いなくなった弟が帰ってきた

梅崎あめの

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雪玉クッキーと小さな雪だるま②

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 ひらひらと揺れる両翼の羽根から、小さな雪が舞っては落ちていく。
 雪玉のようなクッキーが積まれた、妖精かれらの小さな身体にはいささか大きすぎるバスケットを両手で大切そうに抱えて、少女は無邪気に笑った。

「ありがとう! みんな、よろこぶと思う!」
「食べてみなくていいのだ?」

 赤褐色の妖精かれらが訊ねると、少女は、ぶんぶんと横に振った。

「ううん。みんなで食べるまでの、たのしみにするの!」

 こぼれ落ちそうな笑みを浮かべた少女の羽根がひらひらと揺れる度、小さな雪が舞う。
 念願の雪玉クッキーを手に入れ、余程嬉しいのだろう。
 妖精かれらは、感情が高ぶると、特性が強く出る生き物だ。

 少女は、そうしてしばらく幸せそうにバスケットを見つめていたが、ふいにシェリアに近付いて、
「あのね、てのひらを出してくれる?」
 と、こてんと小首を傾げてみせた。

 シェリアが不思議に思いつつも、両方の手のひらを差し出せば、その手の中に、小さな雪だるまが現れた。ひんやりと冷たい。

「“おまじない”は、いっぱいあるみたいだから……いちど消えちゃうけど、ひつよう・・・・になったら出てくるはず。ありがとう、またね!」

 小さな雪だるまを残し、真っ白な髪をなびかせながら、少女は颯爽と消えた。
 きっと、仲間みんなが待っている宴の場に向かうのだろう。

 赤褐色の妖精かれらもまた、雪玉クッキーによって補完されたプロフィットロールの塔を囲うように立ち並ぶと、塔と共に消えてしまった。
 こちらも、宴の場へ向かったようだ。

 厨房には、シェリアと少年と瑠璃色の少女だけが残された。先ほどまで賑やかだったその場所は、すっかり静まり返っている。

 ──『ひつよう・・・・になったらでてくるはず』

 それは、どのような意味なのだろう。

 ただの小さな雪だるまのようにも見えるけれど、妖精かれらの特製の品である。
 シェリアが見つめていると、真っ白な少女の言葉の通りに、溶けて消えてしまった。
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