14 / 69
駄目人間の巣
第14話 取ってつけたような謝罪
しおりを挟む
嵯峨は雑誌の入った袖机を未練がましい目で何度も見た後、誠に向き直った。
「それより……誠、一つ言っておくことがある」
いつも母に向ける真剣な表情の嵯峨がそこにあった。
元々嵯峨はアラフィフなのに、見た目は二十代半ば、そして長身で筋肉質な上に二枚目に見えないこともない。格好を付ければそれなりに決まるのである。
「なんですか?」
もう辞める気満々の誠は高飛車にそう言い放った。
その態度にニヤリと笑った後、嵯峨は机に座ったまま頭を下げた。
「ごめんなさい。全部私がやりました。誠の人生をぶっ壊したのは私です。東和宇宙軍のパイロットコースもごり押しで通しました。ですから、ごめんなさい」
突然謝罪されて、これまでの誠のどういう捨て台詞を残そうかと言う考えが吹き飛んだ。
「なんでやった……オメーだけじゃねーだろ。誰がやった……言ってみろ、中年」
ここまで来たらこのキャラで押そうと誠は強気で乱暴な口調で詰問した。
嵯峨は謝ったらもう済んだとでもいうように顔を上げ開き直った調子で椅子の背もたれに体を預けた。
「ここの全員。まずさあ、就職活動のインターン五社。一社もメーカーが入ってないから、これは潰し解こうってことで、これを全部潰した。希望者募って電話やらネットでお前さんのあることないこと書き込んで人事関係者に曝したら、どんな担当者も手を引くわな普通」
誠は思い出した。大学3年から始まる企業のインターン。担当者が次第に誠を汚物扱いするようになり、最終的にはすべてが立ち消えになった。
「そんなことしても、お前さんを欲しいという酔狂な会社があるの。2社役員面接まで行ったとこ、あったよね。そこにトドメを刺したのが、隣の人格者の幼女」
そう言って嵯峨はランを指さす。
ランは急に表情を消した顔で誠を見上げた。誠は怒りに震えながら、かわいらしいランをにらみつける。
「トドメを刺したのはアタシだ。オメーが幼女にしか欲情しないド変態で、その嗜好を実行したことを演技と妄想でしゃべったら、落ちるわな、ふつー。あと、どちらも英語できなきゃ管理職になれねーぞ。オメーの語学力じゃ無理。定年まで係長か主任で終わるのは嫌だろ?だから潰した。思いやり溢れてるだろ?アタシ。『魔法少女』としてはそう言う客層をキープしておく必要があるわけだ」
そう言ってニヤリと笑う。
『こいつ等全員悪党だ!そして!『魔法少女』ってなんだ!』
誠の心の中はそんな思いで満たされた。
「もし、俺や中佐殿のお眼鏡にかなう会社だったら、別に俺達は悪さしたりしないよ。まあ、うちでもお前の『才能』が貴重だから。お前さんのこと待ってたここの全員が押しかけて、お前の近所が大変なことになるかもしれないけど」
そこまで言って嵯峨は顔を上げ誠を見てニヤリと笑う。
「待ってたんですか……僕を……」
誠は誰かに必要とされているという言葉に少し心を動かされた。
「誤解するなよ。お前にそんな可能性がある。その『才能』で自分達を危機を救ってくれるかもしれない。そう思っただけだ。俺達はお前に納得できる人生を送ってほしいの。でも、それを選ぶのは神前誠。お前だ。決めるのはお前。いいじゃん自分の人生だもの、選択肢があるなら選びなよ」
嵯峨が言いたいのはここに残るかどうか選べという事らしい。
「今……決めなきゃいけないんですか?」
誠はおずおずとそう言った。
「別に、期限なんて野暮なもんは切らないよ。悩んで考えて結論という奴を出しな。それまでうちの所属と言う事で東和宇宙軍に話は付けてある」
静かにそう言うと嵯峨はテーブルの上に置かれていた見慣れない銘柄のタバコを取り出して火をつけた。
「それじゃあとりあえず『特殊な部隊』の面々に挨拶をしないとね。ここの部屋の真下に『運航部』っていう変な髪の色した姉ちゃん達がいるから、そこに挨拶に行って」
嵯峨はそう言うと投げやりに手を振って誠に部屋から出ていくように促した。
「では、失礼します」
誠はとりあえず逃げ出すことは後にでもできると思いなおしてその異常な『隊長室』を後にした。
「それより……誠、一つ言っておくことがある」
いつも母に向ける真剣な表情の嵯峨がそこにあった。
元々嵯峨はアラフィフなのに、見た目は二十代半ば、そして長身で筋肉質な上に二枚目に見えないこともない。格好を付ければそれなりに決まるのである。
「なんですか?」
もう辞める気満々の誠は高飛車にそう言い放った。
その態度にニヤリと笑った後、嵯峨は机に座ったまま頭を下げた。
「ごめんなさい。全部私がやりました。誠の人生をぶっ壊したのは私です。東和宇宙軍のパイロットコースもごり押しで通しました。ですから、ごめんなさい」
突然謝罪されて、これまでの誠のどういう捨て台詞を残そうかと言う考えが吹き飛んだ。
「なんでやった……オメーだけじゃねーだろ。誰がやった……言ってみろ、中年」
ここまで来たらこのキャラで押そうと誠は強気で乱暴な口調で詰問した。
嵯峨は謝ったらもう済んだとでもいうように顔を上げ開き直った調子で椅子の背もたれに体を預けた。
「ここの全員。まずさあ、就職活動のインターン五社。一社もメーカーが入ってないから、これは潰し解こうってことで、これを全部潰した。希望者募って電話やらネットでお前さんのあることないこと書き込んで人事関係者に曝したら、どんな担当者も手を引くわな普通」
誠は思い出した。大学3年から始まる企業のインターン。担当者が次第に誠を汚物扱いするようになり、最終的にはすべてが立ち消えになった。
「そんなことしても、お前さんを欲しいという酔狂な会社があるの。2社役員面接まで行ったとこ、あったよね。そこにトドメを刺したのが、隣の人格者の幼女」
そう言って嵯峨はランを指さす。
ランは急に表情を消した顔で誠を見上げた。誠は怒りに震えながら、かわいらしいランをにらみつける。
「トドメを刺したのはアタシだ。オメーが幼女にしか欲情しないド変態で、その嗜好を実行したことを演技と妄想でしゃべったら、落ちるわな、ふつー。あと、どちらも英語できなきゃ管理職になれねーぞ。オメーの語学力じゃ無理。定年まで係長か主任で終わるのは嫌だろ?だから潰した。思いやり溢れてるだろ?アタシ。『魔法少女』としてはそう言う客層をキープしておく必要があるわけだ」
そう言ってニヤリと笑う。
『こいつ等全員悪党だ!そして!『魔法少女』ってなんだ!』
誠の心の中はそんな思いで満たされた。
「もし、俺や中佐殿のお眼鏡にかなう会社だったら、別に俺達は悪さしたりしないよ。まあ、うちでもお前の『才能』が貴重だから。お前さんのこと待ってたここの全員が押しかけて、お前の近所が大変なことになるかもしれないけど」
そこまで言って嵯峨は顔を上げ誠を見てニヤリと笑う。
「待ってたんですか……僕を……」
誠は誰かに必要とされているという言葉に少し心を動かされた。
「誤解するなよ。お前にそんな可能性がある。その『才能』で自分達を危機を救ってくれるかもしれない。そう思っただけだ。俺達はお前に納得できる人生を送ってほしいの。でも、それを選ぶのは神前誠。お前だ。決めるのはお前。いいじゃん自分の人生だもの、選択肢があるなら選びなよ」
嵯峨が言いたいのはここに残るかどうか選べという事らしい。
「今……決めなきゃいけないんですか?」
誠はおずおずとそう言った。
「別に、期限なんて野暮なもんは切らないよ。悩んで考えて結論という奴を出しな。それまでうちの所属と言う事で東和宇宙軍に話は付けてある」
静かにそう言うと嵯峨はテーブルの上に置かれていた見慣れない銘柄のタバコを取り出して火をつけた。
「それじゃあとりあえず『特殊な部隊』の面々に挨拶をしないとね。ここの部屋の真下に『運航部』っていう変な髪の色した姉ちゃん達がいるから、そこに挨拶に行って」
嵯峨はそう言うと投げやりに手を振って誠に部屋から出ていくように促した。
「では、失礼します」
誠はとりあえず逃げ出すことは後にでもできると思いなおしてその異常な『隊長室』を後にした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第三部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。
一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。
その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。
この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。
そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。
『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。
誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
サドガシマ作戦、2025年初冬、ロシア共和国は突如として佐渡ヶ島に侵攻した。
セキトネリ
ライト文芸
2025年初冬、ウクライナ戦役が膠着状態の中、ロシア連邦東部軍管区(旧極東軍管区)は突如北海道北部と佐渡ヶ島に侵攻。総責任者は東部軍管区ジトコ大将だった。北海道はダミーで狙いは佐渡ヶ島のガメラレーダーであった。これは中国の南西諸島侵攻と台湾侵攻を援助するための密約のためだった。同時に北朝鮮は38度線を越え、ソウルを占拠した。在韓米軍に対しては戦術核の電磁パルス攻撃で米軍を朝鮮半島から駆逐、日本に退避させた。
その中、欧州ロシアに対して、東部軍管区ジトコ大将はロシア連邦からの離脱を決断、中央軍管区と図ってオビ川以東の領土を東ロシア共和国として独立を宣言、日本との相互安保条約を結んだ。
佐渡ヶ島侵攻(通称サドガシマ作戦、Operation Sadogashima)の副指揮官はジトコ大将の娘エレーナ少佐だ。エレーナ少佐率いる東ロシア共和国軍女性部隊二千人は、北朝鮮のホバークラフトによる上陸作戦を陸自水陸機動団と阻止する。
※このシリーズはカクヨム版「サドガシマ作戦(https://kakuyomu.jp/works/16818093092605918428)」と重複しています。ただし、カクヨムではできない説明用の軍事地図、武器詳細はこちらで掲載しております。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
ライト文芸
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる