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第二章 現実世界
合流
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-公園(怜)
俺は荒くなった呼吸を少しだけ落ち着かせた後、目の前のヤクザの鳩尾あたりに蹴りを入れた。倒れるヤクザに構わず次のヤクザを標的に走り出すが、また別のヤクザが俺の腕を掴んで離さない。
喧嘩が始まり20分ほど経過しただろうか。俺たち3人は少しずつヤクザを倒し続けているが、ヤクザは減るどころか増える一方だ。
一体この片田舎のどこにこんなにヤクザが蔓延っていたのだろうか。治安の悪い街ではあったがここまでとは思ってもいなかった。
俺は腕を掴んでいるヤクザを振り払おうとするが、やはり大人の力は強い。苦戦しているところに、大が鉄パイプを振り回りしているのが目に入った。
「ほんまになんぼほどおんねん!!」
心からのツッコミと共に、俺を掴むヤクザの頭を思い切り殴る大。そのおかげで何とか俺の身体は自由の身になる。
俺が息を切しているのに対し、大は(疲れた)というより(飽きた)という様子を見せている。唖然としている俺にまたしても別のヤクザが襲いかかってくる。
「よそ見してんじゃねぇぞクソガキがぁ!」
油断したおれの腹を思い切り撃ち抜くヤクザの拳。俺は軽く白目を剥いてその場に蹲った。
だがそんな余裕も許さない。ヤクザは間髪入れず殴りかかろうとしていた。
思わず目を瞑る俺。覚悟を決めたのとは裏腹に、何故かヤクザの攻撃は一向に俺に当たらない。暫くしたところで不審に感じた俺は、恐る恐る目を開く。
すると倒れていたのは俺に攻撃を仕掛けてきていたヤクザの方だった。
「……え?」と声にならない声を上げると、倒れたヤクザの後ろから見覚えのある人影が見える。
「わりぃわりぃ遅くなって!」
そう言い拳を開き痛そうな表情をする男から。その男と声の主の正体はすぐに分かり、俺は思わず高揚した声を上げた。
「新次!!」
そう、俺を救ってくれたのは元クラスメートの新次だったのだ。その横には政宗もおり微笑みかけるように俺を見ている。
その他、合計すると7人の元クラスメート達が俺たちに加勢に来てくれていた。
ヤクザたちも仲間が増えたことに気づきさらに声を荒げている。だがその声をかき消すほどの心強さを感じてしまう。
「おい仲間が増えたぞ!」「かまわねぇ!やっちまえ!」
怒号を上げながら襲いかかるヤクザ。もみくちゃ状態の中をかき分け、また一人の男が俺に声をかける。
「おい大丈夫か怜。すごい傷だな。」
「順次!」
「とりあえず怜と剛は少し休め。大は……」
そう言い俺の肩を抱き上げてくれる順次。
その視線の先には大がいた。だがむしろ仲間が来たことにより元気になっている。「どんどん来いや!」と周りに叫び続けて続ける。
それを見て呆然とした表情を見せる順次は、次は苦笑いを浮かべた。
「大丈夫そうだな……。」
そう言い順次は少し離れたところに俺を座らせてくれた。もちろん俺が始めた喧嘩だ。ここで休んで仲間たちに迷惑をかけたくない。
だがほんな気持ちとは裏腹に身体が言うことを聞かず、立ち上がることすらままならなかった。あまりの悔しさに顔を顰め、必死に立ち上がろうとする俺。そんな俺の姿を見て順次は遠くにいる人物に声をかけた。
「成基!怜と剛を安産な場所に連れてってくれ!」
「了解っす順次さん!」
そう返事をした背の低く可愛らしい顔をした男が、俺たちの元へと駆け寄る。俺は順次に対して軽く頭を下げ、成基の誘導に従うことにした。
この【宇佐美成基】という男、久々に会ったのは同じだが俺たちの同級生ではない。同じ高校の一学年下の後輩だ。
今日は同窓会ではあるが、成基に関しては高校の頃から俺たち全員と連んでいた仲間なので呼んでいたのだ。
「怜さん、ひどい怪我っすね。肩かすんでついてきてください!剛さんもこっちっす!」
そう言い俺たちを一旦避難させようとしてくれる成基。俺が始めた喧嘩なのに後輩に守られて情けないばかりだが、そんなプライドで足手纏いにもなりたくない。
剛も同じ気持ちなのだろう。悔しそうな顔をしながらもフラフラと俺たちと合流する。もちろんヤクザはお構いなしに剛に襲い掛かろうとしていたが、その他の仲間達がそれを守ってくれている。
そんな必死な光景を見ているだけでどんどん罪悪感が増していくが、俺にはどうすることもできない。成基の肩にもたれかかり謝った。
「悪いな成基。本当に情けない先輩だよ。」
「何言ってんすか水臭い!そのうち一郎さんも千秋さんも合流するんで余裕ですよ!」
「そうだな……。一郎……か。」
俺は少し渋い顔を浮かべながら、一郎のことを思い出していた。
一郎とは元クラスメートの面々の中でも、俺と一番仲の良かった親友だ。ただそれもあの事件以来、疎遠になっている。
俺は荒くなった呼吸を少しだけ落ち着かせた後、目の前のヤクザの鳩尾あたりに蹴りを入れた。倒れるヤクザに構わず次のヤクザを標的に走り出すが、また別のヤクザが俺の腕を掴んで離さない。
喧嘩が始まり20分ほど経過しただろうか。俺たち3人は少しずつヤクザを倒し続けているが、ヤクザは減るどころか増える一方だ。
一体この片田舎のどこにこんなにヤクザが蔓延っていたのだろうか。治安の悪い街ではあったがここまでとは思ってもいなかった。
俺は腕を掴んでいるヤクザを振り払おうとするが、やはり大人の力は強い。苦戦しているところに、大が鉄パイプを振り回りしているのが目に入った。
「ほんまになんぼほどおんねん!!」
心からのツッコミと共に、俺を掴むヤクザの頭を思い切り殴る大。そのおかげで何とか俺の身体は自由の身になる。
俺が息を切しているのに対し、大は(疲れた)というより(飽きた)という様子を見せている。唖然としている俺にまたしても別のヤクザが襲いかかってくる。
「よそ見してんじゃねぇぞクソガキがぁ!」
油断したおれの腹を思い切り撃ち抜くヤクザの拳。俺は軽く白目を剥いてその場に蹲った。
だがそんな余裕も許さない。ヤクザは間髪入れず殴りかかろうとしていた。
思わず目を瞑る俺。覚悟を決めたのとは裏腹に、何故かヤクザの攻撃は一向に俺に当たらない。暫くしたところで不審に感じた俺は、恐る恐る目を開く。
すると倒れていたのは俺に攻撃を仕掛けてきていたヤクザの方だった。
「……え?」と声にならない声を上げると、倒れたヤクザの後ろから見覚えのある人影が見える。
「わりぃわりぃ遅くなって!」
そう言い拳を開き痛そうな表情をする男から。その男と声の主の正体はすぐに分かり、俺は思わず高揚した声を上げた。
「新次!!」
そう、俺を救ってくれたのは元クラスメートの新次だったのだ。その横には政宗もおり微笑みかけるように俺を見ている。
その他、合計すると7人の元クラスメート達が俺たちに加勢に来てくれていた。
ヤクザたちも仲間が増えたことに気づきさらに声を荒げている。だがその声をかき消すほどの心強さを感じてしまう。
「おい仲間が増えたぞ!」「かまわねぇ!やっちまえ!」
怒号を上げながら襲いかかるヤクザ。もみくちゃ状態の中をかき分け、また一人の男が俺に声をかける。
「おい大丈夫か怜。すごい傷だな。」
「順次!」
「とりあえず怜と剛は少し休め。大は……」
そう言い俺の肩を抱き上げてくれる順次。
その視線の先には大がいた。だがむしろ仲間が来たことにより元気になっている。「どんどん来いや!」と周りに叫び続けて続ける。
それを見て呆然とした表情を見せる順次は、次は苦笑いを浮かべた。
「大丈夫そうだな……。」
そう言い順次は少し離れたところに俺を座らせてくれた。もちろん俺が始めた喧嘩だ。ここで休んで仲間たちに迷惑をかけたくない。
だがほんな気持ちとは裏腹に身体が言うことを聞かず、立ち上がることすらままならなかった。あまりの悔しさに顔を顰め、必死に立ち上がろうとする俺。そんな俺の姿を見て順次は遠くにいる人物に声をかけた。
「成基!怜と剛を安産な場所に連れてってくれ!」
「了解っす順次さん!」
そう返事をした背の低く可愛らしい顔をした男が、俺たちの元へと駆け寄る。俺は順次に対して軽く頭を下げ、成基の誘導に従うことにした。
この【宇佐美成基】という男、久々に会ったのは同じだが俺たちの同級生ではない。同じ高校の一学年下の後輩だ。
今日は同窓会ではあるが、成基に関しては高校の頃から俺たち全員と連んでいた仲間なので呼んでいたのだ。
「怜さん、ひどい怪我っすね。肩かすんでついてきてください!剛さんもこっちっす!」
そう言い俺たちを一旦避難させようとしてくれる成基。俺が始めた喧嘩なのに後輩に守られて情けないばかりだが、そんなプライドで足手纏いにもなりたくない。
剛も同じ気持ちなのだろう。悔しそうな顔をしながらもフラフラと俺たちと合流する。もちろんヤクザはお構いなしに剛に襲い掛かろうとしていたが、その他の仲間達がそれを守ってくれている。
そんな必死な光景を見ているだけでどんどん罪悪感が増していくが、俺にはどうすることもできない。成基の肩にもたれかかり謝った。
「悪いな成基。本当に情けない先輩だよ。」
「何言ってんすか水臭い!そのうち一郎さんも千秋さんも合流するんで余裕ですよ!」
「そうだな……。一郎……か。」
俺は少し渋い顔を浮かべながら、一郎のことを思い出していた。
一郎とは元クラスメートの面々の中でも、俺と一番仲の良かった親友だ。ただそれもあの事件以来、疎遠になっている。
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