EVE〜破壊と創造〜

sanzo

文字の大きさ
上 下
13 / 14
第二章 現実世界

暗闇

しおりを挟む
-某所

俺は今まさに、終わりのない永遠に続く闇をただひたすら歩き続けている。

もうどのくらいになるだろう。時間の感覚すら忘れるほどだ。俺にこの闇を抜けれる日が来るのだろうか。歩きながらも俺は自分がこの状況に置かれている原因考えた。

「そうだ。あいつのせいだ。」

そう呟く俺の周りには人陰すら見えず、ただただ孤独が続くのみ。
一歩一歩と前へ進むが、この方向が正しいのかすらも分からずに頭がおかしくなりそうだ。
周りを見渡すがこの道はさっきも通った気がする。そう思うほどに周りの景色も変わらず、ただ終わりなく歩む。

そんな俺に一筋の光が見えた。見覚えのある女性がこちらに向かって手を振っているのだ。俺は思わずその場に立ち止まった。
永遠に続くと思っていた暗闇の中に見える希望。その光景を見て思わず涙を流していると、とうとう女性は俺の元へと辿り着き声を出す。














「ちょっと!どこ行ってたのよ!なんで地元でそんなに道に迷うの?バカなの?何回目!?」

そう。女性の言う通り俺は道に迷っていた。俺を同窓会に誘った友人のせいで。
俺の名前は三蔵千秋さんぞうちあき。天才かつイケメンである。

まさか地元で道に迷うとは思わなかったが、この女性のおかげで何とか命拾いできた。
何を隠そうこの女性は俺の彼女。名前は姫野ユリひめのゆりまん丸で大きな目をしており、猫を彷彿とさせるキュートな口元。身長は俺と頭一つぶんぐらい小さく、動物みたいでかわいい。

途中までは一緒に会場に向かっていたが、俺が目を離した好きにいなくなっていた。俺がいなくなった間、恐らくユリは俺が浮気でもしてるのではないだろうか。と心配していただろう。本当に申し訳ないことをした。

「なんで一瞬目を離した隙にいなくなっちゃうのよ。一人でウロウロしないの!子供か!」

ユリはツンデレなので俺にキツい口調で何か言っている。
俺はそんなユリを安心させるために頭を撫でようとするが、当たり前のように振り払われた。ツンデレもここまで行くと大したものだ。

俺は優しい笑顔で余裕を見せる。するとユリは溜息をついて前を歩き出した。
あまりに俺のことが好きすぎて憂鬱なのだろう。そんな感じのため息だ。

俺にはユリの気持ちがものすごく分かる。もし俺が俺の彼女だったら、いつまでこの幸せが続くのだろうと毎日が不安になるからだ。それでもユリが俺と一緒にいるのは、その憂鬱を超えるほどの愛そのものなのだろうか。

「すまんなユリ。不安にさせて。」
「なんでちょっとカッコつけてんの?」

その言葉通り。俺はどうやら何をやってもカッコよく見えるらしい。才能だと思った。
そんな俺をよそにユリは言葉を続ける。

「はぁそれよりさ、なんか向こうのほう騒がしくない?」

確かに騒がしかった。この街は比較的田舎の方なので、ましてやこんな真冬はもう少し静かなはずだ。遠くに見えるのは大勢の人間が罵声とも聞こえる声を上げながら、ごった返しになっている。
俺はその様子が気になりユリの前を歩き出した。

「行ってみるか。ユリはここで待っとくか?」
「いいよ別に行かなくて。ていうか一人で行ったらまた迷うじゃん。なんでそんなに学習能力がないかなぁ」
「いや、でも気になるしちょっと行ってくる」
「ダメっつてんだろ。」
「はい、すいませんでした。」

ユリは時に厳しいのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺がいなくても世界は回るそうなので、ここから出ていくことにしました。ちょっと異世界にでも行ってみます。ウワサの重来者(甘口)

おいなり新九郎
ファンタジー
 ハラスメント、なぜだかしたりされちゃったりする仕事場を何とか抜け出して家に帰りついた俺。帰ってきたのはいいけれど・・・。ずっと閉じ込められて開く異世界へのドア。ずっと見せられてたのは、俺がいなくても回るという世界の現実。あーここに居るのがいけないのね。座り込むのも飽きたし、分かった。俺、出ていくよ。その異世界って、また俺の代わりはいくらでもいる世界かな? 転生先の世界でもケガで職を追われ、じいちゃんの店に転がり込む俺・・・だけど。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

処理中です...