【完結】アドバンッ!!

麻田 雄

文字の大きさ
上 下
19 / 47

19

しおりを挟む

 スタジオからの帰り道。
 珍しくというか、この半年近くで初めて、僕は姉御と二人だけ帰宅する事となった。
 だからと言って今更特に意識する事も無いのだが。
 スタジオでの一件で、何か気まずい感じにはなっていた。

 「……よく分からないんだけど、どうして宮田はあんなに機嫌悪くなったんだろう?確かに茶化されたのが嫌だったのかも知れないけど、そこまで怒る事でも無いと思うけど……」

 僕が何気なくそう言った後、姉御は少し困った表情で――

 「……いや、あたしは分かってた筈なんだよね。ちょっと調子に乗っちゃったなって反省してる」
 「分かってた?反省?話が見えないんだけど」
 「……そうだよね。言っちゃってもいいのかな?……けど、知ってた方が未然に防げるし」

 悩んでいる様子の姉御。

 「いや、そこまで聞いちゃったら気になるから……何か心当たりがあるの?誰にも言わないって約束するから教えて欲しい」
 「そう?誰にも言わないって約束できる?当然ミヤ本人にもだよ?」

 なんだか悩んでいた割に、少し活き活きしている感じもする。
 『本当は話したい』という気持ちが感じ取れる。
 ……姉御って思ったよりも口が軽いのかも?
 そうは思いながらも、やはり話が気になる僕は「うん、約束する」と、深く頷いた。

 すると姉御は思い出すような素振りをして話し始める――

 「確か中三の頃だったかなぁ……?ミヤは……まぁ、今とそんなに変わらなかったけど、今よりはもう少し男子とも交友あったりして、それなりに人気もあったりしたんだけど、特定の彼氏とか作らなかったんだよね。で、そうなると、一部の女子から嫌われたりして……。そういうのも気にはしてたんだけど……ある時、池上と外で会ってるのを見たっていう子が出てきて、その噂が広まって……」
 「えっ?池上って僕と同室のあの池上?」

 僕は予想外の展開に驚き口を挟んでしまった。

 「そう。で、その頃からそれなりに女子に人気のあった池上だったから、余計に妬みの対象になっちゃってね。二人は付き合ってて、それを隠して面白がってるなんてデマも流されたりして……。ミヤの事を妬んでた子とか、池上に振られた子の一方的な逆恨みだとは思うけど……」
 「けど……?」
 「……ミヤも池上も否定はしてたよ。でも、そういう噂が広がるのは早くてね……。当然あたしはミヤの味方だったけど。それでも、陰でだいぶ酷い事も言われたりしたみたいで、結構悩んでた時期もあったから……。一種のトラウマみたいになってるのかも……。それ以降、ミヤには恋愛関係の話はしないようにしてたんだ……今日は、ついうっかり」

 その話を聞いた事に僕は少し後悔した。
 宮田を不憫に思う気持ちもあったが、それ以上に 僕の近しい人間が二人も絡んでいるというのが面倒だ。
 お互い否定していたとは言っても、火の無い所に煙は立たないと言うし……。
 何かあると思うのが当然で、案外宮田が再びバンドを始めたのもそのあたりが関係しているんじゃないのか?と、邪推すらしてしまう。

 「うん、僕も下手なこと言わないように気を付ける」
 「っていうか、絶対秘密だから!誰にも言っちゃ駄目だからね!」
 「うん」

 僕は再び深く頷く。

 というか地雷源かもしれないものが設置されている事を知った以上は、何もわざわざ自分から飛び込むことは無い。
 「この話は木田にも内緒だからね!!」と、姉御が念を押したところで、僕と別れた。

 宮田と池上かぁ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

坊主女子:女子野球短編集【短編集】

S.H.L
青春
野球をやっている女の子が坊主になるストーリーを集めた短編集ですり

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

坊主女子:学園青春短編集【短編集】

S.H.L
青春
坊主女子の学園もの青春ストーリーを集めた短編集です。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

夏の決意

S.H.L
青春
主人公の遥(はるか)は高校3年生の女子バスケットボール部のキャプテン。部員たちとともに全国大会出場を目指して練習に励んでいたが、ある日、突然のアクシデントによりチームは崩壊の危機に瀕する。そんな中、遥は自らの決意を示すため、坊主頭になることを決意する。この決意はチームを再び一つにまとめるきっかけとなり、仲間たちとの絆を深め、成長していく青春ストーリー。

処理中です...