騎士団長との淫らな秘めごと~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~

二階堂まや

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争いの始まり

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「お招きいただき、ありがとうございます」

 夜会の会場に着いた後、私とウェンデは主催者であるルヴェニア国王夫妻に挨拶しに行った。

 ルヴェニアはリクスハーゲンと長年良好な関係を続けてきた国である。ルヴェニア王室の人々も顔見知りであるので、かなり気持ちとしては楽であった。

「実は先日、イザークが晴れて婚約をしまして。是非婚約者のことも紹介させていただきたいのですが、よろしいですか?」

「まあ、是非お願いいたします」

 すると、国王夫妻の隣に控えていた王太子のイザークが口を開いた。

「ナターシャ、此方がリクスハーゲンの第三王女のルイーセ様と、王立騎士団長のウェンデ様だ。お前も挨拶を」

「っ、初めまして。ナターシャと申します。よろしくお願い致します」

「初めまして、ルイーセと申します」

 ナターシャと名乗ったご令嬢は、自信なさげで酷く緊張しているようだった。可哀想な程に震えており、そのまま倒れてしまいそうにも見えた。

 そんな彼女を手助けするように、イザークは言葉を続ける。

「ナターシャはリブアルの第二王女でして、是非よろしくお願い致します」

 ルヴェニアとリブアルはあまり関わりの無い国だが、リクスハーゲンは両国とも同盟を結んでいる。恐らく、今後も貿易等で重要な相手国になるに違いない。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 不安気なナターシャに笑いかけながら、私は言った。彼女の姿が何だか初めて夜会に参加した時の自分と重なり、自然と私は親近感を抱いていた。

「そのドレス、とってもお似合いですわ」

「っ、ありがとうございます」

 彼女は飾りの少ない濃紺のドレスを着ていた。シンプルなデザインではあるものの、清楚な雰囲気によく似合っていたのである。

「ふふっ、それでは失礼します」

 国王夫妻との挨拶を終え、私達は他の参加者に挨拶すべく歩き出した。

 ……が、しかし。突然、後頭部に激痛が走ったのである。

「痛っ……!!」  

「ルイーセ? 大丈夫か?」

 引っ張られたような痛みに顔を歪めると、ウェンデは直ぐさま立ち止まってくれた。

 すると、後ろから聞き覚えのある男性の声がしたのである。

「失礼。妻のドレスの袖と引っかかってしまったみたいで……」

 そこまで言って、彼ードラフィアの皇太子セレスディンは驚いたように目を見開いた。

「誰かと思えば、ルイーセ様ではないですか。お久しぶりです」

「あら、お久しぶりです」

「この場面でのご挨拶で申し訳ございませんが、此方が妻のエリザです」

「初めまして、エリザと申します。どうぞよろしくお願いします」

 そう言って、エリザは私に挨拶をした。その洗練された立ち振る舞いは、ナターシャとは対照的に堂々としたものであった。

 彼女は人形のような華のある顔立ちも相まって、つい気圧されてしまうような雰囲気を纏っていた。

「さて、どうしたものか」

 どうやら私の長い下ろした髪と、彼女のドレスの装飾がすれ違いざまに絡まってしまったようだった。縫い付けられたビーズに髪の毛が絡まり、みっともない鳥の巣のようになっていたのである。

「申し訳ございません、気をつけて歩いていたつもりではあるのですが」

 エリザは髪の毛を解こうとしてくれたものの、固結びのようになっているのか、なかなか外れない。

「あっ、その……もう切っていただいて大丈夫ですので」

「仕方ないな。悪いが、ハサミを持ってきてくれ」

 これ以上手を煩わせるのも申し訳無いので、私はそう言った。ウェンデも、通りかかった使用人にハサミを持ってくるよう命じた。

 二人共、髪はそのうち伸びてくるものだからと考えていたのである。

「いや、そうは行かないよ」

 そう言ったのは、セレスディンであった。

「女性は髪が命とも言うだろう? 少し貸して欲しい。細かい作業は得意なんだ」

「は、はい」

 エリザに代わって、彼は髪を解き始めた。そして暫くすると、無事に髪の毛の絡まりは解けたのである。

「あっ、ありがとうございます」

「とんでもない。じゃあ、僕達は国王夫妻へのご挨拶があるので」

 こうして私達は、別れたのだった。

「髪、無事に解けて良かったな」

「ええ、危うく人差し指の長さ分くらい切り落とすところでしたわ。ちなみに……」

 私は手ぐしで髪を梳かしてから、それとなく問うた。

「ウェンデ様は、女性の髪は長い方がお好きなのですか?」

 髪は長い方が髪型が工夫できるので、これまでずっと腰あたりまで伸ばしてきた。しかし、一度くらいはもう少し短く切ってみたいとも思っていたのである。

「別に、特段拘りは無い。お前ならば愛しいのに変わりはない」

「あら、嬉しい」

 その後、夜会は和やかな雰囲気で終えることが出来た。
 
 しかしこの日を境に、私の身の回りで妙なことが起こるようになっていったのである。
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