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第二章 現実世界
遭遇
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-某コンビニ
「だりぃなバカやろー。」
直樹君が少し肩を落としながらつぶやく。その光景は状況しらない他人から見ても明らかに気怠そだ。
僕と直樹君は減ってしまったお酒を補填するべく、近くのコンビニまで買い出しに来ていた。
僕の家からコンビニまでは200メートル程度しか距離は無いので歩いて来ている。がその道中ずっと直樹君は独り言のように文句を呟いていた。
「おい陸矢。なんか公園の方騒がしくねぇか?」
僕がレジで商品を買っている間に、雑誌コーナーで立ち読みしていた直樹君が大声を出している。他のお客さんはいないからまだいいけど普通に迷惑なので控えて欲しい気持ちはあったが、そこは特に何も言わずに抑えた。
直樹君はこんな感じだが悪人では無い。実際にこのカゴに詰められた大量のお酒は全て直樹君の奢りだ。僕は断ったが、直樹君は自分が飲んだ分だからと頑なにお金を払いたがってくれた。
直樹君の言葉で少し外に耳を傾けてみると、確かに僕の家とは反対側に位置する公園の方から大勢の人の声がしてくる。時間も時間なので不信感に煽られるが、そんな気持ちをよそに直樹君は続けて声を出す。
「ちょっと行ってみるか」
「えぇ~……。まぁ別に構わないけど……。」
僕の返事を聞いた直樹君は読んでいた雑誌を仕舞い、僕のいるレジに近づいてくる。そして買い物を済ませた僕たちは出口の方に歩き出した。
店員さんが気だるそうに礼を言うのを聞き流した後、直樹君は少し小走り気味に公園の方に歩き出す。
こういう騒がしい事が好きなのは直樹君だけではなく、僕の元クラスメートのほとんどだ。なので僕は付き合わされるのはある程度慣れている。
だがまさか大人になってまで巻き込まれるとは思っていなかったから、少し面倒に感じていた。
直樹君が急かすように前を歩いていると、突然前から人が走って来て直樹君に軽くぶつかる。と同時にぶつかった人物は慌てた様子で頭を下げた。
「す……すみません。」
ぶつかって来たのは恐らく中学生ぐらいの男の子で、なにやら慌てた様子を見せている。直樹君と僕は少し不思議そうな顔して目を合わせていると、その間にも中学生は逃げるようにその場から走り去ろうとしていた。だがそれを止めたのは直樹君だ。
「おいちょっと待てバカやろー。」
「や……やめなよ直樹君。わざとじゃないんだし」
「バカちげぇよ!……こいつ向こうから走って来たろ?何があるのか知ってるか?」
「あぁそう言うことか」
ガラの悪い直樹君がガラの悪い言葉遣いで中学生を止める姿は、無理矢理因縁を付けるチンピラのようで勘違いをしてしまった。だが思いの外直樹君はちゃんと考えて行動をとっていた事に感心と、少し反省をする。
気を取り直して中学生の方に目をやると、案の定驚いた様子で恐る恐るこちらに近づいて来ていた。直樹君は気にせず中学生に続ける。
「向こうから来たよな?何があったのか知ってるか?」
中学生は一瞬顔を歪め、少し震えながらも何故か申し訳なさそうに僕たちの側まで寄って来る。黙って逃げようとしない分、結構勇気のある中学生だと感じたが、次の言葉でそんなことはどうでも良くなった。
「実はあれ、僕のせいなんです!」
「え?」
「あれは少し前の事……」
----------------------
「なるほどな」
中学生が状況を説明してくれて僕と直樹君は納得したように頷いて見せた。少し現実味のない話ではあったものの、状況と一致しているし、何より嘘をつく必要もない。
簡単に言うとこの中学生「コウキ」は訳あってヤクザの集団に追われており、それを通りかかった親切な男達が助けてくれているらしい。つまりこの騒動はヤクザと親切な男達による喧嘩。
世の中そんなお節介な人がまだいる事に感心しつつも、僕の周りにもそんな人たちが多い事を思い出す。
「すみません、僕のせいで。」
「なんで俺たちに謝るんだよバカやろー。それよりお前どこまで逃げる気だ?アテは?」
「え、いやとりあえず遠くに……。」
「そうか。おい陸矢。こいつ連れて帰ろうぜ」
直樹君の提案に僕は怪訝な表情を見せるが、特に驚きはしなかった。先ほども言ったように僕の周りにはお節介な人間が多い。直樹君もそのうちの1人で、中学生が困っている様子を見せていた時点でこうなることはなんとなく予想できていた。
本音を言えばこの中学生を連れて帰るという提案は断りたい。僕の家だし、面倒ごとに巻き込まれたいとは思わないからだ。
だがそんな事を聞き入れる直樹君ではなく、ここで見捨てたら自分自身も少なからず罪悪感を感じることになる。
僕は一瞬だけ返事を考えた後、渋々ではあったが直樹君の提案に頷き返して見せた。
「だりぃなバカやろー。」
直樹君が少し肩を落としながらつぶやく。その光景は状況しらない他人から見ても明らかに気怠そだ。
僕と直樹君は減ってしまったお酒を補填するべく、近くのコンビニまで買い出しに来ていた。
僕の家からコンビニまでは200メートル程度しか距離は無いので歩いて来ている。がその道中ずっと直樹君は独り言のように文句を呟いていた。
「おい陸矢。なんか公園の方騒がしくねぇか?」
僕がレジで商品を買っている間に、雑誌コーナーで立ち読みしていた直樹君が大声を出している。他のお客さんはいないからまだいいけど普通に迷惑なので控えて欲しい気持ちはあったが、そこは特に何も言わずに抑えた。
直樹君はこんな感じだが悪人では無い。実際にこのカゴに詰められた大量のお酒は全て直樹君の奢りだ。僕は断ったが、直樹君は自分が飲んだ分だからと頑なにお金を払いたがってくれた。
直樹君の言葉で少し外に耳を傾けてみると、確かに僕の家とは反対側に位置する公園の方から大勢の人の声がしてくる。時間も時間なので不信感に煽られるが、そんな気持ちをよそに直樹君は続けて声を出す。
「ちょっと行ってみるか」
「えぇ~……。まぁ別に構わないけど……。」
僕の返事を聞いた直樹君は読んでいた雑誌を仕舞い、僕のいるレジに近づいてくる。そして買い物を済ませた僕たちは出口の方に歩き出した。
店員さんが気だるそうに礼を言うのを聞き流した後、直樹君は少し小走り気味に公園の方に歩き出す。
こういう騒がしい事が好きなのは直樹君だけではなく、僕の元クラスメートのほとんどだ。なので僕は付き合わされるのはある程度慣れている。
だがまさか大人になってまで巻き込まれるとは思っていなかったから、少し面倒に感じていた。
直樹君が急かすように前を歩いていると、突然前から人が走って来て直樹君に軽くぶつかる。と同時にぶつかった人物は慌てた様子で頭を下げた。
「す……すみません。」
ぶつかって来たのは恐らく中学生ぐらいの男の子で、なにやら慌てた様子を見せている。直樹君と僕は少し不思議そうな顔して目を合わせていると、その間にも中学生は逃げるようにその場から走り去ろうとしていた。だがそれを止めたのは直樹君だ。
「おいちょっと待てバカやろー。」
「や……やめなよ直樹君。わざとじゃないんだし」
「バカちげぇよ!……こいつ向こうから走って来たろ?何があるのか知ってるか?」
「あぁそう言うことか」
ガラの悪い直樹君がガラの悪い言葉遣いで中学生を止める姿は、無理矢理因縁を付けるチンピラのようで勘違いをしてしまった。だが思いの外直樹君はちゃんと考えて行動をとっていた事に感心と、少し反省をする。
気を取り直して中学生の方に目をやると、案の定驚いた様子で恐る恐るこちらに近づいて来ていた。直樹君は気にせず中学生に続ける。
「向こうから来たよな?何があったのか知ってるか?」
中学生は一瞬顔を歪め、少し震えながらも何故か申し訳なさそうに僕たちの側まで寄って来る。黙って逃げようとしない分、結構勇気のある中学生だと感じたが、次の言葉でそんなことはどうでも良くなった。
「実はあれ、僕のせいなんです!」
「え?」
「あれは少し前の事……」
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「なるほどな」
中学生が状況を説明してくれて僕と直樹君は納得したように頷いて見せた。少し現実味のない話ではあったものの、状況と一致しているし、何より嘘をつく必要もない。
簡単に言うとこの中学生「コウキ」は訳あってヤクザの集団に追われており、それを通りかかった親切な男達が助けてくれているらしい。つまりこの騒動はヤクザと親切な男達による喧嘩。
世の中そんなお節介な人がまだいる事に感心しつつも、僕の周りにもそんな人たちが多い事を思い出す。
「すみません、僕のせいで。」
「なんで俺たちに謝るんだよバカやろー。それよりお前どこまで逃げる気だ?アテは?」
「え、いやとりあえず遠くに……。」
「そうか。おい陸矢。こいつ連れて帰ろうぜ」
直樹君の提案に僕は怪訝な表情を見せるが、特に驚きはしなかった。先ほども言ったように僕の周りにはお節介な人間が多い。直樹君もそのうちの1人で、中学生が困っている様子を見せていた時点でこうなることはなんとなく予想できていた。
本音を言えばこの中学生を連れて帰るという提案は断りたい。僕の家だし、面倒ごとに巻き込まれたいとは思わないからだ。
だがそんな事を聞き入れる直樹君ではなく、ここで見捨てたら自分自身も少なからず罪悪感を感じることになる。
僕は一瞬だけ返事を考えた後、渋々ではあったが直樹君の提案に頷き返して見せた。
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