騎士団長との淫らな秘めごと~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~

二階堂まや

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貴方が欲しい

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プレイ内容
+ウェンデと一緒に入浴(お風呂)


 どれだけ沈黙が続いただろうか。私もウェンデも、向かい合ったまま身動きできない時間が続き、それはやけに長く感じられた。

 そしてウェンデが何か言うよりも、私の涙腺が緩む方が早かったのである。

「ウェンデ様……本当に、申し訳ございません」

 地面に座りこんだまま、私は泣き崩れた。恥ずかしさと絶望感で心の中は完全にパニックを起こしており、泣く以外何も出来なくなってしまっていたのである。

「ううっ、ひぐっ……げほっ、」

 自分の失態により、ウェンデに酷く嫌われてしまったに違い無い。せめてみっともない泣き顔だけは隠したくて、私は手で顔を覆ったのである。

 すると、自分の手で作った暗がりの中で、重みのある足音が聞こえた。

「……ルイーセ」

 気が付くとウェンデがすぐ目の前にいた。地面に跪いて視線の高さを下げて、心配そうにこちらを見つめていたのだった。

「驚かせて済まなかった。怪我は無いか?」

 嗚咽を漏らしながらこくりと頷くと、ウェンデは「なら良かった」と言った。

「取り敢えず、立てそうか?」

 ウェンデに手を取られ立ち上がろうとしてみたが、腰が抜けて立てなかった。

 すると彼は、脱いだシャツをスカートの腰周りに巻いて汚れを隠してから、私が脱いでいたドロワーズを拾い上げた。

 それから私を横抱きにして持ち上げ、家に向けて歩き出したのである。

 当然、先程転けて失禁してしまったので、私の下半身は砂や泥や汚物で汚くなっていた。

「ウェンデ様……っ、下ろしてください!! 貴方まで汚れてしまいますから……っ」

「汚れたら洗えば良い。それに、そんな些細なことよりもお前のことが心配だ」

「……っ、でも」
 
「裏口から戻ろう。そこからなら、誰にも見られないだろ」

 怒るでもなく苛立つでもなく、いつもと同じ落ち着いた口調でウェンデは言った。それ以上何も言い返せず、私は黙って運ばれることにした。

 そして彼は、裏口を通って私を浴室にまで連れて行ってくれたのである。

 脱衣場に着いたところで、ウェンデは私のドレスを丁寧に脱がし始めた。そして私が全裸になった後、彼も服を全て脱いだのだった。

 もう一度私を横抱きにして、彼は浴室の扉を開いた。ウェンデは朝の鍛錬の後必ず入浴するので、浴槽には既に湯が張られていたのだった。

 椅子に腰掛けて、私を膝の上に座らせてから、ウェンデはスポンジを手に取って言った。

「力加減が強すぎたら言ってくれ」

 ウェンデはスポンジに泡をたっぷり含ませてから、私の身体を洗い始めた。

 ゴシゴシ乱暴に擦ったりせず、時間をかけて優しく身体が清められていく。肌についた砂利や泥が落とされていくにつれて、少しずつ気持ちが落ち着いていくのを感じた。

「怪我は無いのは良かったが、後ろが少し赤くなってるみたいだな。痛かったら後で冷やすと良い」

 そう言って、ウェンデは尻もちをついて赤くなった臀部を優しく撫でてくれたのである。

「私も身体を洗うから、このまま少し待っててくれ」 

 すぐ終わらせる、と言って、ウェンデもスポンジで身体を洗い始めた。正直まだ頭は働いておらず、鍛えられた身体に泡が流れ落ちる光景を私はぼんやりと見つめていたのだった。

 泡を洗い流した後、私達は浴槽に移動した。またもやお姫様抱っこである。湯には、筋肉疲労回復のためのハーブが数種類混ぜ合わされて浮いていた。

 ウェンデが脚を開いて座り、その股の間に私は座った。背後から彼は腕を回し、私の身体を支えるようにしていてくれたのだった。

 同じ方向を向いているので、泣き腫らした顔が見られないのはありがたい。しかし彼に背中を預けるのは躊躇われて、私は背中を真っ直ぐにして座っていた。

「少しは落ち着いたか?」

「……はい」

「そうか、だったら良かった」

 私の肩にお湯をかけながら、ウェンデは安心したように呟いた。

 悪いことをしたのは私なのだから、私から説明するべきだろう。しかし何から話せば良いか分からず、私は口をモゴモゴさせるばかりであった。

 すると、最初に口火を切ったのはウェンデだった。

「恥ずかしい思いをさせて、本当に悪かった」

 何故か、ウェンデは申し訳無さそうに謝ってきたのだった。

 彼は何も悪くない。そんな彼に謝られてしまうなんて、到底耐えられなかった。

「ウェンデ様は何も、悪くありませんわ。……っ、悪いのは、どこまでも強欲な私ですもの」

 そこまで言ったところで、また視界が潤み始めてしまった。

「ウェンデ様のことがもっと欲しい、もっと欲しいって、身体がうるさくて……どうしたら良いのか、私はもう分かりません」

 自棄になりながら、私は懸命に言葉を紡いだ。

「……っ、こんな、どうしようも無い、ふしだらで、はしたない女で、申し訳ございません」

 今更ながら何よりも性的欲求を優先した自分が浅ましく思えて、罪悪感でどうにかなってしまいそうだ。いくら手で拭っても、涙が零れてくるのは止められなかった。

「……っ、げほ、っ、ううっ」

「それは別に、悪いことではないと思うが」

「ふ……え?」

「何はともあれ、必要とされているようで私は嬉しい訳だが」

 びっくりして後ろを振り向くと、ウェンデはそのまま私を抱きしめたのだった。

 厚い胸板に耳が当たり、ドクドクと彼の心音が聞こえる。少しばかり、早鐘を打っているようにも感じられた。

 けれども、そうなっているのは私も同じである。

「あ、その……ウェンデ様?」

「だったら今まで沢山我慢していた分、めいっぱい満たしてやらないといけないな」

 湯の中で、ゆっくりと大きな手のひらが私の肌を撫でる。それが閨事での愛撫と同じ手つきであることに私は直ぐに気が付いたのだった。

「さて、ルイーセ。今から食堂と寝室、どっちに行きたい?」

 耳元で囁かれた一言。それは、朝食を食べに行くか、''二度寝''しに行くかという二択である他無かった。

 寝室と答えるということは、自分から「セックスしたい」と強請るようなものである。そんなこと、平素であれば到底口にできるはずがない。

 けれども。何よりも彼に飢えていた私としては、最早考える余地は無かった。

「寝室に、貴方と行きたいです」

 そう言って、私はウェンデの胸元に口付けた。
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