8 / 14
第二章 現実世界
会場
しおりを挟む
-同窓会会場
30畳はあるであろう縦長の和室。そこにはいかにも高級そうな木目調の大きなテーブル二つ並べられている。ピザや寿司などの食べ物、そして大量のお酒が乱雑に広げられており、その光景を見るだけで騒がしさが伝わった。
「これより同窓会を始める!かんぱーい!」
俺が号令を出すと同時に、待ってましたと言わんばかりに周りの同級生達も声を上げる。同時にほぼ全員が持っていた酒に口をつけ出すが、そんな盛り上がりムードを壊す者もいた。
「ちょっと待ってよ新次くん!まだ怜くん達が来てないから早いんじゃ……。」
その場をしらけさせた人物の名前は一寸陸矢。会場であるこの場の家主だ。
普通は同窓会は居酒屋やどこか会場を借りて行うものだが、俺たちの場合は違う。
陸矢の親がテレビにも出ているような有名な医者であり、大金持ち。少人数であるクラスメートが集まる分には何ら問題のないほどの土地を所有している。そのため、陸矢に頼み部屋の一つを貸してもらい会場としていた。
陸矢は昔から真面目な性格で、眼鏡をかけており頭髪検査に引っかかりそうにもない黒髪。いかにも優等生という風貌だ。これも医者の親が厳格だからか。だが真面目すぎる故、今回のように空気が読めずに場を醒めさせる事が多々ある。
「いいよ。あいつらおせぇし先に始めよう」
改めてその場を盛り上げるべく声をかける。
そんな俺の名前は亀田新次。自分で言うのもなんだがクラスのムードメーカー的な存在だ。今回同窓会を企画したのも俺で、こういう集まりは大体俺を中心に集まる事が多い。
周りの数人の友人たちも俺に同意したのか、陸矢の方に目をやり頷いて見せていた。だが優等生はそんな事では説得できない。
「そういう訳には行かないよ。そもそもまだ集合時間までは時間ある訳だし。もう少し待とう?」
陸矢の言う通り、確かに当初の集合時間よりはまだ30分ほどの猶予がある。だが思いの外その他のメンバーの集まりが早く先に始めてしまおうと思っていた。
が、俺のそんな魂胆は案の定、陸矢には通じなかった。陸矢は俺の目をじっと見つめて俺の返事を待つ。
ここで俺が納得しなければまるで俺が悪者みたいになるだろう。俺は少し粘った末に最終的には折れ、その場に不機嫌そうに腰掛けて見せた。
周りの同級生達も少しため息をついているものの、陸矢のもっともらしい意見に対して反抗するものはおらず思い想いに談笑を始める。
「まぁまぁ新次。そんな怒るなって。」
「順次……。だってよ。」
不貞腐れた子供みたいな顔を見せる俺に、優しく声をかけてくれた男の名前は竹森順次。
細めの身体をした高身長の爽やか大学生だ。いつも友人が悩んでいると真っ先に声をかけてくれるような、よく言えば面倒見が良く、悪く言えばお節介な男だ。
順次は不貞腐れ続ける俺を更に宥めるように、俺たちとは反対方向に座る男を指差し笑う。
「ハハ。あれ見ろよ。」
「プハー……。おい酒足りねぇぞバカやろー」
そう言い既に顔が赤くなっているのは鬼塚直樹。
直樹は自分の周りに置いてあるお酒をなりふり構わず呑み散らかしており、既にある程度出来上がっているような雰囲気だ。
直樹の酒好きはこの辺ではかなり有名。それに合わせたかのような見た目をしており、無精髭を生やし少し不潔にも見えるその風貌。高校生の時から同級生とは思えないほどの老け具合だった。
今までの話逃れを聞いていなかったのか、あろうことか直樹は周りに座る友人達に酒を勧め始めている。もちろん、例の如くそんなフライングを許さない男がいるのだが。
「直樹君!なんで飲んでるの!……待つって言ったのに。今呑んだ分買いに行かないとお酒も無くなっちゃうよ。一緒に買いに行こう。」
「は?なんで俺がそんな事……。」
案の定、陸矢と直樹が言い合いになりそうになる。だがこの場にいる全員が結果は分かっていた。
言い返そうとする直樹、じっと真っ直ぐ直己の目を見つめる陸矢。直樹は喉元まで何か言いたそうな雰囲気ん出していだが、出たのはため息だけだった。
「ちっ……。分かったよバカやろー。」
怪訝な表情を見せながらも渋々立ち上がりお酒の買い出しに足を運び始める直樹と陸矢。その場にいる全員の予想通り陸矢の勝ちだ。
これは高校時代から何も変わっていない。陸矢はかなり頑固な性格で、一度これが正しいと決めたら絶対に折れない。みんなそれを分かっているから、無駄な言い合いはしないのだ。
まるで陸矢に連行されるように部屋を出ていく直樹の姿を見て鼻で笑った後、隣にいる順次に声をかける。
「後来てないのは誰だ?」
「怜達4人に、一郎。……それに千秋だな。」
「龍平とアダムは?」
「その2人は今日は来れない。」
俺は現状を把握した後に周りを見渡す。確か今日来るのは全部で15人だから、この部屋にいる人数は今かなり少ない。むしろ直樹達が出て行ったせいでいない人数の方が多いぐらいだ。
しかも15人全員が同級生と言うわけではなく、そのうち2人は後輩だ。俺たちの学校は元々4クラスに分かれており、今回の同窓会は高校3年生の時のクラスメートのみ参加となっている。
ちなみに男子校であり、今回集まり15人のうち14人が男。男子校の悲しさだな。
俺はそんなことを考えながら、陸矢がいないことをいい事に目の前のビールの栓を開けた。
30畳はあるであろう縦長の和室。そこにはいかにも高級そうな木目調の大きなテーブル二つ並べられている。ピザや寿司などの食べ物、そして大量のお酒が乱雑に広げられており、その光景を見るだけで騒がしさが伝わった。
「これより同窓会を始める!かんぱーい!」
俺が号令を出すと同時に、待ってましたと言わんばかりに周りの同級生達も声を上げる。同時にほぼ全員が持っていた酒に口をつけ出すが、そんな盛り上がりムードを壊す者もいた。
「ちょっと待ってよ新次くん!まだ怜くん達が来てないから早いんじゃ……。」
その場をしらけさせた人物の名前は一寸陸矢。会場であるこの場の家主だ。
普通は同窓会は居酒屋やどこか会場を借りて行うものだが、俺たちの場合は違う。
陸矢の親がテレビにも出ているような有名な医者であり、大金持ち。少人数であるクラスメートが集まる分には何ら問題のないほどの土地を所有している。そのため、陸矢に頼み部屋の一つを貸してもらい会場としていた。
陸矢は昔から真面目な性格で、眼鏡をかけており頭髪検査に引っかかりそうにもない黒髪。いかにも優等生という風貌だ。これも医者の親が厳格だからか。だが真面目すぎる故、今回のように空気が読めずに場を醒めさせる事が多々ある。
「いいよ。あいつらおせぇし先に始めよう」
改めてその場を盛り上げるべく声をかける。
そんな俺の名前は亀田新次。自分で言うのもなんだがクラスのムードメーカー的な存在だ。今回同窓会を企画したのも俺で、こういう集まりは大体俺を中心に集まる事が多い。
周りの数人の友人たちも俺に同意したのか、陸矢の方に目をやり頷いて見せていた。だが優等生はそんな事では説得できない。
「そういう訳には行かないよ。そもそもまだ集合時間までは時間ある訳だし。もう少し待とう?」
陸矢の言う通り、確かに当初の集合時間よりはまだ30分ほどの猶予がある。だが思いの外その他のメンバーの集まりが早く先に始めてしまおうと思っていた。
が、俺のそんな魂胆は案の定、陸矢には通じなかった。陸矢は俺の目をじっと見つめて俺の返事を待つ。
ここで俺が納得しなければまるで俺が悪者みたいになるだろう。俺は少し粘った末に最終的には折れ、その場に不機嫌そうに腰掛けて見せた。
周りの同級生達も少しため息をついているものの、陸矢のもっともらしい意見に対して反抗するものはおらず思い想いに談笑を始める。
「まぁまぁ新次。そんな怒るなって。」
「順次……。だってよ。」
不貞腐れた子供みたいな顔を見せる俺に、優しく声をかけてくれた男の名前は竹森順次。
細めの身体をした高身長の爽やか大学生だ。いつも友人が悩んでいると真っ先に声をかけてくれるような、よく言えば面倒見が良く、悪く言えばお節介な男だ。
順次は不貞腐れ続ける俺を更に宥めるように、俺たちとは反対方向に座る男を指差し笑う。
「ハハ。あれ見ろよ。」
「プハー……。おい酒足りねぇぞバカやろー」
そう言い既に顔が赤くなっているのは鬼塚直樹。
直樹は自分の周りに置いてあるお酒をなりふり構わず呑み散らかしており、既にある程度出来上がっているような雰囲気だ。
直樹の酒好きはこの辺ではかなり有名。それに合わせたかのような見た目をしており、無精髭を生やし少し不潔にも見えるその風貌。高校生の時から同級生とは思えないほどの老け具合だった。
今までの話逃れを聞いていなかったのか、あろうことか直樹は周りに座る友人達に酒を勧め始めている。もちろん、例の如くそんなフライングを許さない男がいるのだが。
「直樹君!なんで飲んでるの!……待つって言ったのに。今呑んだ分買いに行かないとお酒も無くなっちゃうよ。一緒に買いに行こう。」
「は?なんで俺がそんな事……。」
案の定、陸矢と直樹が言い合いになりそうになる。だがこの場にいる全員が結果は分かっていた。
言い返そうとする直樹、じっと真っ直ぐ直己の目を見つめる陸矢。直樹は喉元まで何か言いたそうな雰囲気ん出していだが、出たのはため息だけだった。
「ちっ……。分かったよバカやろー。」
怪訝な表情を見せながらも渋々立ち上がりお酒の買い出しに足を運び始める直樹と陸矢。その場にいる全員の予想通り陸矢の勝ちだ。
これは高校時代から何も変わっていない。陸矢はかなり頑固な性格で、一度これが正しいと決めたら絶対に折れない。みんなそれを分かっているから、無駄な言い合いはしないのだ。
まるで陸矢に連行されるように部屋を出ていく直樹の姿を見て鼻で笑った後、隣にいる順次に声をかける。
「後来てないのは誰だ?」
「怜達4人に、一郎。……それに千秋だな。」
「龍平とアダムは?」
「その2人は今日は来れない。」
俺は現状を把握した後に周りを見渡す。確か今日来るのは全部で15人だから、この部屋にいる人数は今かなり少ない。むしろ直樹達が出て行ったせいでいない人数の方が多いぐらいだ。
しかも15人全員が同級生と言うわけではなく、そのうち2人は後輩だ。俺たちの学校は元々4クラスに分かれており、今回の同窓会は高校3年生の時のクラスメートのみ参加となっている。
ちなみに男子校であり、今回集まり15人のうち14人が男。男子校の悲しさだな。
俺はそんなことを考えながら、陸矢がいないことをいい事に目の前のビールの栓を開けた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる