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待ち受けていたのは、熊のような男
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トーリアの王子ルカが下級貴族の娘イレーネに一目惚れした。それが、全ての始まりだった。
「彼女の明るさも純粋さも、お前には決して無いものだ。クロエ」
そう言って、王子はあっさり婚約破棄を申し出てきたのだった。その瞬間、王子の婚約者としての、私の十数年分の努力は無に帰したのである。
当然、そんなこと受け入れられる訳が無かった。湧き上がる怒りや嫉妬心を抑えるのに必死だった。
しかし私は、ある夜会で取り返しのつかない過ちをしてしまう。
王子と二人仲睦まじく話していたイレーネに、ワインを浴びせかけたのだ。
割れたグラス、彼女の悲鳴、王子の怒声。場が騒然となったのは言うまでもない。
たったグラス一杯のワイン。されど、王子の怒りを買うには十分であった。
「貴様、絶対に許さないからな」
その言葉通り、王子は私にこの上無い罰を与えた。それは、遠い北国ヴェルナドへの輿入れ……という名の''国外追放''だった。
聞くに、ヴェルナドの若き王アードルフは、熊のような男と恐れられているらしい。嫌いな女を嫁がせるにはぴったりだと、王子は考えたのだろう。
王子の怒りを買った女は熊に食われ、ルカとイレーネは、末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
……と、思いきや。
+
「あ、ぁああっ!!」
暖炉の火で暖められた寝室で、どうしようもなく私は喘いでいた。
後ろから肉の楔で貫かれた身体が、堪らなく熱い。反射的に腰を引こうとしたものの、腰を掴まれたことによりそれは叶わなかった。
「……っおい、逃げるな、っ、 」
腰を掴んだまま、アードルフは低い声で呟いた。
その言葉は命令というよりも、懇願に近い色のものであるというのは、とうに知っていた。
だから私は、抗うことなく大人しく彼に身を任せた。
しかし、ずんっと最奥を突かれれば、声にならない悲鳴を上げてしまう。
「……っ、そんなに、締め付けるな」
「……っ、は、ぁ、」
背後から切なげな声が聞こえたけれども、それに答える余裕などなかった。
これだけは、何度目であってもどうも慣れない。
腟内が、彼の形に合わせるように収縮するのを感じる。慣れるまで、彼は大きく動かず待っていてくれた。
自分の身体的な快楽よりも、目の前の女のことを思いやる。それだけで、この男の性格を知るには十分なことであった。
頃合いを見て、アードルフはゆっくりと抽挿を始めた。
「……っ、ぁ、ん、っ、」
口から漏れる嬌声は、決して演技などではなかった。
彼の愛を感じられるこの行為が、私は好きで堪らないのだ。
「……っ、は、クロエ、クロエ……!」
「……ぁ、アードルフ様……」
互いの名を呼ばうけれども、彼がどんな表情で私の名を呼んでいるかは分からない。
が、彼もまた私がどんな表情なのかを知らない。
それでも愛しげに名を呼んでくれる彼のことを、疑えるはずなど無かった。
腰を打ち付けられる音すらも心地よいと感じるのだから、最早病気かもしれない。
「……ぁ、ふ、出すぞ、……っぐ、」
「ひ、ああああ!!!」
身体の奥に白濁が吐き出され、意識が弾け飛ぶ。
ゆるゆると収縮を繰り返す胎内から、彼のものが引きずり出され、熱い雫が太腿に垂れていくのを感じる。
が、残滓を拭き取る気力はもう残っていなかった。今日はどうしようもなく、疲れていたのだ。
朦朧とする意識の中、私はシーツの上に倒れ込んだのだった。
「彼女の明るさも純粋さも、お前には決して無いものだ。クロエ」
そう言って、王子はあっさり婚約破棄を申し出てきたのだった。その瞬間、王子の婚約者としての、私の十数年分の努力は無に帰したのである。
当然、そんなこと受け入れられる訳が無かった。湧き上がる怒りや嫉妬心を抑えるのに必死だった。
しかし私は、ある夜会で取り返しのつかない過ちをしてしまう。
王子と二人仲睦まじく話していたイレーネに、ワインを浴びせかけたのだ。
割れたグラス、彼女の悲鳴、王子の怒声。場が騒然となったのは言うまでもない。
たったグラス一杯のワイン。されど、王子の怒りを買うには十分であった。
「貴様、絶対に許さないからな」
その言葉通り、王子は私にこの上無い罰を与えた。それは、遠い北国ヴェルナドへの輿入れ……という名の''国外追放''だった。
聞くに、ヴェルナドの若き王アードルフは、熊のような男と恐れられているらしい。嫌いな女を嫁がせるにはぴったりだと、王子は考えたのだろう。
王子の怒りを買った女は熊に食われ、ルカとイレーネは、末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
……と、思いきや。
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「あ、ぁああっ!!」
暖炉の火で暖められた寝室で、どうしようもなく私は喘いでいた。
後ろから肉の楔で貫かれた身体が、堪らなく熱い。反射的に腰を引こうとしたものの、腰を掴まれたことによりそれは叶わなかった。
「……っおい、逃げるな、っ、 」
腰を掴んだまま、アードルフは低い声で呟いた。
その言葉は命令というよりも、懇願に近い色のものであるというのは、とうに知っていた。
だから私は、抗うことなく大人しく彼に身を任せた。
しかし、ずんっと最奥を突かれれば、声にならない悲鳴を上げてしまう。
「……っ、そんなに、締め付けるな」
「……っ、は、ぁ、」
背後から切なげな声が聞こえたけれども、それに答える余裕などなかった。
これだけは、何度目であってもどうも慣れない。
腟内が、彼の形に合わせるように収縮するのを感じる。慣れるまで、彼は大きく動かず待っていてくれた。
自分の身体的な快楽よりも、目の前の女のことを思いやる。それだけで、この男の性格を知るには十分なことであった。
頃合いを見て、アードルフはゆっくりと抽挿を始めた。
「……っ、ぁ、ん、っ、」
口から漏れる嬌声は、決して演技などではなかった。
彼の愛を感じられるこの行為が、私は好きで堪らないのだ。
「……っ、は、クロエ、クロエ……!」
「……ぁ、アードルフ様……」
互いの名を呼ばうけれども、彼がどんな表情で私の名を呼んでいるかは分からない。
が、彼もまた私がどんな表情なのかを知らない。
それでも愛しげに名を呼んでくれる彼のことを、疑えるはずなど無かった。
腰を打ち付けられる音すらも心地よいと感じるのだから、最早病気かもしれない。
「……ぁ、ふ、出すぞ、……っぐ、」
「ひ、ああああ!!!」
身体の奥に白濁が吐き出され、意識が弾け飛ぶ。
ゆるゆると収縮を繰り返す胎内から、彼のものが引きずり出され、熱い雫が太腿に垂れていくのを感じる。
が、残滓を拭き取る気力はもう残っていなかった。今日はどうしようもなく、疲れていたのだ。
朦朧とする意識の中、私はシーツの上に倒れ込んだのだった。
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