EVE〜破壊と創造〜

sanzo

文字の大きさ
上 下
14 / 14
第二章 現実世界

合流

しおりを挟む
-公園(怜)

俺は荒くなった呼吸を少しだけ落ち着かせた後、目の前のヤクザの鳩尾あたりに蹴りを入れた。倒れるヤクザに構わず次のヤクザを標的に走り出すが、また別のヤクザが俺の腕を掴んで離さない。

喧嘩が始まり20分ほど経過しただろうか。俺たち3人は少しずつヤクザを倒し続けているが、ヤクザは減るどころか増える一方だ。
一体この片田舎のどこにこんなにヤクザが蔓延っていたのだろうか。治安の悪い街ではあったがここまでとは思ってもいなかった。

俺は腕を掴んでいるヤクザを振り払おうとするが、やはり大人の力は強い。苦戦しているところに、まさるが鉄パイプを振り回りしているのが目に入った。

「ほんまになんぼほどおんねん!!」

心からのツッコミと共に、俺を掴むヤクザの頭を思い切り殴る大。そのおかげで何とか俺の身体は自由の身になる。

俺が息を切しているのに対し、大は(疲れた)というより(飽きた)という様子を見せている。唖然としている俺にまたしても別のヤクザが襲いかかってくる。

「よそ見してんじゃねぇぞクソガキがぁ!」

油断したおれの腹を思い切り撃ち抜くヤクザの拳。俺は軽く白目を剥いてその場に蹲った。
だがそんな余裕も許さない。ヤクザは間髪入れず殴りかかろうとしていた。

思わず目を瞑る俺。覚悟を決めたのとは裏腹に、何故かヤクザの攻撃は一向に俺に当たらない。暫くしたところで不審に感じた俺は、恐る恐る目を開く。
すると倒れていたのは俺に攻撃を仕掛けてきていたヤクザの方だった。
「……え?」と声にならない声を上げると、倒れたヤクザの後ろから見覚えのある人影が見える。

「わりぃわりぃ遅くなって!」

そう言い拳を開き痛そうな表情をする男から。その男と声の主の正体はすぐに分かり、俺は思わず高揚した声を上げた。

「新次!!」

そう、俺を救ってくれたのは元クラスメートの新次だったのだ。その横には政宗もおり微笑みかけるように俺を見ている。
その他、合計すると7人の元クラスメート達が俺たちに加勢に来てくれていた。
ヤクザたちも仲間が増えたことに気づきさらに声を荒げている。だがその声をかき消すほどの心強さを感じてしまう。

「おい仲間が増えたぞ!」「かまわねぇ!やっちまえ!」

怒号を上げながら襲いかかるヤクザ。もみくちゃ状態の中をかき分け、また一人の男が俺に声をかける。

「おい大丈夫か怜。すごい傷だな。」
「順次!」
「とりあえず怜と剛は少し休め。大は……」

そう言い俺の肩を抱き上げてくれる順次。
その視線の先には大がいた。だがむしろ仲間が来たことにより元気になっている。「どんどん来いや!」と周りに叫び続けて続ける。
それを見て呆然とした表情を見せる順次は、次は苦笑いを浮かべた。

「大丈夫そうだな……。」

そう言い順次は少し離れたところに俺を座らせてくれた。もちろん俺が始めた喧嘩だ。ここで休んで仲間たちに迷惑をかけたくない。

だがほんな気持ちとは裏腹に身体が言うことを聞かず、立ち上がることすらままならなかった。あまりの悔しさに顔を顰め、必死に立ち上がろうとする俺。そんな俺の姿を見て順次は遠くにいる人物に声をかけた。

成基なるき!怜と剛を安産な場所に連れてってくれ!」
「了解っす順次さん!」

そう返事をした背の低く可愛らしい顔をした男が、俺たちの元へと駆け寄る。俺は順次に対して軽く頭を下げ、成基の誘導に従うことにした。

この【宇佐美成基うさみなるき】という男、久々に会ったのは同じだが俺たちの同級生ではない。同じ高校の一学年下の後輩だ。
今日は同窓会ではあるが、成基に関しては高校の頃から俺たち全員と連んでいた仲間なので呼んでいたのだ。

「怜さん、ひどい怪我っすね。肩かすんでついてきてください!剛さんもこっちっす!」

そう言い俺たちを一旦避難させようとしてくれる成基。俺が始めた喧嘩なのに後輩に守られて情けないばかりだが、そんなプライドで足手纏いにもなりたくない。
剛も同じ気持ちなのだろう。悔しそうな顔をしながらもフラフラと俺たちと合流する。もちろんヤクザはお構いなしに剛に襲い掛かろうとしていたが、その他の仲間達がそれを守ってくれている。

そんな必死な光景を見ているだけでどんどん罪悪感が増していくが、俺にはどうすることもできない。成基の肩にもたれかかり謝った。

「悪いな成基。本当に情けない先輩だよ。」
「何言ってんすか水臭い!そのうち一郎さんも千秋さんも合流するんで余裕ですよ!」
「そうだな……。一郎……か。」

俺は少し渋い顔を浮かべながら、一郎のことを思い出していた。
一郎とは元クラスメートの面々の中でも、俺と一番仲の良かった親友だ。ただそれも以来、疎遠になっている。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

解除

あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。 いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。 テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。 そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。 『強制フラグを、立てますか?』 その言葉自体を知らないわけじゃない。 だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ? 聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。 混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。 しかも、ちょっとだけ違うセリフで。 『強制フラグを立てますよ? いいですね?』 その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。 「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」 今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。 結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。 『強制フラグを立てました』 その声と、ほぼ同時に。 高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、 女子高生と禁断の恋愛? しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。 いやいや。俺、そんなセリフ言わないし! 甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって! 俺のイメージが崩れる一方なんだけど! ……でも、この娘、いい子なんだよな。 っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか? 「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」 このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい? 誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・

今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。 その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。 皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。 刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。