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遼州星系国際情勢と栄光の?05式特戦(愛称未定)
二機の『専用機』と機械人形の定め
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誠は島田に続いて『アサルト・モジュール』格納庫に入った。
一番手前には真紅に染め上げられたロボット兵器『アサルト・モジュール』があった。
二番目の機体は濃いめのこれも赤い色をベースに、時々刻印の入った機体が置いてあった。
三番目の機体は東和陸軍の深緑の戦闘車両一般色の味もそっけもない機体。これには東和陸軍の各部に指定された刻印が所定の個所に刻印され、その刻印の書体はほぼ東和陸軍に準拠していた。
「専用機ですよね。一番目はクバルカ中佐の機体、二番目はかなめさんの機体、三番目はカウラさんの機体……であってます?」
誠はそう言いながら三機を見上げる島田の顔を眺めた。
「鋭いねえ……さすが秀才。パイロット失格だけど頭は良いみたいだ。当たり。まず手前のと真ん中のが姐御とメカねーちゃんの専用機なのは理由がある」
そう言うとタバコを取り出す島田。その後ろには『班長専用』と書かれた、良く街で見かける喫煙所にある角型の灰皿の近くの壁に寄り掛かった。島田はそうしてまたジッポーでタバコに火をつける。
「理由は簡単。まず、姐御は小さい。とても小さい。だから専用機じゃないと、そもそ手が操縦桿に届かないし、ペダルも足が届かない。だから、専用機以外乗れない」
島田の理由は当然と言うか、当たり前の話だった。サイズが8歳児の平均的大きさのクバルカ・ラン中佐。身長は見た感じ1メートル強である。どう考えても大人の乗るメカの操縦には不向きである。
「そして、メカねーちゃんは……そもそもあのメカねーちゃん。軍事活動をしちゃいけねえんだ」
突然島田が奇妙なことを言い出した。
「西園寺さん大尉ですよ。軍事活動をしちゃいけない軍人……」
誠は島田の顔を見つめながらそう言った。島田はかなめの赤い機体を眺めながらタバコを吸っていた。
「なあに。前線勤務の軍人をサイボーグ化したら強い軍隊が出来る。当たり前だよな、力も瞬発力も判断力さえもサイボーグ化であっという間に生身の人間なんてものの常識を超えちまう。そんな戦う機械を作れる技術を作っちまった訳だ。禁止して当然だと思うよ、俺は」
そう言って島田はかなり長いタバコを灰皿に押し付ける。
「だが逆に、警察はOKなの。いわゆるサイボーグの部隊。あるよ、警察には。警察マニアなら大体見当がついているが、例えば東和なら東都警察の警視庁機動隊に、サイボーグだけで構成された部隊がある」
「あるんですか!そんなもの!」
誠は島田の言葉に驚いて叫んだ。
「当然じゃん。サイボーグってのは、脳と脊髄さえあればどんなに重傷を負っていたり、体の機能に不完全な部分があっても見た目は健康な人間になる……そのために開発された医療器具なんだ。でも、ちょっといじるととんでもない力とネットワークハッキングシステムを持った武器に早変わり。バイクや車とおんなじ。こっちは本来は移動手段なのに、それで人を轢いたり、傷つけちゃうこと……あるじゃん。だから遼州系では警察にはサイボーグだけの機動部隊が公式に存在する。そう公式に」
誠は気づいた。サイボーグが普通にいることは、他の国は知らないが東和共和国では常識だった。小学校入学から彼等はいた。
まず、誠の学年も一人、お金持ちのサイボーグがいた。彼女は力も、ネットワークシステムも持たない民生用の義体、しかも子供用の義体を使用していた。
この子供用の義体を使用しているということがお金持ちを意味することは東和共和国の独自の医療制度によるところが大きかった。
基本的に成人用の義足等は医療保険の特別条項により、無料で支給される。そして、脳と脊髄しか残らない重症であれば成人用の義体が支給される。
つまり、子供でも無料で支給されるのは成人用の義体なのである。子供なら、任意で遺伝子や両親から予想される成人時の顔と、体型については一般に流通している義体の中から任意のものを選ぶことができる。そしてこれはすべて医療保険として、特別条項により無料になる。
だが、金のある人間は子供なら子供用の義体を発注する。その時点で保険の適用は無くなり、自費は使いとして高額な費用が発生することになる。
つまり、子供用の義体を小学生が使用していることは相当なお金持ち。と考えるのが誠の常識だった。
「じゃあ、西園寺さんは……何かで義体に?」
島田に向けて誠は問いかけていた。
「ああ、そうだ。3歳の時かな。テロで……ほぼ、脳と脊髄以外は使い物にならなかったそうだ。そして、その時……」
そう言いながら島田は静かにタバコを吸いこんだ。
「隊長の奥さんが、あのメカねーちゃんのことをかばって死んだ。それ以上は聞くなよ。俺もそれしか知らねえ……俺が言う事じゃねえのは十分承知だ。ただ、二人が過去を隠す気持ちもよくわかる……そういう訳だ」
島田の言葉に誠は後悔するしかなかった。何も知らなければかなめはただの銃を持ち歩きたいだけのサイボーグで済んだ。そして、嵯峨が妻を失っていたこともまた衝撃だった。しかもテロと言う犯罪が一人の3歳児の体と、駄目人間の妻を奪った。
「だから、サイボーグしか動かせない特殊な脳幹リンクシステムを積んでる。普通に生身の人間も操縦できるが、軍用サイボーグの能力を完全に引き出すにはこれになるわけだ」
そう言うと島田は両手を私服のジーンズのポケットに突っこんだまま中央の赤い機体を見上げた。
誠もかなめの専用機の赤い影に目を向けた。
一番手前には真紅に染め上げられたロボット兵器『アサルト・モジュール』があった。
二番目の機体は濃いめのこれも赤い色をベースに、時々刻印の入った機体が置いてあった。
三番目の機体は東和陸軍の深緑の戦闘車両一般色の味もそっけもない機体。これには東和陸軍の各部に指定された刻印が所定の個所に刻印され、その刻印の書体はほぼ東和陸軍に準拠していた。
「専用機ですよね。一番目はクバルカ中佐の機体、二番目はかなめさんの機体、三番目はカウラさんの機体……であってます?」
誠はそう言いながら三機を見上げる島田の顔を眺めた。
「鋭いねえ……さすが秀才。パイロット失格だけど頭は良いみたいだ。当たり。まず手前のと真ん中のが姐御とメカねーちゃんの専用機なのは理由がある」
そう言うとタバコを取り出す島田。その後ろには『班長専用』と書かれた、良く街で見かける喫煙所にある角型の灰皿の近くの壁に寄り掛かった。島田はそうしてまたジッポーでタバコに火をつける。
「理由は簡単。まず、姐御は小さい。とても小さい。だから専用機じゃないと、そもそ手が操縦桿に届かないし、ペダルも足が届かない。だから、専用機以外乗れない」
島田の理由は当然と言うか、当たり前の話だった。サイズが8歳児の平均的大きさのクバルカ・ラン中佐。身長は見た感じ1メートル強である。どう考えても大人の乗るメカの操縦には不向きである。
「そして、メカねーちゃんは……そもそもあのメカねーちゃん。軍事活動をしちゃいけねえんだ」
突然島田が奇妙なことを言い出した。
「西園寺さん大尉ですよ。軍事活動をしちゃいけない軍人……」
誠は島田の顔を見つめながらそう言った。島田はかなめの赤い機体を眺めながらタバコを吸っていた。
「なあに。前線勤務の軍人をサイボーグ化したら強い軍隊が出来る。当たり前だよな、力も瞬発力も判断力さえもサイボーグ化であっという間に生身の人間なんてものの常識を超えちまう。そんな戦う機械を作れる技術を作っちまった訳だ。禁止して当然だと思うよ、俺は」
そう言って島田はかなり長いタバコを灰皿に押し付ける。
「だが逆に、警察はOKなの。いわゆるサイボーグの部隊。あるよ、警察には。警察マニアなら大体見当がついているが、例えば東和なら東都警察の警視庁機動隊に、サイボーグだけで構成された部隊がある」
「あるんですか!そんなもの!」
誠は島田の言葉に驚いて叫んだ。
「当然じゃん。サイボーグってのは、脳と脊髄さえあればどんなに重傷を負っていたり、体の機能に不完全な部分があっても見た目は健康な人間になる……そのために開発された医療器具なんだ。でも、ちょっといじるととんでもない力とネットワークハッキングシステムを持った武器に早変わり。バイクや車とおんなじ。こっちは本来は移動手段なのに、それで人を轢いたり、傷つけちゃうこと……あるじゃん。だから遼州系では警察にはサイボーグだけの機動部隊が公式に存在する。そう公式に」
誠は気づいた。サイボーグが普通にいることは、他の国は知らないが東和共和国では常識だった。小学校入学から彼等はいた。
まず、誠の学年も一人、お金持ちのサイボーグがいた。彼女は力も、ネットワークシステムも持たない民生用の義体、しかも子供用の義体を使用していた。
この子供用の義体を使用しているということがお金持ちを意味することは東和共和国の独自の医療制度によるところが大きかった。
基本的に成人用の義足等は医療保険の特別条項により、無料で支給される。そして、脳と脊髄しか残らない重症であれば成人用の義体が支給される。
つまり、子供でも無料で支給されるのは成人用の義体なのである。子供なら、任意で遺伝子や両親から予想される成人時の顔と、体型については一般に流通している義体の中から任意のものを選ぶことができる。そしてこれはすべて医療保険として、特別条項により無料になる。
だが、金のある人間は子供なら子供用の義体を発注する。その時点で保険の適用は無くなり、自費は使いとして高額な費用が発生することになる。
つまり、子供用の義体を小学生が使用していることは相当なお金持ち。と考えるのが誠の常識だった。
「じゃあ、西園寺さんは……何かで義体に?」
島田に向けて誠は問いかけていた。
「ああ、そうだ。3歳の時かな。テロで……ほぼ、脳と脊髄以外は使い物にならなかったそうだ。そして、その時……」
そう言いながら島田は静かにタバコを吸いこんだ。
「隊長の奥さんが、あのメカねーちゃんのことをかばって死んだ。それ以上は聞くなよ。俺もそれしか知らねえ……俺が言う事じゃねえのは十分承知だ。ただ、二人が過去を隠す気持ちもよくわかる……そういう訳だ」
島田の言葉に誠は後悔するしかなかった。何も知らなければかなめはただの銃を持ち歩きたいだけのサイボーグで済んだ。そして、嵯峨が妻を失っていたこともまた衝撃だった。しかもテロと言う犯罪が一人の3歳児の体と、駄目人間の妻を奪った。
「だから、サイボーグしか動かせない特殊な脳幹リンクシステムを積んでる。普通に生身の人間も操縦できるが、軍用サイボーグの能力を完全に引き出すにはこれになるわけだ」
そう言うと島田は両手を私服のジーンズのポケットに突っこんだまま中央の赤い機体を見上げた。
誠もかなめの専用機の赤い影に目を向けた。
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