【完結】アドバンッ!!

麻田 雄

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 完成した音源を三谷さん達のレーベルに送り、はや三ヶ月。

 気が付けば季節は夏。
 梅雨も明けて蒸し暑さから、単なる猛暑へと変貌を遂げていた。
 ついこの間まで春休みだった筈なのに……もう夏休みが近い。
 間に一度ライブを行ったが、僕の気持ちは完全にCDの方へ向いていた。


 そして今日がCDの発売日。

 僕等コムのメンバーは皆で発売されたCDを見に行く事にした。
 現物は手元に届いているのだが、それとこれとは別の話で、販売されている様子を見てみたい。

 僕等コムのメンバーは、学校が終わってからいつものファミレスに一度集まり、この辺りで一番大きいCDショップへ向かった。


  ◇  ◇  ◇


 CDショップの中に入り新譜コーナーと、インディーズコーナーをくまなく探す。

 「あれ?置いてない」

 姉御は驚いていた。

 確かに僕等のCDは店内の何処を探しても置いてはいなかった。
 見つからないので、店員さんに尋ねてみたところインディーズのCDはあまり取り扱っていないのだと伝えられた。

 肩透かしを喰らった僕等。

 「やっぱり、インディーズの、しかもオムニバスなんてそんなに置いてないのかなぁ?」

 僕が弱気な発言をすると、姉御は――

 「とりあえず、探せる範囲で探してみよう。手分けしてさ」

 その一言で、僕等は手分けして僕等のCDが置いてある店を探す事になった。


  ◇  ◇  ◇


 僕は思いつく限りのCDショップを探したが見つからず、半ば諦めかけていた。
 すると、宮田から「売っているお店、見つけたよ」と、メッセが入る。
 僕はすぐに電話を掛けて場所を確認し、店に向かった。


  ◇  ◇  ◇


 僕が店に着いた時には、既に他のメンバーは皆到着していた。

 「保科、遅いよ!」

 姉御が僕に気付く。

 「ごめん、ちょっと遠くまで探しに行ってたから」

 そう言った後に、皆が集まっている場所に近付き。
 宮田が指差した場所を見る。
 平積みとかではなく、インディーズコーナーにひっそりと一枚、背表紙が見えるような形で並べてあった。

 だが、そのCDを見て、僕は嬉しくて涙が出そうになった。
 当然、池上とか、もっと全然真剣に音楽をやっている人達に比べれば、僕なんてまだまだ努力や苦労をしているウチに入らないとは思う。
 だが、それでも今は悦に浸りたかったのだ。

 「でも、何でこのお店には置いてあったんだろ?そんなに大きいお店ってワケでもないのに……」

 僕が店員さんに聞こえないように呟く様に言うと、宮田が答えた。

 「ここの店長さんが、一緒に参加してるバンドの人と知り合いなんだって」
 「そういうのもあるんだ」

 僕は納得する。

 「だから俺等も色んなお店に行って、並べて貰えるように頼もうかっていう話をしてたんだ」

 木田がここまでの状況を説明してくれた。

 「それ、僕も賛成」
 「賛成っていうか、強制だから」

 姉御は僕を見て、威圧感のある笑みを浮かべた。
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