったり、マーリットの子の泣き声が聞こえてきたりと、周囲が静かになることは無い。
「その……子育ての大変なところばかりを見せちゃって、申し訳無いわ」
フィオネがニーナを宥めながら、苦笑いをして私達にいった。
「いいえ、確かに大変そうだけれども……それ以上に、きっと楽しいですもの」
「そうだな。二人が三人になったら、今よりも一層賑やかになるだろうし、な」
そう言ってから、私とウェンデは何も言わず笑い合った。
「楽しみだな」
「ふふっ、そうですわね」
親子三人となった後の生活に思いを馳せながら、テーブルクロスの下で私達はそっと手を繋いだ。
終わり。
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