特殊装甲隊 ダグフェロン 第一部 蘇る火付盗賊改方 (ひつけとうぞくあらためかた) とは……殺人許可書を持つ「特殊な部隊」

橋本 直

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「火盗」屯所のパイロット達

招かれたのは女パイロット達の城

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 可愛らしい雰囲気のランは、迷わず階段を昇りきった。その背中に続いて階段を昇りきった誠が見たのは、ごく普通の学校のような廊下が続いている様を見ることになった。

「こっちだ!こっち来い!」

 ランは扉の前で待っていた。そしてそのまま小さな手に入れていたハンカチを、タイトスカートのポケットに入れているのが見える。

「普通の扉ですね」

 誠は正直な感想を言った。誠がランを見下ろすと、少し憐れむような視線がそこにあった。

「覚悟しろよ。結構、ヤベー二人だから」

 そう言ってランはニヤリと笑う。

「そうですか……ヤバいんですか……」

 誠の冷や汗をかきながらの言葉を無視して、ランは扉を開けた。

 ひらかれた扉の向こう、室内に入った誠が見たのは不思議な光景だった。

 すべての机が手前の扉に寄っていた。空いている空間が広すぎた。奥には大きな机があり、ランは迷うことなくそこに向かった。確かにランはこの部屋の主だった。そのことは二人の女性が挨拶こそしないものの、それなりにランに気遣っているような雰囲気から察しられた。

 二つの机がランの大きな机の上に並び、そこには大きな大画面の薄型モニターが並んでいた。そしてそれぞれに女性が座っていた。

 その室内中央側に座っていたエメラルドグリーンのポニーテールの女性士官が一度、誠に顔を向けた。

 誠はすぐに身を整えて敬礼した。そして、自己紹介を始めようとした時、彼女はすぐにモニターの画面に顔を向けてキーボードを叩きながら作業を再開した。

「あのー」

 声を掛けようと誠が歩み寄るが、ポニーテールの女性士官は誠の存在を無視していた。

 そして、彼女はこう言った。 

「また、消えるんだろ。挨拶は必要ないな」

 キーボードを叩く音が沈黙した室内に響く。

 そして、別の方から声が聞こえてきた。

「早く扉を閉めろよな。廊下は空調の設定温度が高いんだ」

 ポニーテールの士官の正面の黒い髪のおかっぱの士官が何かをしながら、誠に声を掛けてきた。

 誠はとりあえず何をしているのか確認しようとおかっぱの士官に近づいた。

 その机には分解された銃があった。よく見ると左わきの革製品は、その銃にあつらえたホルスターなのだろう。

「商売道具だ。まともに動くようにして何が悪い」

 そう言いながらおかっぱの士官は銃を慣れた手つきでくみ上げていく。

「自分の道具は自分で調整する主義だそうだ」

 ポニーテールの士官がキーボードを叩きながらそう言った。

「かなめ……西園寺かなめ。階級は大尉だ。お前より上官だ。敬礼はどうした」

 銃のスライドを上手にセットし、完成した銃をホルスターに差し込む。誠はそんな彼女が作業をしている間に彼女の半そでから見える腕に筋が入っているのに気付いた。

 かなめは立ち上がって誠を見つめた。

「気づいたみたいだな。サイボーグだよ、アタシは。餓鬼の頃、テロに巻き込まれて脳以外駄目になってね。それ以降こんな体になっちまった。そんだけの話だ」

 かなめはそう言うと静かに誠に向けて歩き始めた。その殺気から誠は思わずびくりと身をかわそうとしt。

「何もしねえよ。それとこの緑の変なのはカウラ、カウラ・ベルガー。階級は大尉。小隊長だと。『アサルト・モジュール』乗りは、ちっこいのとアタシ等で合計三人。どうせ、お前も出てくんだろ?じゃあ、早い方がいい」

 そう言うとかなめは誠を避けて扉へと向かった。

「西園寺大尉!」

 かえでの背中を追った誠に、かなめはドアに伸ばした手を止めた。

「タバコだよ。二十歳過ぎてんだからいいだろ」

 それだけ言うとかなめは出て行った。

 誠はただ茫然として、立ち尽くすだけだった。

 ただ、不思議なことに気分が悪くはならなかった。この感覚は自分でも説明できないが、なぜか彼女達に暖かいものを感じていた。そんな不思議な気分に誠はとらわれていた。
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