特殊装甲隊 ダグフェロン 第一部 蘇る火付盗賊改方 (ひつけとうぞくあらためかた) とは……殺人許可書を持つ「特殊な部隊」

橋本 直

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ある若者の運命と女と酒となじみの焼き鳥屋

ザ・旧車

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 アイシャと誠は雑談した。誠はその中で自分の口にした発言を反芻しながら、『屯所』と隊員隊に呼ばれている、これからしばらくお世話になることになる本部の入口の車止めの前にアイシャと並んで立っていた。

 雑談だった、好きなアニメ(30代の女性が好きなものジャンルでアニメが出てくるところからして異常なことだとは自覚した)。好きなゲーム(ここでも違和感を感じた。普通に人気ゲームを挙げたとき、『そう言って実は……』とエロゲームの趣味に誘導尋問したのはどうやらそちらを言わない限り許さないらしい)のことについて話した。

 誠は明らかに警戒して口をつぐんだ。アイシャはエロの嗜好を確認できないと悟って今のところ何を言っても無駄だと諦めたのか目の前の生け垣を眺めいていた。

「来たみたいね」

 そう言ってアイシャは誠背後の誰かに向けて手を振る。誠はアイシャの視線の先を確認しようと振り向いた。

 アスファルト舗装された道を銀色の車が近づいてきていた。恐らくはかなめかカウラが運転している。

「初めて見る車ですね……なんだかレトロな車」

 その銀色のセダン。運転席にはカウラ、隣にはかなめが座っている。

「そうよね。うちでフルスクラッチした車だからね。まあ、本物は地球の日本だっけ。この東和の元ネタの国で博物館にでもあるんじゃない。うちの環境基準が20世紀の地球並みにユルユルだからこうして走れるけど、地球じゃ排ガス規制で絶対走れないわね、公道は」

 そう言っているアイシャ、そしてアイシャの言葉の意味を考えながら悩んでいる誠の目の前で車は停まった。

 運転席の窓を開けたカウラが口を開く。

「乗れ……あと、アイシャ……余計なことは言わなかったろうな?」

 そのカウラの目は殺意が篭っていた。

「言ってないって!誠ちゃんのゲームや映像の趣味に引っかかるものがあったら……その時はその時で考えるわよ」

 アイシャはそう言って後部座席のドアを開けた。

「じゃあ、王子様。どうぞ」

 そう言ってアイシャは開けたドアの前で手招きする。仕方なく誠はそう広くはない後部座席に体をねじ込んだ。180cm以上なのはわかるアイシャがその隣に座る。当然後部座席は大柄の二人が座るのには狭すぎるという事だけは誠にもわかった。

「出すぞ」

 そう言うとカウラは自動車を発進させた。

「エンジン音……ガソリンエンジン車。フルスクラッチって誰が作ったんですか?」

 誠は変わった車に乗っている以上、それについては普通の反応が期待できると思ってそう言った。。

「こいつの趣味なんだと。有名な旧車で気に入ったの作ってやるって島田が言ったらこれが候補の中に入ってた。そして部品とかの都合がついて、島田が作れると言ってきた中のうち、この緑髪の選んだのがこの『ハコスカ』」

 かなめは進行方向を向いてそう言った。

「島田先輩が作ったんですか?って一人で?」

 誠は島田が自動車を作れるという技術を持っていることに驚きつつそう言った。

「なんでも、暇なんで兵隊の技術維持のために毎回そんな趣味的な車を作るんだよ、島田は。こいつがその三台目。一代目はマニアしか知らないような日本車、運用艦の操舵手の常にマスクをしている姉ちゃんが乗ってる。二代目はアメ車で、オークションに出したら、地球の大金持ちがとんでもない金額で落札して大変な騒ぎになった。その後がこれ通称『ハコスカ』」

 そう言うかなめは一切誠には目を向けず、誠に見えるのはかなめのおかっぱ頭だった。

 車はゲートを抜け、工場内を出口に向かう道路を進んだ。

「『ハコスカ』正式名称ですか」

 ちょっと話題が盛り上がりそうなので、誠はそう言ってみた。

「正式名称は『日産スカイラインC10』まあ、空調とかは最新型だ、エンジンも設計図を元に最高のスペックが出せるように島田がチューンした特別製。当然、ブレーキ、ハンドリングもそれに合わせての島田カスタム。まあ、兵隊が島田が満足するものができるまで、不眠不休で作り上げた血と汗と涙が篭っているものだ。私はそれにふさわしいように大事に乗っている」

 カウラは上手な運転の見本のような運転をしながらそう言った。

「そうですか……拘ってますね……」

 どうやらこの三人の女性は何かに『拘る』ところがあるらしい。誠はカウラの運転とこの車への島田の真っ直ぐな思いに感心しながら黙って車に揺られていた。
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