32 / 60
新しい職場、そこは『娯楽の殿堂』
誠のトラウマ
しおりを挟む
誠はじっとかなめを見つめていた。かなめは見つめている視線を外して、画面にうつされたスコアーブックに視線を移した。
「趣味は大事にしろ。お前が野球にトラウマ持ってるのは知ってる。夏の東都予選の3回戦がお前のせいで没収試合で城東高校が、野球名門校に負けた。その事実は消せねえ」
そう言ってかなめはキーボードを叩くと、画面が暗転する。
「知ってるんですね……かなめさん」
誠はそう言いながら唇を噛みしめてかなめをにらみつけた。
「東和共和国で野球やってる奴はみんな知ってるよ。あまりにショボい守りにブチ切れて大暴れして試合が中止、そして審判の判断で没収試合でお前のチームは負けた。1回戦、2回線と完ぺきな投球をしてきたエースで四番が名門校の名前にビビッて固くなってミスを繰り返してブチ切れる。アタシから言わせりゃ当然の話だ」
そう言いながら、かなめは首の後ろに刺さっていたコードを引き抜いて引き出しに戻す。
「自分にイライラしていたんです。正直、もう肩が限界でした。その後、肩の張りが気になって鍼灸院に行ったんですが、やはりもう限界だったそうです」
味方のミス、次第に遅くなる自分の売りのストレート。そして、圧倒的な技術と戦略をもって挑んだ強豪に感じた圧倒的威圧感。誠の気分はあの試合が行われたあの都立球場のマウンドの上にいた。
「神前。貴様は勘違いしているな」
突然、画面の向こう側から声が聞こえた。カウラの声だった。
「私達だって常に勝ちたい。負けるつもりで試合をするのは八百長と言って反則だ。だが、負けても試合をした事実は消えない。そして、それが人生の糧になることもある。だから、一生懸命試合に臨む。それが真面目に遊ぶという事だ。明日、練習がある。……西園寺!」
画面の後ろに見えるカウラの表情は、バイトをしている時とはまるで違う真剣なものだった。
「ジャージを用意するんだろ?もう手配済みだ。という訳で、神前。とりあえず明日の終業の後の時間の予定はすべてキャンセルしろ。上官命令だ。本当の遊びってのを教えてやる」
そう言ってかなめは不敵な笑みを浮かべて誠を見上げた。
「趣味は大事にしろ。お前が野球にトラウマ持ってるのは知ってる。夏の東都予選の3回戦がお前のせいで没収試合で城東高校が、野球名門校に負けた。その事実は消せねえ」
そう言ってかなめはキーボードを叩くと、画面が暗転する。
「知ってるんですね……かなめさん」
誠はそう言いながら唇を噛みしめてかなめをにらみつけた。
「東和共和国で野球やってる奴はみんな知ってるよ。あまりにショボい守りにブチ切れて大暴れして試合が中止、そして審判の判断で没収試合でお前のチームは負けた。1回戦、2回線と完ぺきな投球をしてきたエースで四番が名門校の名前にビビッて固くなってミスを繰り返してブチ切れる。アタシから言わせりゃ当然の話だ」
そう言いながら、かなめは首の後ろに刺さっていたコードを引き抜いて引き出しに戻す。
「自分にイライラしていたんです。正直、もう肩が限界でした。その後、肩の張りが気になって鍼灸院に行ったんですが、やはりもう限界だったそうです」
味方のミス、次第に遅くなる自分の売りのストレート。そして、圧倒的な技術と戦略をもって挑んだ強豪に感じた圧倒的威圧感。誠の気分はあの試合が行われたあの都立球場のマウンドの上にいた。
「神前。貴様は勘違いしているな」
突然、画面の向こう側から声が聞こえた。カウラの声だった。
「私達だって常に勝ちたい。負けるつもりで試合をするのは八百長と言って反則だ。だが、負けても試合をした事実は消えない。そして、それが人生の糧になることもある。だから、一生懸命試合に臨む。それが真面目に遊ぶという事だ。明日、練習がある。……西園寺!」
画面の後ろに見えるカウラの表情は、バイトをしている時とはまるで違う真剣なものだった。
「ジャージを用意するんだろ?もう手配済みだ。という訳で、神前。とりあえず明日の終業の後の時間の予定はすべてキャンセルしろ。上官命令だ。本当の遊びってのを教えてやる」
そう言ってかなめは不敵な笑みを浮かべて誠を見上げた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
年下の地球人に脅されています
KUMANOMORI(くまのもり)
SF
鵲盧杞(かささぎ ろき)は中学生の息子を育てるシングルマザーの宇宙人だ。
盧杞は、息子の玄有(けんゆう)を普通の地球人として育てなければいけないと思っている。
ある日、盧杞は後輩の社員・谷牧奨馬から、見覚えのないセクハラを訴えられる。
セクハラの件を不問にするかわりに、「自分と付き合って欲しい」という谷牧だったが、盧杞は元夫以外の地球人に興味がない。
さらに、盧杞は旅立ちの時期が近づいていて・・・
シュール系宇宙人ノベル。
桃華の戦機~トウカノセンキ~
武無由乃
SF
西暦2090年。日本は深海エネルギー結晶『エネラス』の発見によって資源大国となっていた。
しかしそれは、多くの争いを日本にもたらし。それに対抗する手段を日本に求めたのである。
そして、一人の少女の戦いが始まる。
作品解説:
巨大人型兵器×サイバーパンク×超能力な世界観(+美少女成分)を舞台にしたミリタリーファンタジー。
作者独自の作品群『rev.シリーズ』のWeb公開作品の第一弾。
一応SFジャンルにしていますが、正確には近未来ファンタジー作品です。SF科学考証とかあったもんじゃありません。
作者は、それほど世界情勢とかにも詳しくないので、いろいろ歪んだ世界観になっているかもしれませんのでご注意ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/sf.png?id=74527b25be1223de4b35)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる