EVE〜破壊と創造〜

sanzo

文字の大きさ
上 下
11 / 14
第二章 現実世界

報告

しおりを挟む
-陸矢の家(新次)

「本当に遅いなあいつら。」

同窓会に来ている男の1人が、冷静な声ながら流石に心配そうに呟いていた。
男の名前は指宿政宗いぶすきまさむね
切長の鋭い眼光を持ち、いつもクールな武士みたいな男だ。そんな控えめな性格の割には友人も多く、またかなりモテる。惹きつけられる魅力があるからだ。人を束ねる能力を持った男なのだろう。

そんないつも冷静沈着な政宗が不審に思うぐらい、残りのメンバーの到着が遅かった。その中には来ていない怜達はもちろんのこと、買い出しに行った陸矢達も含まれている。

集合時間を30分過ぎている。そもそも剛達が怜達を迎えに行った時には、既に空港に着いていると情報が入っていた。コンビニなどの寄り道をしていたとしてもとっくに到着しているはずだ。

「確かに遅いな。」

順次が他のメンバーの不安を煽るかのように呟いている。もちろんそんな意図はないだろうが。
つまりクラスメートの中でも比較的落ち着いた2人が、不安を感じ始めていると言うこと。それを分かっている俺を含めた他のメンバーは、目を合わせて不穏な空気を漂わせる。

さらに少し待つこと数分、玄関の方から激しく扉を開ける音がした。その激しさとは裏腹に俺は少し安堵の表情をしてみせる。

「なんだ、やっと来たみたいだな。一瞬焦っちまったじゃねぇか。」

とは言いつつも不安が全て解消されたわけではないため、早く安心しようと立ち上がり玄関の方に向かう。
すると俺が玄関に着くよりも早く、部屋の扉がこれまた慌ただしく開いた。その先に立っていたのは迎えに行っていた章だ。
ようやく安堵したのも束の間、章の後ろにはいるはずの怜達の姿がないことに気がつく。加えて章のただ事ではない焦ったような様子を見て、むしろ不安は増していく。

「おいおいどうした慌てて」

声をかける俺を無視し、章は近くにあるペットボトルの水を息を切らしながらも飲み始める。まるで3日振りの水分補給の様に、無心に水にありつく章の姿にその場にいた全員が立ち上がった。

少し落ち着いたところで章は息を整えて全員の顔を見渡し、ようやく声を出す。

「やべぇよ!喧嘩だ喧嘩!」
「は?」

章の突拍子もない言葉に、その場の全員が同時に声をあげてしまう。ドッキリでもかけようとしているのかとも思ったが、章は至って真剣な顔つきだ。
異様な状況を察した俺たちは、とりあえず賞をその場に座らせて詳しい話を聞くことにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

処理中です...