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きらきら光る星明かりとパーティー会場②
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少年がそう言うや否や、人間の手のひらほどの大きさの小さな生き物たちが、シェリアの目の前に飛び出してきた。
銀白色の髪が、星の光に照らされて煌々と美しい。
座り込んだ状態のシェリアの前で並んで仁王立ちするこの三人が、“見回り”と呼ばれる存在なのだろうか。
「侵入者はっけーん」
「はいじょする?食べる?」
「それとも連れてかえるー?」
聞こえてきた物騒な言葉に、シェリアは思わずびくりとした。
妖精は、人間を食べるものなのだろうか。
シェリアが今まで読んできた書物には、そのような記述はなかったが、そもそも食べられたなら証言することは難しいだろう。
「……彼女は、この森の客人だよ。道に属する妖精に連れられて、僕に逢いにきてくれたんだ」
そう言って、少年はシェリアの手首にある瑠璃色の輪にちらりと視線を向けると、シェリアと銀白色の髪を持つ生き物たちの間に立った。
そして、なにかの合図のように少年がシェリアの手首に視線を向ける。
そこにあるのは、道の妖精である瑠璃色の髪を持つ少女がくれたものだ。
───『……離れていても、それに触れると、分かるようになってるの』
手首にある瑠璃色の輪に視線を落としたシェリアの脳裏に、瑠璃色の髪の少女の言葉が蘇る。
───『なにかこまったり、あぶなくなったら、それで呼んでね』
そう言ってくれたけれど、果たして本当に呼んでいいものだろうか。
巻き込んで迷惑かけてしまうのではないか。
「……きみは前にも、にんげんといた気がする」
「それは信用むずかしい」
「あやしいにんげんに味方はんたい」
シェリアが逡巡している間に、少年に対して疑いの目が向けられる。
事態はあまりよろしくないようだ。
「もうすぐ夏至祭。うたげのじかん」
「じょうおうさまを害するものははいじょ」
「…………“おまじない”の匂い?」
銀白色の髪を持つ“かれら”のひとりが“おまじない”について言及すると、僅かな沈黙が訪れた。
静寂の中、言及した本人はシェリアに近寄り、嗅ぐような動作をしたあと、ぽつりと呟いた。
「…………しかも、いっぱい。…………あれ?それ……妖精の髪?」
シェリアの手首にある輪に気付いた途端、眉根を寄せて考えこむように黙ってしまったが、その発言は、どうやら銀白色の髪を持つあとのふたりにとっては、疑いを更に深めてしまったようだ。
「…………“おまじない”に妖精の髪を持っているとは、もしや、みつりょうしゃ?」
「……どこかのしょうにんから、買ったかのうせい」
しかし、シェリアは“かれら”を密猟するつもりも、危害を加えるつもりもない。
「…………私は、あなたたちの宴を邪魔をするつもりも、あなたたちの女王様に危害を加えるつもりもないわ。この森には、逢いたいひとがいて来たの。……この髪は、貰ったものなの」
シェリアの説明に当然のごとく警戒は解いてもらえないけれど、これは仕方ないことだろう。
怪しい人間に「自分は怪しい者ではございません」と言われたところで、怪しいことに変わりはないのだ。
銀白の色髪を持つふたりの目付きが鋭いものに変わる。
ふたりにとって怪しいシェリアが説明したところで、なんの意味もなかった。
戸惑うシェリアが周囲に視線を巡らすと、いつの間にか、“おまじない”に言及した銀白色の髪のひとりいなくなっていた。
少年とシェリアの視線が合い、こくりと頷かれる。
シェリアはきゅっと瞼を閉じると、手首にある瑠璃色の輪に触れた。巻き込んだお詫びに、ピクニックに付き合うと心の中で謝りつつ。
すると、柔らかな光に包まれた次の瞬間、道妖精の少女が現れた。
銀白色の髪が、星の光に照らされて煌々と美しい。
座り込んだ状態のシェリアの前で並んで仁王立ちするこの三人が、“見回り”と呼ばれる存在なのだろうか。
「侵入者はっけーん」
「はいじょする?食べる?」
「それとも連れてかえるー?」
聞こえてきた物騒な言葉に、シェリアは思わずびくりとした。
妖精は、人間を食べるものなのだろうか。
シェリアが今まで読んできた書物には、そのような記述はなかったが、そもそも食べられたなら証言することは難しいだろう。
「……彼女は、この森の客人だよ。道に属する妖精に連れられて、僕に逢いにきてくれたんだ」
そう言って、少年はシェリアの手首にある瑠璃色の輪にちらりと視線を向けると、シェリアと銀白色の髪を持つ生き物たちの間に立った。
そして、なにかの合図のように少年がシェリアの手首に視線を向ける。
そこにあるのは、道の妖精である瑠璃色の髪を持つ少女がくれたものだ。
───『……離れていても、それに触れると、分かるようになってるの』
手首にある瑠璃色の輪に視線を落としたシェリアの脳裏に、瑠璃色の髪の少女の言葉が蘇る。
───『なにかこまったり、あぶなくなったら、それで呼んでね』
そう言ってくれたけれど、果たして本当に呼んでいいものだろうか。
巻き込んで迷惑かけてしまうのではないか。
「……きみは前にも、にんげんといた気がする」
「それは信用むずかしい」
「あやしいにんげんに味方はんたい」
シェリアが逡巡している間に、少年に対して疑いの目が向けられる。
事態はあまりよろしくないようだ。
「もうすぐ夏至祭。うたげのじかん」
「じょうおうさまを害するものははいじょ」
「…………“おまじない”の匂い?」
銀白色の髪を持つ“かれら”のひとりが“おまじない”について言及すると、僅かな沈黙が訪れた。
静寂の中、言及した本人はシェリアに近寄り、嗅ぐような動作をしたあと、ぽつりと呟いた。
「…………しかも、いっぱい。…………あれ?それ……妖精の髪?」
シェリアの手首にある輪に気付いた途端、眉根を寄せて考えこむように黙ってしまったが、その発言は、どうやら銀白色の髪を持つあとのふたりにとっては、疑いを更に深めてしまったようだ。
「…………“おまじない”に妖精の髪を持っているとは、もしや、みつりょうしゃ?」
「……どこかのしょうにんから、買ったかのうせい」
しかし、シェリアは“かれら”を密猟するつもりも、危害を加えるつもりもない。
「…………私は、あなたたちの宴を邪魔をするつもりも、あなたたちの女王様に危害を加えるつもりもないわ。この森には、逢いたいひとがいて来たの。……この髪は、貰ったものなの」
シェリアの説明に当然のごとく警戒は解いてもらえないけれど、これは仕方ないことだろう。
怪しい人間に「自分は怪しい者ではございません」と言われたところで、怪しいことに変わりはないのだ。
銀白の色髪を持つふたりの目付きが鋭いものに変わる。
ふたりにとって怪しいシェリアが説明したところで、なんの意味もなかった。
戸惑うシェリアが周囲に視線を巡らすと、いつの間にか、“おまじない”に言及した銀白色の髪のひとりいなくなっていた。
少年とシェリアの視線が合い、こくりと頷かれる。
シェリアはきゅっと瞼を閉じると、手首にある瑠璃色の輪に触れた。巻き込んだお詫びに、ピクニックに付き合うと心の中で謝りつつ。
すると、柔らかな光に包まれた次の瞬間、道妖精の少女が現れた。
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