EVE〜破壊と創造〜

sanzo

文字の大きさ
上 下
3 / 14
第一章 start of travel

砂漠

しおりを挟む

砂埃が舞い上がり、陰影をつける様に凸凹と広がる薄茶色の大地。このシンプルな光景で誰もが分かるだろう。ここは砂漠だと。

声も出ずに目を見開き、その場に坊勢と立ち尽くす俺に、少年は平然とした態度で話を始める。

「言ったろ?……まぁ本当は村まで運んでやる予定だったが、俺は一応砂漠の盗賊団の一員だからな。色々と面倒なんだ。……あぁ名前はピッツな?」

今の俺にその、的外れな説明と空気を読まない自己紹介は無意味だった。耳に入ってこない。
ただただ目の前に広がる砂漠に驚くことしかできないでいる。

状況を少しでも整理しなければ。覚えている限りでは今は2014年。場所は日本。こんな砂漠地帯とは違い、高層ビルが立ち並ぶ近代的な都市だった。

思い出せる限りのことを思い出そうとする。ただ単に記憶喪失ということではないらしい。自分の名前も今までの思い出も鮮明に覚えている。
ただあまりに衝撃的でパニックになっていただけだ。それゆえにすぐにある言葉が脳裏によぎった。

【君達には創造世界を旅してもらうよ。目的は……】

その言葉の真意や詳細まではなぜか思い出せない。代わりにはっきりと思いだしたこともある。
俺はこれからバラバラに散った仲間16人を探し出さないといけない。

この現実世界とは異なる【創造世界】で。

自分のやるべきことを思い出した俺の決断は、自分でも驚くほど素早かった。少し息を飲んだ後、俺は少年の方を振り返った。

「ピッツ?って言ったか?なんかあんまり覚えてないけど助かった。ありがとう!」

その言葉にピッツは少し驚きながらも頷いて見せた。それに対して笑顔で頷き返した俺は、再び決意を固めて砂漠の方を見る。
しかしピッツは歩き出す俺を止め、呆れた様な声を出した。

「どこ行く気だ?砂漠を舐めるなよ素人。近くの村まで連れてってやるよ。」

「まじ!?でも子供に無理させるわけにも」

「子供じゃねぇ!俺はこう見えて18歳だ。だいたい誰が歩くなんて言ったよ。」

俺はそのピッツの言葉に対して失礼ながらも思わず驚いてしまった。見たところ大体身長は1メートルとかなり小柄だ。顔もかなり童顔な部類だし、小学生と言われてもなんら違和感はない。

ただそれよりも大事な事をピッツは言っていた。とりあえず年齢の部分はあまり広げずに大事な部分を聞き出す。

「車でもあるのか?」

「ちげぇよ。飛行龍だ。」

ピッツの説明に言葉を詰まらせる。ヒコウリュウと言う聞き馴染みのない乗り物?ではあまりピンとこなかったからだ。

俺の戸惑いを他所に、ピッツは平然たる態度で俺を押しのけてテントの外へと歩き出す。仕方なく質問をすることをやめ、慌ててピッツを追いかけてテントの外に出た。
それにより俺は改めて現実を突きつけられる。ジリジリと肌を焼く太陽の熱は、まさに想像していた砂漠そのものだ。

躊躇しつつも、そそくさと先を歩くピッツに置いてかれまいと後を追う。足を動かすたび高熱の砂がサラサラと靴の中に入り込む。こういう状況だからなのか、かなり不快な感触だ。

「そのヒコウリュウってのは乗り物か?」

俺とは対照的に慣れた様子で前を歩くピッツは立ち止まり、振り返る。かと思うと俺を指差して首を軽く動かして見せた。
なぜか俺を指差すピッツに、顔で聞き返すと、ピッツもう一度俺を指差して見せる。
暫くしてようやくピッツが俺ではなく、俺の後方を指差していることに気がついた。

ピッツの行動に納得した俺はゆっくりと後ろを振り返る。そして俺はまたしても衝撃を受けることになった。

いや、間違いなくこれは人生で一番の衝撃に値するだろう。




【ブワァァァォァ】


「……え?」


ドラゴンがいた……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

ミミサキ市の誘拐犯

三石成
ファンタジー
ユージは本庁捜査一課に所属する刑事だ。キャリア組の中では珍しい、貧しい母子家庭で育った倹約家である。 彼はある日「ミミサキ市の誘拐犯」という特殊な誘拐事件の存在を知る。その誘拐事件は九年前から毎年起こり、毎回一〇〇〇万イェロの身代金を奪われながら、犯人の逃亡を許し続けていた。加えて誘拐されていた子供は必ず無傷で帰ってくる。 多額の金が奪われていることに憤りを感じたユージは、一〇年目の事件解決を目指し、単身ミミサキ市へ向かう。ミミサキ市はリゾート地化が進んだ海沿いの田舎だ。 彼はそこでノラという一五歳の少女と出会って相棒となり、二人で事件の捜査を進めていくことになる。 ブロマンス要素あり、現実に近い異世界での刑事モノファンタジー。 表紙イラスト:斧田藤也様(@SERAUQS)

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

処理中です...