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波乱の幕開け
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「……それで、皆様喜んでくださいましたわ」
「あら、良かったじゃない」
リクスハーゲン王室の宮殿でのお茶会で、私は近況報告をしていた。私が話す度に、姉二人も両親も興味深げに相槌を打ってくれた。
これまでは何を話せば良いか分からず苦戦していたが、珍しく上手く話せていた。
何故なら、今日は話す話題が沢山あるからである。
「参加してくれてありがとう。大助かりよ。ルイーセ」
「ふふっ、とんでもないですわ」
先日から、私は王室メンバーとして公務に復帰したのだ。
これまで、王族であっても結婚して宮殿を出た後は、式典などの特別な日を除いて公務から離れるのが通例だった。しかし、建国記念式典を境に、私の公務復帰を望む声が多く上がったと聞いた。
国の人々が自分のことを必要としてくれた。私はそれが嬉しくて、仕方が無かった。なので、最近は都合がつく限り公務に参加しているのである。
それと。公務復帰にはもう一つ理由がある。
「ごめんね。私が参加する予定だった分も任せちゃって」
マーリットは申し訳なさそうに私に言った。その顔色はやや青ざめており、良いとは言い難い。
「私自身楽しんでますので、どうか気にしないでくださいな。それよりリット姉様、体調はいかが?」
「うーん……正直、最悪最低って感じかしら。こんなに体調悪いのは人生でこれが初めてで」
そう言って、マーリットは胃のあたりを擦りながらローズヒップティーを一口飲んだ。私も、こんなに弱りきっている彼女の姿は見たことが無かった。
「つわりがこんなに辛いなんて、知らなかったわ」
そう。マーリットは先日、妊娠が発覚したのだ。そして、ここ最近つわりがかなり酷いらしい。何とか外交官としての仕事はこなしているが、それ以外の夜会などへ参加する余裕は無い状況であった。
そのため、私は彼女に代わって国の代表として催しに参加しているのである。
ローズヒップティーにレモン汁を大量に加えながら、彼女はため息をついた。
「酸っぱいものを口にしたいとか、味覚も変になってるし。ほんと、これが暫く続くとか考えたくない。改めて姉の偉大さを感じたわ」
つわりを二回経験したフィオネに目を向けながら、マーリットは呟いた。ちなみにフィオネは、妊娠中も出産直前まで全ての公務に参加したという逸話を持つ強者である。
「つわりは個人差があるって言うし、私が無駄に精神力と体力が化け物なだけよ。それに、私も妊娠中は皆に色々助けて貰ってたしね」
「そうだったかしら?」
「ええ。どうしても辛いものが食べたくて、トウガラシを丸かじりしたいとか言ってべアンに止められたり。割と滅茶苦茶よ」
「それは……さすがにまだ無いわ」
「ふふっ」
わがままを言うフィオネと、それに慌てるベアンハートの姿を思い浮かべるだけで、何だか可笑しくて笑ってしまった。
「それに、頼もしいお医者様がいるじゃない」
「まあ、それは間違い無いわね」
頼もしいお医者様とは、無論オリヴァルのことである。マーリットが仕事で遠出しなければならない時は、必ず彼が付き添ってくれているのだ。
「兎に角。一生続くことではないから安心して。何かあればすぐ相談して頂戴」
そう言ってフィオネは微笑んだ。その笑みには、母親としての揺るぎない強さが感じられた。
私もいつか、彼女のようになれるのだろうか。
「ところで、ルイーセ。来週隣国で開かれる夜会の出席はお願いできるかしら?」
「ええ、喜んで」
その夜会が波乱の幕開けになるなど、この時の私は思ってもみなかった。
「あら、良かったじゃない」
リクスハーゲン王室の宮殿でのお茶会で、私は近況報告をしていた。私が話す度に、姉二人も両親も興味深げに相槌を打ってくれた。
これまでは何を話せば良いか分からず苦戦していたが、珍しく上手く話せていた。
何故なら、今日は話す話題が沢山あるからである。
「参加してくれてありがとう。大助かりよ。ルイーセ」
「ふふっ、とんでもないですわ」
先日から、私は王室メンバーとして公務に復帰したのだ。
これまで、王族であっても結婚して宮殿を出た後は、式典などの特別な日を除いて公務から離れるのが通例だった。しかし、建国記念式典を境に、私の公務復帰を望む声が多く上がったと聞いた。
国の人々が自分のことを必要としてくれた。私はそれが嬉しくて、仕方が無かった。なので、最近は都合がつく限り公務に参加しているのである。
それと。公務復帰にはもう一つ理由がある。
「ごめんね。私が参加する予定だった分も任せちゃって」
マーリットは申し訳なさそうに私に言った。その顔色はやや青ざめており、良いとは言い難い。
「私自身楽しんでますので、どうか気にしないでくださいな。それよりリット姉様、体調はいかが?」
「うーん……正直、最悪最低って感じかしら。こんなに体調悪いのは人生でこれが初めてで」
そう言って、マーリットは胃のあたりを擦りながらローズヒップティーを一口飲んだ。私も、こんなに弱りきっている彼女の姿は見たことが無かった。
「つわりがこんなに辛いなんて、知らなかったわ」
そう。マーリットは先日、妊娠が発覚したのだ。そして、ここ最近つわりがかなり酷いらしい。何とか外交官としての仕事はこなしているが、それ以外の夜会などへ参加する余裕は無い状況であった。
そのため、私は彼女に代わって国の代表として催しに参加しているのである。
ローズヒップティーにレモン汁を大量に加えながら、彼女はため息をついた。
「酸っぱいものを口にしたいとか、味覚も変になってるし。ほんと、これが暫く続くとか考えたくない。改めて姉の偉大さを感じたわ」
つわりを二回経験したフィオネに目を向けながら、マーリットは呟いた。ちなみにフィオネは、妊娠中も出産直前まで全ての公務に参加したという逸話を持つ強者である。
「つわりは個人差があるって言うし、私が無駄に精神力と体力が化け物なだけよ。それに、私も妊娠中は皆に色々助けて貰ってたしね」
「そうだったかしら?」
「ええ。どうしても辛いものが食べたくて、トウガラシを丸かじりしたいとか言ってべアンに止められたり。割と滅茶苦茶よ」
「それは……さすがにまだ無いわ」
「ふふっ」
わがままを言うフィオネと、それに慌てるベアンハートの姿を思い浮かべるだけで、何だか可笑しくて笑ってしまった。
「それに、頼もしいお医者様がいるじゃない」
「まあ、それは間違い無いわね」
頼もしいお医者様とは、無論オリヴァルのことである。マーリットが仕事で遠出しなければならない時は、必ず彼が付き添ってくれているのだ。
「兎に角。一生続くことではないから安心して。何かあればすぐ相談して頂戴」
そう言ってフィオネは微笑んだ。その笑みには、母親としての揺るぎない強さが感じられた。
私もいつか、彼女のようになれるのだろうか。
「ところで、ルイーセ。来週隣国で開かれる夜会の出席はお願いできるかしら?」
「ええ、喜んで」
その夜会が波乱の幕開けになるなど、この時の私は思ってもみなかった。
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