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新しい職場、そこは『娯楽の殿堂』
趣味に突っ走る姉ちゃん達(内、1名は幼女)
しおりを挟む ひよこの医務室っぽい部屋を出ると、誠はとりあえずいるところが無くなって、女性パイロットが三人住み着いている例の部屋に向かった。
扉を開けると三人は椅子に腰かけていた。かなめとカウラの向かい合わせの席につけられたお誕生日席のような机。その上に誠の荷物があることから、どうやらそこが誠の席らしい。
「失礼しまーす」
そう言った時かなめがニヤニヤしながら誠を見つめていた。
席に座ってとりあえず、小隊長のカウラを見る。初めてあった時と同じように彼女はキーボードを叩いて入力作業を続けていた。
「おい、アパ。『アパム1号』」
相変わらず上機嫌でかなめが誠に声を掛けてくる。それは面白がった島田が誠の綽名『アパム1号』を全員の携帯端末にばらまいたことを教えてくれた。
「この緑の髪の姉ちゃん。何をしていると思う?」
かなめを見ると、まず、脇の下に実銃の刺さった革のホルスターが目に付く。それに少々おびえながらカウラに目をやった。
カウラは聞こえない程度の音量で何かぶつぶつつぶやきながら一生懸命キーボードを叩いている。
「なんですかね、プログラムの入力とか」
とりあえず言ってみようと誠はそう言ってみた。
「まあ、色々やってるが大体そんなもんだ。いい金になるんだと、そのバイト」
メカ姉ちゃんまたとんでもないことを口走った。
「今、バイトとか言いませんでした。聞き違いでなければ『バイト』って聞こえましたけど」
誠は口元を引きつらせながら、素手で銃の構えをして遊んでいるかなめにそう言った。
「だってバイトだもんな。本業ではないどころか、仕事と全く関係ない仕事。普通それをバイトって言わないか?」
あまりに当たり前に言うかなめの言葉で誠の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいになった。
「良いんですか?仕事中でしょ?」
そう言いながらカウラに目をやった。急にカウラが誠に顔を向ける。
「少々金のかかる趣味があってな。仕事中は何をしてもかまわないのがうちのルールだ。そういう訳でバイトをしている」
カウラは再び画面に顔を向けて入力を再開した。
「何をしてもいいんですか……」
そう呟きながら誠は机の上の置かれた大きめのバッグを床に置いた。
「だってうちの模範にならなきゃならない、中佐殿があれだぞ」
かなめは銃をホルスターから抜いて、スライドを弾いたり戻したり、時々引き金を引いたりして時間をつぶしていた。
「中佐が……ってここからじゃ見えませんよ」
誠は伸びをしたり左右に体をひねったりするが、じっと一点を見つめて固まっているランが、何を見ているのか分からなかった。
「考えろよバーカ。お前の身長なら立てば見える。少しは頭を使え!」
銃を構えてポーズを決めながらかなめはそう言った。誠は渋々立ち上がった。
ランは四角い板に並んだ木片に向かって、ぶつぶつ言いながら考えを巡らせていた。
まさかと思って席を立った誠は、ランの席の間近にまで近づいた。そして、驚くべき事実をそこに発見した。
「本当に将棋、お好きなんですね」
そこには当たり前のように将棋盤が置いてあった。
「することねーから頭の体操でやってんだ。アタシがこの部屋を預かっている人間だ。アタシの決定がこの部屋の法だ。明日からは好きなことやりな。上の連中が文句言うようなら、仕事をよこさないオメー等がわりーって逆に抗議してやる」
そう言うと一つの駒を手に取り、敵陣に銀を打ち込んだ。
「要するに暇なんですね?」
誠はあーだこーだとぼそぼそ独り言を言っているランを見下ろしながらそう言った。
「見ようによってはそう見えるかもな。お前も趣味があったらやってていーぜ。アタシが許す」
要するにこの人達は暇人。それが誠の導き出した結論だった。
扉を開けると三人は椅子に腰かけていた。かなめとカウラの向かい合わせの席につけられたお誕生日席のような机。その上に誠の荷物があることから、どうやらそこが誠の席らしい。
「失礼しまーす」
そう言った時かなめがニヤニヤしながら誠を見つめていた。
席に座ってとりあえず、小隊長のカウラを見る。初めてあった時と同じように彼女はキーボードを叩いて入力作業を続けていた。
「おい、アパ。『アパム1号』」
相変わらず上機嫌でかなめが誠に声を掛けてくる。それは面白がった島田が誠の綽名『アパム1号』を全員の携帯端末にばらまいたことを教えてくれた。
「この緑の髪の姉ちゃん。何をしていると思う?」
かなめを見ると、まず、脇の下に実銃の刺さった革のホルスターが目に付く。それに少々おびえながらカウラに目をやった。
カウラは聞こえない程度の音量で何かぶつぶつつぶやきながら一生懸命キーボードを叩いている。
「なんですかね、プログラムの入力とか」
とりあえず言ってみようと誠はそう言ってみた。
「まあ、色々やってるが大体そんなもんだ。いい金になるんだと、そのバイト」
メカ姉ちゃんまたとんでもないことを口走った。
「今、バイトとか言いませんでした。聞き違いでなければ『バイト』って聞こえましたけど」
誠は口元を引きつらせながら、素手で銃の構えをして遊んでいるかなめにそう言った。
「だってバイトだもんな。本業ではないどころか、仕事と全く関係ない仕事。普通それをバイトって言わないか?」
あまりに当たり前に言うかなめの言葉で誠の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいになった。
「良いんですか?仕事中でしょ?」
そう言いながらカウラに目をやった。急にカウラが誠に顔を向ける。
「少々金のかかる趣味があってな。仕事中は何をしてもかまわないのがうちのルールだ。そういう訳でバイトをしている」
カウラは再び画面に顔を向けて入力を再開した。
「何をしてもいいんですか……」
そう呟きながら誠は机の上の置かれた大きめのバッグを床に置いた。
「だってうちの模範にならなきゃならない、中佐殿があれだぞ」
かなめは銃をホルスターから抜いて、スライドを弾いたり戻したり、時々引き金を引いたりして時間をつぶしていた。
「中佐が……ってここからじゃ見えませんよ」
誠は伸びをしたり左右に体をひねったりするが、じっと一点を見つめて固まっているランが、何を見ているのか分からなかった。
「考えろよバーカ。お前の身長なら立てば見える。少しは頭を使え!」
銃を構えてポーズを決めながらかなめはそう言った。誠は渋々立ち上がった。
ランは四角い板に並んだ木片に向かって、ぶつぶつ言いながら考えを巡らせていた。
まさかと思って席を立った誠は、ランの席の間近にまで近づいた。そして、驚くべき事実をそこに発見した。
「本当に将棋、お好きなんですね」
そこには当たり前のように将棋盤が置いてあった。
「することねーから頭の体操でやってんだ。アタシがこの部屋を預かっている人間だ。アタシの決定がこの部屋の法だ。明日からは好きなことやりな。上の連中が文句言うようなら、仕事をよこさないオメー等がわりーって逆に抗議してやる」
そう言うと一つの駒を手に取り、敵陣に銀を打ち込んだ。
「要するに暇なんですね?」
誠はあーだこーだとぼそぼそ独り言を言っているランを見下ろしながらそう言った。
「見ようによってはそう見えるかもな。お前も趣味があったらやってていーぜ。アタシが許す」
要するにこの人達は暇人。それが誠の導き出した結論だった。
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