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おまけの小話③夫婦の夜はまだこれから

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 胡座をかいてイリーナを後ろ抱きにする形で膝の上に乗せると、彼女は抵抗するように身体を捩る。だが力が入らないのか、それは無駄な足掻きであった。

「……ぁ、ディート様、や、だぁ、……」

「っは……こんな格好して誘ってきたのはお前だろう?」

「か、勘違いですってば、ぁ、……!!」

 ちょっとやそっと何か起きた程度では嫌いにならない……と言ったは良いが。言った傍から''とんでもないこと''が起きるのだから、世の中よく出来ている。

 入浴後に寝室に行くと、イリーナはいつもと違うナイトドレスを着ていた。ウエディングベールのような透ける白い素材でできており、丈も膝上までしかない。その下にシュミーズもドロワーズも着てないため、胸から臀に至るまで、全て丸見えであった。

 唖然としているとイリーナは着替えて来ると言って、赤面しながら寝室から出ていこうとした。その手を掴んでベッドの上まで連行して来たという訳だ。

「ほんとは……っ、こんなつもりは無くて……ぇ、」

「ん、そうか」

 買った時透ける素材だとは知らなかっただとか、インナーを着忘れただとか、私が来る前に試しに着ただけだとか彼女は必死に釈明していたが、それが事実かは分からない。しかし、そんなことはどうでも良かった。

 取り敢えず、自分を喜ばせるためにやったことは明らかである。ならば、その''厚意''は受け取らねばなるまい。

「あっ、も、せめて、脱がせて下さい、恥ずかしいから……!!」

「折角似合ってるのに、そんな勿体無いことするはず無いだろう?」

 胸を揉む手を止め、私はナイトドレスの裾を軽く下に引いた。胸の頂はツンとした尖りとなっていたので、そこが布に擦られて、イリーナはあられも無い嬌声を上げた。

「あっ、んん……っ、やだぁ!!」

「こっちのが感じるのか? だったらそうするか」

 ナイトドレスに手を差し入れて直に触れていたのだが、それよりも布越しの方が反応が良い。私は布の上から愛撫を始めた。

「あっ、ん、も……嫌だ、恥ずかしいとこ見られて、……っ、さ、最悪……っ」

「は、最悪な訳あるか。それに……今日は''口で''ちゃんと出来たじゃないか」

  そう言って、私はイリーナの頬にキスをした。

 下に目を向けると、彼女の開かれた脚の間からは秘蜜が蕩け落ちていた。その背後では、唾液塗れとなった肉竿が存在を主張している。先程射精したばかりだというのに、そこは既に二度目の快楽を求め始めていた。
 
「だって、それも……っ、初めてで、いつもディート様が私にしてくれるみたいに、上手くいかなかったし……っ、」

「何言ってるんだ。上手くできたから、口に出したのだろう?」

「……っ、」

 先程の口淫を思い出してか、イリーナは赤面して俯いてしまった。

「こんな……ふしだらな女で、嫌いにならない……っ、の? 清楚でもなんでもないのに……」

「ふっ、またそんなことを」

 夜会の夜。昔の話を持ち出された際、それは過去の話だと、私はお前の内面に惹かれたと言ったが、それは半分嘘で半分本当なのが正直なところであった。

 まず、イリーナの内面に惹かれて結婚を決めたのは事実である。服装を地味にしていることは気になったが、教養があり話していて飽きなかったのだ。そして、想いは強くなっていったのだった。

 しかし。昔と今で女の好みが違うというのは、真っ赤な嘘だった。 

 クラスで娼婦の写真が回ってきて誰がタイプか聞かれた際、私は清楚な女を選んだのではなく、実は胸の大きな女を選んだのだった。それを周囲が、地味な女が好きと勘違いしただけなのだ。

 そして偶然にも、イリーナは襟ぐりの開いたドレスが似合うような美しく肉厚なデコルテと、豊満な胸を持ち合わせていた。彼女の内面も外面も、抜群に自分好みなのであった。

 とはいえ、そんな下世話な本音をイリーナの耳に入れる訳にはいかない。いつか言っても良いが、今は黙っているに越したことは無いだろう。

「私はお前の''全て''が好きで仕方がないんだ。ここまで言っても不安か?」

「ディート様、ぁ」

 振り向いて、イリーナは甘えるように抱きついてきた。甘えぐずる赤ん坊のような行動に、じわじわと理性が崩されていくのを感じる。

「もう私、ディート様のが、欲しいの。駄目……ですか?」

「ああ分かった。それじゃあ、一緒に悦くなろうな」

 シーツの上に彼女を下ろし、私は一思いに熱杭を打ち込んだ。

「あ、あああっ!! ディート様、ディート様ぁ、好き、大好き……!!」

 抜き差しをする度に、イリーナは私の名を呼び、愛の言葉を口にする。そんな彼女の姿を見て、口元が緩むのを抑えられない。

 リッシュとクレアはイリーナのことを心から愛し、自分には懐いていない。しかしイリーナは、有り余る愛を此方に向けてくれている。食物連鎖の頂点に立ったような気分だった。

 しかし、捕食するだけではこの関係は成り立たない。イリーナの愛情に全力で応えるのが私のやるべきことだ。

「は……イリーナ、私も……愛してるぞっ、」

「あ、ん、ディート様、っ、好き、い!!」

 達する直前まで鏡写しのように、私達は互いの想いを伝え合ったのだった。
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