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第一章 start of travel
砂漠
しおりを挟む砂埃が舞い上がり、陰影をつける様に凸凹と広がる薄茶色の大地。このシンプルな光景で誰もが分かるだろう。ここは砂漠だと。
声も出ずに目を見開き、その場に坊勢と立ち尽くす俺に、少年は平然とした態度で話を始める。
「言ったろ?……まぁ本当は村まで運んでやる予定だったが、俺は一応砂漠の盗賊団の一員だからな。色々と面倒なんだ。……あぁ名前はピッツな?」
今の俺にその、的外れな説明と空気を読まない自己紹介は無意味だった。耳に入ってこない。
ただただ目の前に広がる砂漠に驚くことしかできないでいる。
状況を少しでも整理しなければ。覚えている限りでは今は2014年。場所は日本。こんな砂漠地帯とは違い、高層ビルが立ち並ぶ近代的な都市だった。
思い出せる限りのことを思い出そうとする。ただ単に記憶喪失ということではないらしい。自分の名前も今までの思い出も鮮明に覚えている。
ただあまりに衝撃的でパニックになっていただけだ。それゆえにすぐにある言葉が脳裏によぎった。
【君達には創造世界を旅してもらうよ。目的は……】
その言葉の真意や詳細まではなぜか思い出せない。代わりにはっきりと思いだしたこともある。
俺はこれからバラバラに散った仲間16人を探し出さないといけない。
この現実世界とは異なる【創造世界】で。
自分のやるべきことを思い出した俺の決断は、自分でも驚くほど素早かった。少し息を飲んだ後、俺は少年の方を振り返った。
「ピッツ?って言ったか?なんかあんまり覚えてないけど助かった。ありがとう!」
その言葉にピッツは少し驚きながらも頷いて見せた。それに対して笑顔で頷き返した俺は、再び決意を固めて砂漠の方を見る。
しかしピッツは歩き出す俺を止め、呆れた様な声を出した。
「どこ行く気だ?砂漠を舐めるなよ素人。近くの村まで連れてってやるよ。」
「まじ!?でも子供に無理させるわけにも」
「子供じゃねぇ!俺はこう見えて18歳だ。だいたい誰が歩くなんて言ったよ。」
俺はそのピッツの言葉に対して失礼ながらも思わず驚いてしまった。見たところ大体身長は1メートルとかなり小柄だ。顔もかなり童顔な部類だし、小学生と言われてもなんら違和感はない。
ただそれよりも大事な事をピッツは言っていた。とりあえず年齢の部分はあまり広げずに大事な部分を聞き出す。
「車でもあるのか?」
「ちげぇよ。飛行龍だ。」
ピッツの説明に言葉を詰まらせる。ヒコウリュウと言う聞き馴染みのない乗り物?ではあまりピンとこなかったからだ。
俺の戸惑いを他所に、ピッツは平然たる態度で俺を押しのけてテントの外へと歩き出す。仕方なく質問をすることをやめ、慌ててピッツを追いかけてテントの外に出た。
それにより俺は改めて現実を突きつけられる。ジリジリと肌を焼く太陽の熱は、まさに想像していた砂漠そのものだ。
躊躇しつつも、そそくさと先を歩くピッツに置いてかれまいと後を追う。足を動かすたび高熱の砂がサラサラと靴の中に入り込む。こういう状況だからなのか、かなり不快な感触だ。
「そのヒコウリュウってのは乗り物か?」
俺とは対照的に慣れた様子で前を歩くピッツは立ち止まり、振り返る。かと思うと俺を指差して首を軽く動かして見せた。
なぜか俺を指差すピッツに、顔で聞き返すと、ピッツもう一度俺を指差して見せる。
暫くしてようやくピッツが俺ではなく、俺の後方を指差していることに気がついた。
ピッツの行動に納得した俺はゆっくりと後ろを振り返る。そして俺はまたしても衝撃を受けることになった。
いや、間違いなくこれは人生で一番の衝撃に値するだろう。
【ブワァァァォァ】
「……え?」
ドラゴンがいた……。
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