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プライドゼロの策士の計略
ある『才能』を見込まれて人生をめちゃくちゃにされた青年の話
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嵯峨は慣れた手つきでタバコに火をつけた。使ったのは何処にでも売っている使い捨てライター。一服、静かに吸うと、そのまま隊長室のガラスの灰皿に火のついたタバコを置いた。
「以上だ、俺の言いたいことは。何か質問は?」
嵯峨はそう言って再びタバコを手に取った。
「じゃあ、僕の『才能』って何ですか?中佐も、嵯峨さん……」
「嵯峨さんなんて上品に呼ぶ必要ないよ。隊長でいい。うちじゃあ、隊長と言えば俺のことになってる。まあ、綽名みたいなもんだ」
そう言って嵯峨はタバコをふかし、灰を灰皿に落として再び口にくわえた。
「ここのみんなが待ち望んでいた『才能』ってなんですか?車の中でその『才能』があると、テレビに出て有名人になれるって言ってましたけど本当ですか」
ここは素直に疑問を解決しておこうと、誠は思ったことを正直に口にした。
「そうだな、民放のゴールデンの司会とかはその『才能』を極めた人間だけがなれるポジションだ」
嵯峨が突拍子もないことを口走った。助けを求めてランに目を向けると、ランもまた当たり前だろと言うようにうなづいている。
四文字のカタカナが誠の脳裏に浮かんだ。まさかそんなことのために人生台無しにされたとしたら、誠は生きていることに絶望してガス管を咥えたりしかねない。
「言いたくないですよ。でも言わなきゃならないですよね。それってカタカナ四文字だったりしません?」
隣ですでにランが可愛らしい手の指を折っている。
「確かに四文字だな。頭に『ツ』が付く、三文字目も同じ『ツ』だが、ちっちゃいのだ」
この言葉で誠は完全に切れた。
すぐさま隣にいた。幼女系毒舌将棋マニアのランの襟首を掴んで締め上げた。
「テメー等!ツッコミが欲しくて、人の人生台無しにしたのか!やって良いことと悪いことがあるんだ!なんとか言え!このメスガキ」
誠は唾を飛ばして、力の限りぎりぎりと幼女の首を締めあげようとする。涼しい顔をしているランは軽く誠の左手を握った。
「痛い!」
その想像を絶する握力に誠はランを締め上げる手を離した。ランは左手の握る力をどんどん上げていく。
「言ったろ?騙されたオメーが悪いんだ。間抜けがいっちょ前のセリフを吐くなんて、身の程知らずもはなはだしーや。選べる道を用意しておいただけましだろ」
左手を強烈な握力で握りながらランはそう言った。そこには悪を極めた悪党ならこういう笑みを浮かべるだろうというような、悪い笑みが浮かんでいた。でもどう見ても幼女だった。
「弱いものいじめはそのくらいにして。次のミッションがあるよ、神前には」
タバコを灰皿に押し付けながら嵯峨はそう言った。
「……痛い……ミッションですか?」
嵯峨の言葉が発せられると同時にランの握力から解放された誠は、嵯峨の突拍子もない言葉を復唱していた。
「そう、ミッション。この下のフロアーに36人のねーちゃんが生息している。そこの部長がお前さんのこと気に入ってね。早く会わせろって言うんだわ。ついでに言っとく。全員見てくれはいいんじゃないかな、中身がアレなのはお約束だけど」
駄目人間嵯峨の言う事だが、とりあえず美人に囲まれて話ができるという事らしい。
「いい話ですね。行ってきます」
そう言って誠は隊長室のドアに手を掛けた。
「言っとくわ。うちは生活保障のしっかりとした『バイト』なんだわ。一部、勘違いしてフリーターしてる奴もいるけどね、うちには」
突然の嵯峨の一言に誠は驚いて振り向く。
「バイト……のつもりじゃないですけど。マジ就職したいんですけど」
そう言ってにらむ誠とに嵯峨は相変わらずいい加減な笑顔を浮かべ、何もない空間を見つめながら続ける。
「俺の『ライフワーク』を手伝ってくれる『バイト』なんだよ、ここ。俺の履歴書に空欄が多いのは『バイト』ばっかしてたプー太郎だから書くに値しないから書かないの、お前はスナック感覚で『バイト』やるだけ。そんだけ」
そう言うとタバコに火をつけてようやく隊長室でドアノブに手をかけて自分を見つめる誠に嵯峨は目を向けた。
「『ライフワーク』ってなんです?そして業務内容は……」
静かにそして誠はとりあえず業務内容によっては『バイト』でもいいと思い始めていた。
「『ライフワーク』は簡単だよ。悪人に『人間だろ?とりあえずやり直さない?』って聞いてみるんだ。生きなおすなら、俺達の同志に成れる。そのままでいたいなら、望んだ死を与えてやる。必要なら殺してやる。そんな『人殺し』もしちゃうかもしれないスナック感覚の『バイト』それがうち。どう、この『バイト』やる?『人殺し』をするとボーナス出るよ、所属の軍や警察から。生活費もそっちから出る、いいだろ?そんなバイト、他にねえよな」
そこまで言って嵯峨はにっこりと笑った。
さらに笑顔の嵯峨は続けた。
「まあ、お前の部屋の先輩バイト。連中は中身はアレだからな」
ランはそう言って誠を見送る。
「そうだよ、アレなんだよな……うちで一番アレ」
嵯峨は机に頬杖をついてつぶやく。
『アレ?アレって何?』
心の中でそう思いながら誠は隊長室を後にした。
「以上だ、俺の言いたいことは。何か質問は?」
嵯峨はそう言って再びタバコを手に取った。
「じゃあ、僕の『才能』って何ですか?中佐も、嵯峨さん……」
「嵯峨さんなんて上品に呼ぶ必要ないよ。隊長でいい。うちじゃあ、隊長と言えば俺のことになってる。まあ、綽名みたいなもんだ」
そう言って嵯峨はタバコをふかし、灰を灰皿に落として再び口にくわえた。
「ここのみんなが待ち望んでいた『才能』ってなんですか?車の中でその『才能』があると、テレビに出て有名人になれるって言ってましたけど本当ですか」
ここは素直に疑問を解決しておこうと、誠は思ったことを正直に口にした。
「そうだな、民放のゴールデンの司会とかはその『才能』を極めた人間だけがなれるポジションだ」
嵯峨が突拍子もないことを口走った。助けを求めてランに目を向けると、ランもまた当たり前だろと言うようにうなづいている。
四文字のカタカナが誠の脳裏に浮かんだ。まさかそんなことのために人生台無しにされたとしたら、誠は生きていることに絶望してガス管を咥えたりしかねない。
「言いたくないですよ。でも言わなきゃならないですよね。それってカタカナ四文字だったりしません?」
隣ですでにランが可愛らしい手の指を折っている。
「確かに四文字だな。頭に『ツ』が付く、三文字目も同じ『ツ』だが、ちっちゃいのだ」
この言葉で誠は完全に切れた。
すぐさま隣にいた。幼女系毒舌将棋マニアのランの襟首を掴んで締め上げた。
「テメー等!ツッコミが欲しくて、人の人生台無しにしたのか!やって良いことと悪いことがあるんだ!なんとか言え!このメスガキ」
誠は唾を飛ばして、力の限りぎりぎりと幼女の首を締めあげようとする。涼しい顔をしているランは軽く誠の左手を握った。
「痛い!」
その想像を絶する握力に誠はランを締め上げる手を離した。ランは左手の握る力をどんどん上げていく。
「言ったろ?騙されたオメーが悪いんだ。間抜けがいっちょ前のセリフを吐くなんて、身の程知らずもはなはだしーや。選べる道を用意しておいただけましだろ」
左手を強烈な握力で握りながらランはそう言った。そこには悪を極めた悪党ならこういう笑みを浮かべるだろうというような、悪い笑みが浮かんでいた。でもどう見ても幼女だった。
「弱いものいじめはそのくらいにして。次のミッションがあるよ、神前には」
タバコを灰皿に押し付けながら嵯峨はそう言った。
「……痛い……ミッションですか?」
嵯峨の言葉が発せられると同時にランの握力から解放された誠は、嵯峨の突拍子もない言葉を復唱していた。
「そう、ミッション。この下のフロアーに36人のねーちゃんが生息している。そこの部長がお前さんのこと気に入ってね。早く会わせろって言うんだわ。ついでに言っとく。全員見てくれはいいんじゃないかな、中身がアレなのはお約束だけど」
駄目人間嵯峨の言う事だが、とりあえず美人に囲まれて話ができるという事らしい。
「いい話ですね。行ってきます」
そう言って誠は隊長室のドアに手を掛けた。
「言っとくわ。うちは生活保障のしっかりとした『バイト』なんだわ。一部、勘違いしてフリーターしてる奴もいるけどね、うちには」
突然の嵯峨の一言に誠は驚いて振り向く。
「バイト……のつもりじゃないですけど。マジ就職したいんですけど」
そう言ってにらむ誠とに嵯峨は相変わらずいい加減な笑顔を浮かべ、何もない空間を見つめながら続ける。
「俺の『ライフワーク』を手伝ってくれる『バイト』なんだよ、ここ。俺の履歴書に空欄が多いのは『バイト』ばっかしてたプー太郎だから書くに値しないから書かないの、お前はスナック感覚で『バイト』やるだけ。そんだけ」
そう言うとタバコに火をつけてようやく隊長室でドアノブに手をかけて自分を見つめる誠に嵯峨は目を向けた。
「『ライフワーク』ってなんです?そして業務内容は……」
静かにそして誠はとりあえず業務内容によっては『バイト』でもいいと思い始めていた。
「『ライフワーク』は簡単だよ。悪人に『人間だろ?とりあえずやり直さない?』って聞いてみるんだ。生きなおすなら、俺達の同志に成れる。そのままでいたいなら、望んだ死を与えてやる。必要なら殺してやる。そんな『人殺し』もしちゃうかもしれないスナック感覚の『バイト』それがうち。どう、この『バイト』やる?『人殺し』をするとボーナス出るよ、所属の軍や警察から。生活費もそっちから出る、いいだろ?そんなバイト、他にねえよな」
そこまで言って嵯峨はにっこりと笑った。
さらに笑顔の嵯峨は続けた。
「まあ、お前の部屋の先輩バイト。連中は中身はアレだからな」
ランはそう言って誠を見送る。
「そうだよ、アレなんだよな……うちで一番アレ」
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『アレ?アレって何?』
心の中でそう思いながら誠は隊長室を後にした。
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