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破れない理と“かれら”の在り方①
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柔らかな光の中から現れた少女は、小さな身体を回転させ、辺りをゆっくりと眺めた。
この場にはシェリアと少年と銀白色の妖精ふたりがいるが、まるで、少女以外の時間が止まったかのように誰も動かない。
少女はこてんと首を傾げ、うーんと考え込むようにしたあとに、
「ここはお昼寝にはむかなそう……」
と、不満げに呟いた。
どうやら、少女は、この場は昼寝に適していないと判断したらしい。
それも、当然だろう。星明かりがこれでもかというほどに輝いているだけでも眠るには眩しすぎるのに、おまけに人間と妖精が複数いるのだ。
騒々しいと言っていいかもしれない。
しかもシェリアと少年と銀白色のふたりだけではなく、こっそりと、樹木の影や繁みから隠れて見ている妖精たちもいて、この場自体がいつの間にか小さな集まりになっている。
だが少女は、自分以外動かない状況であることも隠れている妖精たちのことも気にも留めない様子だ。
再び辺りをぐるりと見渡し、シェリアの存在に気付くと、嬉しそうに近寄ってきた。
「呼んでくれて、ありがとう。帰ったら、ぴくにっくとお昼寝つきあってね」
突如呼び出されたというのに怒る気配の微塵もない少女は、ピクニックだけでなくお昼寝の約束まで取り付ける。
シェリアに呼ばれることを想定していたのだろうか。
『なにかあったら呼んでね』と言っていたのは、この事態が起こることを見越していたのかもしれない。
動じることもなくあまりにも平然としているので、反対にシェリアの方が戸惑ってしまっている。
「───“道”に属するやつが、なんの用だ」
ふいに低い声が響いて、シェリアは反射的にびくりとした。
瑠璃色の少女が突然現れたことに、驚愕のあまり固まっていた銀白色の妖精たちは、いつの間にか正気を取り戻していたようだ。
聞こえてきた声に振り向けば、ふたりともお怒りのようである。
どうやら少女が場に乱入してきたことが気に入らないようだ。
「わたしたち道の妖精は、遊んだ相手を送り届けるまでおわれない。だから迎えにきたの。───理に属する妖精なら、知っているはず」
少女の纏う空気が、がらっと変わる。
それは、“ひとならざるもの”のもの。
シェリアは、思わず裏返しに着ている雨避けのコートの裾をぎゅっと掴んだ。
「そんなのは、きべんだ。そいつは、宴のまえに来た。あやしすぎる」
「ぶがいしゃは、帰ることをおすすめ」
「もしも、このまま帰ったら、わたしは理にはんしたとして、消えることになる。その場合、理に属するあなたたちも消えるかもしれない」
───“理に反せば、妖精は消える”
少女の発言に、シェリアはぎょっとした。
シェリアが読んだ書物にそのような記述はなかったが、過去のシーリティ伯爵家の当主はその事実を知らなかったのだろうか。
それとも、記録には残さなかったのだろうか。
もしも書物に残したとしても、それが心ない人間の手に渡ってしまったなら、妖精の生存が脅かされる事態になってしまったかもしれない。
この事実を知ってしまって、果たして本当に無事に帰れるのだろうか。間違いなく、人間が知っていいことではないはずだ。
この場にはシェリアと少年と銀白色の妖精ふたりがいるが、まるで、少女以外の時間が止まったかのように誰も動かない。
少女はこてんと首を傾げ、うーんと考え込むようにしたあとに、
「ここはお昼寝にはむかなそう……」
と、不満げに呟いた。
どうやら、少女は、この場は昼寝に適していないと判断したらしい。
それも、当然だろう。星明かりがこれでもかというほどに輝いているだけでも眠るには眩しすぎるのに、おまけに人間と妖精が複数いるのだ。
騒々しいと言っていいかもしれない。
しかもシェリアと少年と銀白色のふたりだけではなく、こっそりと、樹木の影や繁みから隠れて見ている妖精たちもいて、この場自体がいつの間にか小さな集まりになっている。
だが少女は、自分以外動かない状況であることも隠れている妖精たちのことも気にも留めない様子だ。
再び辺りをぐるりと見渡し、シェリアの存在に気付くと、嬉しそうに近寄ってきた。
「呼んでくれて、ありがとう。帰ったら、ぴくにっくとお昼寝つきあってね」
突如呼び出されたというのに怒る気配の微塵もない少女は、ピクニックだけでなくお昼寝の約束まで取り付ける。
シェリアに呼ばれることを想定していたのだろうか。
『なにかあったら呼んでね』と言っていたのは、この事態が起こることを見越していたのかもしれない。
動じることもなくあまりにも平然としているので、反対にシェリアの方が戸惑ってしまっている。
「───“道”に属するやつが、なんの用だ」
ふいに低い声が響いて、シェリアは反射的にびくりとした。
瑠璃色の少女が突然現れたことに、驚愕のあまり固まっていた銀白色の妖精たちは、いつの間にか正気を取り戻していたようだ。
聞こえてきた声に振り向けば、ふたりともお怒りのようである。
どうやら少女が場に乱入してきたことが気に入らないようだ。
「わたしたち道の妖精は、遊んだ相手を送り届けるまでおわれない。だから迎えにきたの。───理に属する妖精なら、知っているはず」
少女の纏う空気が、がらっと変わる。
それは、“ひとならざるもの”のもの。
シェリアは、思わず裏返しに着ている雨避けのコートの裾をぎゅっと掴んだ。
「そんなのは、きべんだ。そいつは、宴のまえに来た。あやしすぎる」
「ぶがいしゃは、帰ることをおすすめ」
「もしも、このまま帰ったら、わたしは理にはんしたとして、消えることになる。その場合、理に属するあなたたちも消えるかもしれない」
───“理に反せば、妖精は消える”
少女の発言に、シェリアはぎょっとした。
シェリアが読んだ書物にそのような記述はなかったが、過去のシーリティ伯爵家の当主はその事実を知らなかったのだろうか。
それとも、記録には残さなかったのだろうか。
もしも書物に残したとしても、それが心ない人間の手に渡ってしまったなら、妖精の生存が脅かされる事態になってしまったかもしれない。
この事実を知ってしまって、果たして本当に無事に帰れるのだろうか。間違いなく、人間が知っていいことではないはずだ。
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