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第二章 現実世界
会場
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-同窓会会場
30畳はあるであろう縦長の和室。そこにはいかにも高級そうな木目調の大きなテーブル二つ並べられている。ピザや寿司などの食べ物、そして大量のお酒が乱雑に広げられており、その光景を見るだけで騒がしさが伝わった。
「これより同窓会を始める!かんぱーい!」
俺が号令を出すと同時に、待ってましたと言わんばかりに周りの同級生達も声を上げる。同時にほぼ全員が持っていた酒に口をつけ出すが、そんな盛り上がりムードを壊す者もいた。
「ちょっと待ってよ新次くん!まだ怜くん達が来てないから早いんじゃ……。」
その場をしらけさせた人物の名前は一寸陸矢。会場であるこの場の家主だ。
普通は同窓会は居酒屋やどこか会場を借りて行うものだが、俺たちの場合は違う。
陸矢の親がテレビにも出ているような有名な医者であり、大金持ち。少人数であるクラスメートが集まる分には何ら問題のないほどの土地を所有している。そのため、陸矢に頼み部屋の一つを貸してもらい会場としていた。
陸矢は昔から真面目な性格で、眼鏡をかけており頭髪検査に引っかかりそうにもない黒髪。いかにも優等生という風貌だ。これも医者の親が厳格だからか。だが真面目すぎる故、今回のように空気が読めずに場を醒めさせる事が多々ある。
「いいよ。あいつらおせぇし先に始めよう」
改めてその場を盛り上げるべく声をかける。
そんな俺の名前は亀田新次。自分で言うのもなんだがクラスのムードメーカー的な存在だ。今回同窓会を企画したのも俺で、こういう集まりは大体俺を中心に集まる事が多い。
周りの数人の友人たちも俺に同意したのか、陸矢の方に目をやり頷いて見せていた。だが優等生はそんな事では説得できない。
「そういう訳には行かないよ。そもそもまだ集合時間までは時間ある訳だし。もう少し待とう?」
陸矢の言う通り、確かに当初の集合時間よりはまだ30分ほどの猶予がある。だが思いの外その他のメンバーの集まりが早く先に始めてしまおうと思っていた。
が、俺のそんな魂胆は案の定、陸矢には通じなかった。陸矢は俺の目をじっと見つめて俺の返事を待つ。
ここで俺が納得しなければまるで俺が悪者みたいになるだろう。俺は少し粘った末に最終的には折れ、その場に不機嫌そうに腰掛けて見せた。
周りの同級生達も少しため息をついているものの、陸矢のもっともらしい意見に対して反抗するものはおらず思い想いに談笑を始める。
「まぁまぁ新次。そんな怒るなって。」
「順次……。だってよ。」
不貞腐れた子供みたいな顔を見せる俺に、優しく声をかけてくれた男の名前は竹森順次。
細めの身体をした高身長の爽やか大学生だ。いつも友人が悩んでいると真っ先に声をかけてくれるような、よく言えば面倒見が良く、悪く言えばお節介な男だ。
順次は不貞腐れ続ける俺を更に宥めるように、俺たちとは反対方向に座る男を指差し笑う。
「ハハ。あれ見ろよ。」
「プハー……。おい酒足りねぇぞバカやろー」
そう言い既に顔が赤くなっているのは鬼塚直樹。
直樹は自分の周りに置いてあるお酒をなりふり構わず呑み散らかしており、既にある程度出来上がっているような雰囲気だ。
直樹の酒好きはこの辺ではかなり有名。それに合わせたかのような見た目をしており、無精髭を生やし少し不潔にも見えるその風貌。高校生の時から同級生とは思えないほどの老け具合だった。
今までの話逃れを聞いていなかったのか、あろうことか直樹は周りに座る友人達に酒を勧め始めている。もちろん、例の如くそんなフライングを許さない男がいるのだが。
「直樹君!なんで飲んでるの!……待つって言ったのに。今呑んだ分買いに行かないとお酒も無くなっちゃうよ。一緒に買いに行こう。」
「は?なんで俺がそんな事……。」
案の定、陸矢と直樹が言い合いになりそうになる。だがこの場にいる全員が結果は分かっていた。
言い返そうとする直樹、じっと真っ直ぐ直己の目を見つめる陸矢。直樹は喉元まで何か言いたそうな雰囲気ん出していだが、出たのはため息だけだった。
「ちっ……。分かったよバカやろー。」
怪訝な表情を見せながらも渋々立ち上がりお酒の買い出しに足を運び始める直樹と陸矢。その場にいる全員の予想通り陸矢の勝ちだ。
これは高校時代から何も変わっていない。陸矢はかなり頑固な性格で、一度これが正しいと決めたら絶対に折れない。みんなそれを分かっているから、無駄な言い合いはしないのだ。
まるで陸矢に連行されるように部屋を出ていく直樹の姿を見て鼻で笑った後、隣にいる順次に声をかける。
「後来てないのは誰だ?」
「怜達4人に、一郎。……それに千秋だな。」
「龍平とアダムは?」
「その2人は今日は来れない。」
俺は現状を把握した後に周りを見渡す。確か今日来るのは全部で15人だから、この部屋にいる人数は今かなり少ない。むしろ直樹達が出て行ったせいでいない人数の方が多いぐらいだ。
しかも15人全員が同級生と言うわけではなく、そのうち2人は後輩だ。俺たちの学校は元々4クラスに分かれており、今回の同窓会は高校3年生の時のクラスメートのみ参加となっている。
ちなみに男子校であり、今回集まり15人のうち14人が男。男子校の悲しさだな。
俺はそんなことを考えながら、陸矢がいないことをいい事に目の前のビールの栓を開けた。
30畳はあるであろう縦長の和室。そこにはいかにも高級そうな木目調の大きなテーブル二つ並べられている。ピザや寿司などの食べ物、そして大量のお酒が乱雑に広げられており、その光景を見るだけで騒がしさが伝わった。
「これより同窓会を始める!かんぱーい!」
俺が号令を出すと同時に、待ってましたと言わんばかりに周りの同級生達も声を上げる。同時にほぼ全員が持っていた酒に口をつけ出すが、そんな盛り上がりムードを壊す者もいた。
「ちょっと待ってよ新次くん!まだ怜くん達が来てないから早いんじゃ……。」
その場をしらけさせた人物の名前は一寸陸矢。会場であるこの場の家主だ。
普通は同窓会は居酒屋やどこか会場を借りて行うものだが、俺たちの場合は違う。
陸矢の親がテレビにも出ているような有名な医者であり、大金持ち。少人数であるクラスメートが集まる分には何ら問題のないほどの土地を所有している。そのため、陸矢に頼み部屋の一つを貸してもらい会場としていた。
陸矢は昔から真面目な性格で、眼鏡をかけており頭髪検査に引っかかりそうにもない黒髪。いかにも優等生という風貌だ。これも医者の親が厳格だからか。だが真面目すぎる故、今回のように空気が読めずに場を醒めさせる事が多々ある。
「いいよ。あいつらおせぇし先に始めよう」
改めてその場を盛り上げるべく声をかける。
そんな俺の名前は亀田新次。自分で言うのもなんだがクラスのムードメーカー的な存在だ。今回同窓会を企画したのも俺で、こういう集まりは大体俺を中心に集まる事が多い。
周りの数人の友人たちも俺に同意したのか、陸矢の方に目をやり頷いて見せていた。だが優等生はそんな事では説得できない。
「そういう訳には行かないよ。そもそもまだ集合時間までは時間ある訳だし。もう少し待とう?」
陸矢の言う通り、確かに当初の集合時間よりはまだ30分ほどの猶予がある。だが思いの外その他のメンバーの集まりが早く先に始めてしまおうと思っていた。
が、俺のそんな魂胆は案の定、陸矢には通じなかった。陸矢は俺の目をじっと見つめて俺の返事を待つ。
ここで俺が納得しなければまるで俺が悪者みたいになるだろう。俺は少し粘った末に最終的には折れ、その場に不機嫌そうに腰掛けて見せた。
周りの同級生達も少しため息をついているものの、陸矢のもっともらしい意見に対して反抗するものはおらず思い想いに談笑を始める。
「まぁまぁ新次。そんな怒るなって。」
「順次……。だってよ。」
不貞腐れた子供みたいな顔を見せる俺に、優しく声をかけてくれた男の名前は竹森順次。
細めの身体をした高身長の爽やか大学生だ。いつも友人が悩んでいると真っ先に声をかけてくれるような、よく言えば面倒見が良く、悪く言えばお節介な男だ。
順次は不貞腐れ続ける俺を更に宥めるように、俺たちとは反対方向に座る男を指差し笑う。
「ハハ。あれ見ろよ。」
「プハー……。おい酒足りねぇぞバカやろー」
そう言い既に顔が赤くなっているのは鬼塚直樹。
直樹は自分の周りに置いてあるお酒をなりふり構わず呑み散らかしており、既にある程度出来上がっているような雰囲気だ。
直樹の酒好きはこの辺ではかなり有名。それに合わせたかのような見た目をしており、無精髭を生やし少し不潔にも見えるその風貌。高校生の時から同級生とは思えないほどの老け具合だった。
今までの話逃れを聞いていなかったのか、あろうことか直樹は周りに座る友人達に酒を勧め始めている。もちろん、例の如くそんなフライングを許さない男がいるのだが。
「直樹君!なんで飲んでるの!……待つって言ったのに。今呑んだ分買いに行かないとお酒も無くなっちゃうよ。一緒に買いに行こう。」
「は?なんで俺がそんな事……。」
案の定、陸矢と直樹が言い合いになりそうになる。だがこの場にいる全員が結果は分かっていた。
言い返そうとする直樹、じっと真っ直ぐ直己の目を見つめる陸矢。直樹は喉元まで何か言いたそうな雰囲気ん出していだが、出たのはため息だけだった。
「ちっ……。分かったよバカやろー。」
怪訝な表情を見せながらも渋々立ち上がりお酒の買い出しに足を運び始める直樹と陸矢。その場にいる全員の予想通り陸矢の勝ちだ。
これは高校時代から何も変わっていない。陸矢はかなり頑固な性格で、一度これが正しいと決めたら絶対に折れない。みんなそれを分かっているから、無駄な言い合いはしないのだ。
まるで陸矢に連行されるように部屋を出ていく直樹の姿を見て鼻で笑った後、隣にいる順次に声をかける。
「後来てないのは誰だ?」
「怜達4人に、一郎。……それに千秋だな。」
「龍平とアダムは?」
「その2人は今日は来れない。」
俺は現状を把握した後に周りを見渡す。確か今日来るのは全部で15人だから、この部屋にいる人数は今かなり少ない。むしろ直樹達が出て行ったせいでいない人数の方が多いぐらいだ。
しかも15人全員が同級生と言うわけではなく、そのうち2人は後輩だ。俺たちの学校は元々4クラスに分かれており、今回の同窓会は高校3年生の時のクラスメートのみ参加となっている。
ちなみに男子校であり、今回集まり15人のうち14人が男。男子校の悲しさだな。
俺はそんなことを考えながら、陸矢がいないことをいい事に目の前のビールの栓を開けた。
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