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序章
第五話 ブリデラント王国第一王女
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任命式を終えたユースは、首都のシンボルであるローマンド城へ連れていかれた。
案内しているのは、ミラニアまで神託を伝えに来たあの騎士だった。
「こちらが、食堂になります。」「こちらが、球技場になります。」「こちらが、玉座の間になります。」
淡々と顔色一つ説明を行うので、ユースははっきり言って退屈していた。
「あの~、名前、聞いてませんでしたね。」
「私の名前ですか?帝国軍近衛師団11大隊隊長、ロキ・F・ワイルドです。」
そういってまた淡々と案内を行うのだった。
最後にユースは兵舍に連れていかれた。
「帝国軍人は、この寮を格安で使うことができます。自然戦士の寮は特別仕様ですよ。間取りは2LDKで、日当たり良好。ベッドはインディーカ産の最高級シルクを使用しております。電気、水道、ガスは勿論の事、有線、Wi-Fiが無料で使えます。完全防音仕様で空調と床暖房も完備。それで家賃はたったの五万エウローです。」
不動産会社並みのテンションで紹介された。
ユースはもうこの部屋に住みたくなった。
しかし……
(ミラニアの皆とはお別れするのか……)ユースはやっと、ナーサ・I・ジャクソンが見送っていた子供達のなかで唯一寂しそうな顔をしていた理由が理解できた。
だが、四百キロの距離があるミラニア・ローマ間を行き来することは難しい。自然戦士は単独で契約を結べるそうなので、ユースはその部屋を契約した。
ユースは、引っ越しのためにミラニアに帰ってきた。
聖ミネルヴァ孤児院の扉を開けると、ユースは歓声に迎えられた。
途端に、一人の少女がユースに抱きついてきた。
「な、ナーサ!? いきなり何するの?」
「……ごめんなさい、ユース。ただ、もう会えない気がしたから。」ナーサの目には涙が浮かんでいた。
「まあ、確かに会うのは難しくなるな……」ユースはナーサを引き剥がし、院長サンドロに言った。
「院長、僕、ローマにある兵舍に住むことになりました。」
「そうか、あんないいところに住めるなんて、羨ましいのう。」サンドロは相変わらずの笑顔で答えた。
ユースは、引っ越しを行うに辺り、早速権力を利用した。
自分が率いる小隊の兵に、引っ越しの作業を行わせたのである。
三十名の兵士により、作業はあっという間に終わった。
「じゃ、今度こそ、今までお世話になりました。」
ユースはサンドロに今までのお礼をいい、近所を回ってお別れの挨拶をのべ、リムジンに乗り込んだ。
乗り込む前にナーサが近づいてきて言った。
「ユース、頑張ってね!」輝かしい笑顔だった。
「うん、頑張るよ。」ユースも微笑みながら答えた。
そしてまた全員が万歳でユースを見送ったのである。
「……何よ、最後まで気づかないで……」
ナーサの目にはやはり涙が溢れていた。
ユースは、その日の日夕点呼に参加した。
「……と言うわけで、明日はこの度新しく太陽戦士となられたユース・A・ルーヴェ小隊長殿に、訓練を見学していただく!」
今まで無意識だったが、ユースはもう軍人なのだ。それも本人になんの断りもなく軍人にされたのだから、普通は文句の一つも出るだろう。
しかし、今のユースはそこまで考えてなかったのである。考えていたのは食堂で何が食べられるかと言うことだった。
翌朝06時30分、舍内にラッパの音が響き渡った。
孤児院での起床時間よりも三十分早かったが、ユースは普通に起きた。
そして舍前にて日朝点呼が行われる。
ユースは点呼に参加しながら、周りを観察していた。
この寮にすむ兵士は男性7対女性3。全員が常備軍で、点呼に参加しない兵士は予備軍となる。
ちなみに、常備軍になるかどうかは個々の判断によるらしい。
(ん?じゃあ毎回点呼や訓練に参加しなくてもいいんじゃないか?)とユースは思ったが、折角自分が特別な力を与えられたんだから有効活用しなければと思い、常備軍に身を置くことを決めた。
ユースはその日、兵の訓練を見学した。
基礎鍛練、剣術、射撃、槍術……軍人として国を守るための厳しい訓練を行っていた。
ユースは、実は体力に自信がない。あんな訓練についていけるのだろうかと、心配になった。
一方午後は座学があった。数学、ローマ語、ブリデン語、安全保障論などについて学んだ。
ユースにとっては、こっちの方が楽しそうに思えた。
ユースが教室を除きながら廊下を歩いていると、前から来る人に気づかずぶつかった。
"Hey you! Where are you looking!?"
「……え?」
"Why are you silent! Apologize to me!"
「……え?」
ローマンド人にブリデン語がわかるわけがない。
ユースはコマンドレシーバーの通訳アプリを起動した。
「あの~、もう一度お願いします。」
「どこ見て歩いてるのよ! 謝りなさいよ!」
「あ、ごめんなさい。」やっと相手の言いたいことがわかり、胸を撫で下ろしたユース。
目の前にいたのは、金髪に水色のドレスを纏った美少女。頭上には金のティアラが輝いていた。
「あの、どちら様ですか?」
「何よ、あんた私の事知らないの!?」美少女なのに、口は死ぬほど悪い。
しかし、数秒後にはユースも自分の非を知ることになる。
「私はエリー・スチュアーテラート! ブリデラント王国第一王女! 王位継承者よ!!」
次回より 第一章 ユースとエリー 開幕
第六話 資格無し に続く
案内しているのは、ミラニアまで神託を伝えに来たあの騎士だった。
「こちらが、食堂になります。」「こちらが、球技場になります。」「こちらが、玉座の間になります。」
淡々と顔色一つ説明を行うので、ユースははっきり言って退屈していた。
「あの~、名前、聞いてませんでしたね。」
「私の名前ですか?帝国軍近衛師団11大隊隊長、ロキ・F・ワイルドです。」
そういってまた淡々と案内を行うのだった。
最後にユースは兵舍に連れていかれた。
「帝国軍人は、この寮を格安で使うことができます。自然戦士の寮は特別仕様ですよ。間取りは2LDKで、日当たり良好。ベッドはインディーカ産の最高級シルクを使用しております。電気、水道、ガスは勿論の事、有線、Wi-Fiが無料で使えます。完全防音仕様で空調と床暖房も完備。それで家賃はたったの五万エウローです。」
不動産会社並みのテンションで紹介された。
ユースはもうこの部屋に住みたくなった。
しかし……
(ミラニアの皆とはお別れするのか……)ユースはやっと、ナーサ・I・ジャクソンが見送っていた子供達のなかで唯一寂しそうな顔をしていた理由が理解できた。
だが、四百キロの距離があるミラニア・ローマ間を行き来することは難しい。自然戦士は単独で契約を結べるそうなので、ユースはその部屋を契約した。
ユースは、引っ越しのためにミラニアに帰ってきた。
聖ミネルヴァ孤児院の扉を開けると、ユースは歓声に迎えられた。
途端に、一人の少女がユースに抱きついてきた。
「な、ナーサ!? いきなり何するの?」
「……ごめんなさい、ユース。ただ、もう会えない気がしたから。」ナーサの目には涙が浮かんでいた。
「まあ、確かに会うのは難しくなるな……」ユースはナーサを引き剥がし、院長サンドロに言った。
「院長、僕、ローマにある兵舍に住むことになりました。」
「そうか、あんないいところに住めるなんて、羨ましいのう。」サンドロは相変わらずの笑顔で答えた。
ユースは、引っ越しを行うに辺り、早速権力を利用した。
自分が率いる小隊の兵に、引っ越しの作業を行わせたのである。
三十名の兵士により、作業はあっという間に終わった。
「じゃ、今度こそ、今までお世話になりました。」
ユースはサンドロに今までのお礼をいい、近所を回ってお別れの挨拶をのべ、リムジンに乗り込んだ。
乗り込む前にナーサが近づいてきて言った。
「ユース、頑張ってね!」輝かしい笑顔だった。
「うん、頑張るよ。」ユースも微笑みながら答えた。
そしてまた全員が万歳でユースを見送ったのである。
「……何よ、最後まで気づかないで……」
ナーサの目にはやはり涙が溢れていた。
ユースは、その日の日夕点呼に参加した。
「……と言うわけで、明日はこの度新しく太陽戦士となられたユース・A・ルーヴェ小隊長殿に、訓練を見学していただく!」
今まで無意識だったが、ユースはもう軍人なのだ。それも本人になんの断りもなく軍人にされたのだから、普通は文句の一つも出るだろう。
しかし、今のユースはそこまで考えてなかったのである。考えていたのは食堂で何が食べられるかと言うことだった。
翌朝06時30分、舍内にラッパの音が響き渡った。
孤児院での起床時間よりも三十分早かったが、ユースは普通に起きた。
そして舍前にて日朝点呼が行われる。
ユースは点呼に参加しながら、周りを観察していた。
この寮にすむ兵士は男性7対女性3。全員が常備軍で、点呼に参加しない兵士は予備軍となる。
ちなみに、常備軍になるかどうかは個々の判断によるらしい。
(ん?じゃあ毎回点呼や訓練に参加しなくてもいいんじゃないか?)とユースは思ったが、折角自分が特別な力を与えられたんだから有効活用しなければと思い、常備軍に身を置くことを決めた。
ユースはその日、兵の訓練を見学した。
基礎鍛練、剣術、射撃、槍術……軍人として国を守るための厳しい訓練を行っていた。
ユースは、実は体力に自信がない。あんな訓練についていけるのだろうかと、心配になった。
一方午後は座学があった。数学、ローマ語、ブリデン語、安全保障論などについて学んだ。
ユースにとっては、こっちの方が楽しそうに思えた。
ユースが教室を除きながら廊下を歩いていると、前から来る人に気づかずぶつかった。
"Hey you! Where are you looking!?"
「……え?」
"Why are you silent! Apologize to me!"
「……え?」
ローマンド人にブリデン語がわかるわけがない。
ユースはコマンドレシーバーの通訳アプリを起動した。
「あの~、もう一度お願いします。」
「どこ見て歩いてるのよ! 謝りなさいよ!」
「あ、ごめんなさい。」やっと相手の言いたいことがわかり、胸を撫で下ろしたユース。
目の前にいたのは、金髪に水色のドレスを纏った美少女。頭上には金のティアラが輝いていた。
「あの、どちら様ですか?」
「何よ、あんた私の事知らないの!?」美少女なのに、口は死ぬほど悪い。
しかし、数秒後にはユースも自分の非を知ることになる。
「私はエリー・スチュアーテラート! ブリデラント王国第一王女! 王位継承者よ!!」
次回より 第一章 ユースとエリー 開幕
第六話 資格無し に続く
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