上 下
24 / 69
銃とかなめと模擬戦と

第24話 05式特戦(まるごしきとくせん)

しおりを挟む
「することねえのかよ」

 かなめは喫煙所の椅子に座ってタバコを吸いながら、そばに立っている誠に声をかけた。

「どうもすみません」

「謝るようなことじゃねえだろ?まったく」

 そう言ってかなめはタバコを灰皿に押し付けて立ち上がる。

「そうだ。機体を見ずに出ていくのもなんだから、うちのアサルト・モジュールを見てくか?」

 かなめは振り返りながらそんなことを口にしていた。

「いいんですか?」

「良いも何も、うちの機材だもんな。うちの隊員に見せて何が悪いんだ」

 そのままかなめは階段に向かい春樹始める。誠も速足でその後に続いた。

 階段を降り、倉庫に向かう扉を過ぎて、二人は整備班の領域である倉庫にたどり着いた。

 相変わらず倉庫内にはロックンロールが大音量で流れている。

「西園寺さーんなんですか?」

 先ほど誠を冷たくあしらった大柄の整備班員が打って変わって穏やかな表情でかなめに声をかけてきた。

「こいつに05式まるごしきを見せようと思ってさ」

「新入りに見せるんですか?こいつもまたすぐにいなくなりますよ」

「別に軍事機密じゃねえんだからいいだろ?」

 困った表情の整備班員を置き去りにしてかなめはそのまままっすぐ倉庫の中を進んだ。

 倉庫の中で所在投げにたむろしていた整備班員達は、好奇心からくる笑顔を浮かべながら誠達の後ろをついてくる。

「この扉の向こうだ」

 かなめがそう言うと、仕方がないというように先ほどの大柄の整備班員が脇にあったスイッチを押した。

 巨大な扉がゆっくりと開かれ、人ひとりが通れる程度に開いて止まった。

「省エネかよ」

 開いた場所の狭さに愚痴りながらかなめはそのまま中に入った。誠も仕方なくその後に続く。

 中には大型のアサルト・モジュールが三機そびえたっていた。

「三機ってことは……」

「おめえの機体はまだ来てねえんだ。何と言ってもパイロットがすぐ逃げ出すからな。あっても仕方のねえ機体を配備するほど予算があるわけじゃねえからな」

 かなめはそう言いながら一番手前の紅い機体の前に立った。

 全高は9メートル前後。アサルト・モジュールとしては大型の機体である。

「こいつが05式特戦先行試作型まるごしきとくせんせんこうしさくがた。ランの姐御の専用機だ」

 あかく塗装された機体は圧倒的な迫力があり、さすがに遼南内戦のエースの機体の風格を放っていた。

「さすがに『エース』の機体ってところなんですね。専用機ってことは……特別なチューンが施されていたりとか……」

 初めて見る機体の存在感にワクワクが抑えきれない誠をかなめが冷たい視線で眺めていた。

「あのなあ。予算の都合で演習もままならないうちの部隊にそんなチューンをする予算があると思うか?姐御はちっちゃいから普通の機体は乗れねえんだよ!」

 かなめの言葉で誠は我に返った。

 確かにランはどう見ても8歳児で身長は120㎝あるかどうかである。普通の機体に乗れないのは当たり前で、当然専用機になるわけである。

「確かに……でも『先行試作』型ってことは、これをベースに量産がされるんですか?」

 誠はそう言いながら隣の赤い機体と緑色の東和陸軍一般職の機体に目をやった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』

橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった その人との出会いは歓迎すべきものではなかった これは悲しい『出会い』の物語 『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる 法術装甲隊ダグフェロン 第二部  遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。 宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。 そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。 どうせろくな事が起こらないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。 そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。 しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。 この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。 これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。 そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。 そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。 SFお仕事ギャグロマン小説。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...