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突然の懲罰
第64話 減俸二か月
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カウラの『ハコスカ』で本部に帰った誠は『特殊な部隊』の隊長室で呼び出された。
『駄目人間』の正面にランと並んで立たされている。
目の前には自分と大して変わらない年に見えるのに、執拗に『46歳、×イチ』と主張する『脳ピンク』に誠はただあきれるばかりだった。
嵯峨はぎしぎし言う隊長の椅子に背もたれに体を預けて、頭の後ろで両手を組んで二人を見つめていた。
「神前。今回は、『おとり捜査』ってことで話が付いたから」
「おとり捜査?僕は拉致されたんですけど……」
部隊長自らの捏造に誠は思わず反発した。
「まさか遼州同盟司法局直属の実力部隊と言う触れ込みの『特殊な部隊』なの、うちは。マフィアの三下にのこのこついて行きましたなんてかっこ悪くてさ、俺も言えなかったんだよ」
そう言うと嵯峨は静かに誠に目を向けた。
「でもそれって嘘じゃないですか!」
抗議をする誠だが、嵯峨は軽く手を挙げてそれを制した。
「あのね、大事にしてどうすんの?遼州同盟と地球は国交が無いんだよね。これでマフィアが『特殊な部隊』の隊員の秘密を握ってどこかの政府の依頼で拉致ったなんてことになったら……最悪戦争だよ」
冷静に、押し殺すような口調で嵯峨はそう言った。
「戦争……」
東和共和国では無縁な言葉だが、その外の世界ではありふれた日常の殺し合いを想像して誠はつばを飲み込んだ。
誠はこの『駄目人間』の底知れぬ恐ろしさに恐怖し、そんな『化け物』に息子を預けた母を恨んだ。
「そこで、まあお前の件は『マフィアの麻薬取引』の現場に、うちが突入したことにして、偉い人に報告したわけ。俺が地球系マフィアのボスをパクった件は、まあ連中も嫌な顔してたよ。『国際問題』だとか言いやがるんだ」
「『国際問題』ってなんでですか?犯罪者を捕まえたのに!そんな連中を放置している地球圏が悪いんじゃないですか!」
おっかなびっくり。そんな言葉がぴったり似合う表情の誠は、目の前の隊長の机に座っている嵯峨に向けてそう言った。
「そりゃあそうなんだけどさ。外交問題ってのは微妙なもんなんだよ。地球圏と遼州星系同盟の関係は特にセンシティブなんだよね。やれ『人権』がどうの、『私的財産権』がどうのと騒ぐんだよ、お互いに。社会に出ればそう言うのがあるんだよ……分かったかな?」
嵯峨は適当にそう言うと静かに目を机に落とした。
「まあ、東和警察も神前の『素性』を表ざたにせずに、あの『地球圏犯罪者』の大物の身柄を拘束して、拘留を続けようっていいうんだからな。まあ叩けば埃が出る野郎だから、何とかなったみたいだけど」
直立不動の姿勢をとっているランと誠を前に嵯峨はそう言ってほほ笑んだ。
「じゃあ僕の責任は……」
恐る恐る誠はそう言ってみた。嵯峨は顔色一つ変えずに語り始めた。
「聞いてなかったのか?そもそもお前さんは、あそこに自分で突入したって言うことで口裏あわせも済んでるんだ。東和警察の連中もそれで書類が作れるって喜んでるんだから問題無いだろ?まあどうせ東和警察の連中には、俺は信用なんてされてないんだから、お前が責任云々言う話じゃないよ。まあここの上部組織の司法局の本局には報告義務があるから、それなりの書類出して処分を待つ形だが……『中佐殿』……。さすがに今度は『減俸二ヶ月』は食らうかな?俺もお前さんも無茶しすぎたわ」
『減俸二か月』
その言葉に誠は思わず背筋に緊張が走るのを感じて隣のランに目をやった。
ランは全く動じるそぶりもなく、話を向けられたランは頭を掻きながら嵯峨に対する言葉を探っていた。
「まあ、うちらの無茶で迷惑をかけた、『関係各所』の苦労を考えっとそんくらいが妥当じゃねーですか?西園寺の馬鹿が同盟に非協力的な国の大統領に『発砲』しかけた時は、半期のボーナス全額カットだったし」
ランがさらりとそういってのけたのを見て、誠はただ驚きに目を白黒させるだけだった。
『こいつ等本当に『特殊な部隊』だ!』
誠は危険度においてもここは『特殊な部隊』であることを再確認した。
「じゃあ神前。報告書も何もいらないから。まあしばらく頭冷やしてじっとしてろや」
そう言うと嵯峨は目の前の書類に目を墜とした。
「行くぞ」
いつもの小さな8歳ぐらいの女の子にしか見えない体から、『殺気』が放たれる。
ランは誠の腰をかわいい手で叩いて、誠に隊長室から出ていくように合図した。
「それじゃあ失礼します!」
誠はランに続いて勢い良く扉を開けて出て行った。
その様子を見送りながら嵯峨はひじを机の上についてその上に顔を乗せてランを見つめる。
「『中佐殿』。ちったあ、フォローしてやれよ。一応、お前さんの直下の部下だろ?機動部隊の隊長はお前さんってことになってるんだから」
ランは頭を掻きながら嵯峨を正面からにらみつけた。
沈黙を続ける幼女に、嵯峨は諦めたように視線を落とした。
「俺の負けだよ。そうだな、起きちゃったことはどうにもならねえが、問題はこれからのフォローだな。機動部隊隊長さんには苦労かけるが、よろしく頼むよ」
「しゃーねーなー……了解しました!」
手で謝罪の意図を表明している嵯峨の言葉を背に、ランはめんどくさそうに頭を掻きながら部隊長室を後にした。
『駄目人間』の正面にランと並んで立たされている。
目の前には自分と大して変わらない年に見えるのに、執拗に『46歳、×イチ』と主張する『脳ピンク』に誠はただあきれるばかりだった。
嵯峨はぎしぎし言う隊長の椅子に背もたれに体を預けて、頭の後ろで両手を組んで二人を見つめていた。
「神前。今回は、『おとり捜査』ってことで話が付いたから」
「おとり捜査?僕は拉致されたんですけど……」
部隊長自らの捏造に誠は思わず反発した。
「まさか遼州同盟司法局直属の実力部隊と言う触れ込みの『特殊な部隊』なの、うちは。マフィアの三下にのこのこついて行きましたなんてかっこ悪くてさ、俺も言えなかったんだよ」
そう言うと嵯峨は静かに誠に目を向けた。
「でもそれって嘘じゃないですか!」
抗議をする誠だが、嵯峨は軽く手を挙げてそれを制した。
「あのね、大事にしてどうすんの?遼州同盟と地球は国交が無いんだよね。これでマフィアが『特殊な部隊』の隊員の秘密を握ってどこかの政府の依頼で拉致ったなんてことになったら……最悪戦争だよ」
冷静に、押し殺すような口調で嵯峨はそう言った。
「戦争……」
東和共和国では無縁な言葉だが、その外の世界ではありふれた日常の殺し合いを想像して誠はつばを飲み込んだ。
誠はこの『駄目人間』の底知れぬ恐ろしさに恐怖し、そんな『化け物』に息子を預けた母を恨んだ。
「そこで、まあお前の件は『マフィアの麻薬取引』の現場に、うちが突入したことにして、偉い人に報告したわけ。俺が地球系マフィアのボスをパクった件は、まあ連中も嫌な顔してたよ。『国際問題』だとか言いやがるんだ」
「『国際問題』ってなんでですか?犯罪者を捕まえたのに!そんな連中を放置している地球圏が悪いんじゃないですか!」
おっかなびっくり。そんな言葉がぴったり似合う表情の誠は、目の前の隊長の机に座っている嵯峨に向けてそう言った。
「そりゃあそうなんだけどさ。外交問題ってのは微妙なもんなんだよ。地球圏と遼州星系同盟の関係は特にセンシティブなんだよね。やれ『人権』がどうの、『私的財産権』がどうのと騒ぐんだよ、お互いに。社会に出ればそう言うのがあるんだよ……分かったかな?」
嵯峨は適当にそう言うと静かに目を机に落とした。
「まあ、東和警察も神前の『素性』を表ざたにせずに、あの『地球圏犯罪者』の大物の身柄を拘束して、拘留を続けようっていいうんだからな。まあ叩けば埃が出る野郎だから、何とかなったみたいだけど」
直立不動の姿勢をとっているランと誠を前に嵯峨はそう言ってほほ笑んだ。
「じゃあ僕の責任は……」
恐る恐る誠はそう言ってみた。嵯峨は顔色一つ変えずに語り始めた。
「聞いてなかったのか?そもそもお前さんは、あそこに自分で突入したって言うことで口裏あわせも済んでるんだ。東和警察の連中もそれで書類が作れるって喜んでるんだから問題無いだろ?まあどうせ東和警察の連中には、俺は信用なんてされてないんだから、お前が責任云々言う話じゃないよ。まあここの上部組織の司法局の本局には報告義務があるから、それなりの書類出して処分を待つ形だが……『中佐殿』……。さすがに今度は『減俸二ヶ月』は食らうかな?俺もお前さんも無茶しすぎたわ」
『減俸二か月』
その言葉に誠は思わず背筋に緊張が走るのを感じて隣のランに目をやった。
ランは全く動じるそぶりもなく、話を向けられたランは頭を掻きながら嵯峨に対する言葉を探っていた。
「まあ、うちらの無茶で迷惑をかけた、『関係各所』の苦労を考えっとそんくらいが妥当じゃねーですか?西園寺の馬鹿が同盟に非協力的な国の大統領に『発砲』しかけた時は、半期のボーナス全額カットだったし」
ランがさらりとそういってのけたのを見て、誠はただ驚きに目を白黒させるだけだった。
『こいつ等本当に『特殊な部隊』だ!』
誠は危険度においてもここは『特殊な部隊』であることを再確認した。
「じゃあ神前。報告書も何もいらないから。まあしばらく頭冷やしてじっとしてろや」
そう言うと嵯峨は目の前の書類に目を墜とした。
「行くぞ」
いつもの小さな8歳ぐらいの女の子にしか見えない体から、『殺気』が放たれる。
ランは誠の腰をかわいい手で叩いて、誠に隊長室から出ていくように合図した。
「それじゃあ失礼します!」
誠はランに続いて勢い良く扉を開けて出て行った。
その様子を見送りながら嵯峨はひじを机の上についてその上に顔を乗せてランを見つめる。
「『中佐殿』。ちったあ、フォローしてやれよ。一応、お前さんの直下の部下だろ?機動部隊の隊長はお前さんってことになってるんだから」
ランは頭を掻きながら嵯峨を正面からにらみつけた。
沈黙を続ける幼女に、嵯峨は諦めたように視線を落とした。
「俺の負けだよ。そうだな、起きちゃったことはどうにもならねえが、問題はこれからのフォローだな。機動部隊隊長さんには苦労かけるが、よろしく頼むよ」
「しゃーねーなー……了解しました!」
手で謝罪の意図を表明している嵯峨の言葉を背に、ランはめんどくさそうに頭を掻きながら部隊長室を後にした。
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