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下士官寮
第94話 引っ越し荷物
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脳みそがゆすられるような振動を感じて誠は目を覚ました。
「ようやく起きやがった。この馬鹿」
目の前にはかなめの顔がある。誠は飛び上がって周りを見回した。プラモと漫画、それにアニメのポスター。自分の部屋だった。頭は割れるように痛い。そこで自分の部屋にかなめがいるという事実を再確認して誠は飛び上がるようにしてはね起きた。
「西園寺さん!なんで僕の部屋に!」
突然の誠の反応にかなめは得意げににやりと笑った。
「もう十時過ぎだぞ。荷物着いたから早く着替えろ」
そう言うとかなめは出て行った。確かに時計を見れば十時を過ぎていた。のろのろと誠は起き上がる。
かなめ、アメリア、カウラの引越し。かなめの荷物がほとんど無いのは良いとして、アメリアの荷物は噂に聞く限り相当なモノらしい。誠は島田の説教が嫌で焼酎を飲みすぎて意識を飛ばしてから、どうやって自分の部屋でジャージに着替えて眠ったのかまったく覚えていなかったが、良くあることなのですぐ考えるのをやめた。
B級特撮映画の仮面戦隊トウリアンのロゴがプリントされたTシャツを着て、ジーパンに足を通す。二日酔いの頭が未だに完全に動いてくれてはいないようで、片足を上げたまま転がる。
「おい!」
今度入ってきたのは島田だった。
「何遊んでんだ?早く手伝え!」
それだけ言うとまた部屋の扉を閉める。とりあえず誠はベルトを締めて、そのまま部屋を出た。ムッとする熱気が誠を襲う。昨日よりも明らかに暑い。誠はそのまま廊下から玄関に向かって歩く。
「西!とりあえず下持て!」
「島田班長、無茶ですよ……って神前曹長!手伝ってください!」
大きな本棚をもてあましている西が声をかけてくる。誠は仕方なくそちらの方に手を貸した。
「西、もう少し端を持て。島田先輩、大丈夫ですか?」
「無駄に重いなあ。誰かこっちも一人くらい……」
表からやってきたサラが力を貸す。
「じゃあ行きますよ!」
そう言うと島田の誘導で本棚は廊下の角に沿って曲がりながら進む。
「とりあえずここで」
アメリアの部屋の前でとりあえず四人は一休みした。
「はいはい!ありがとうね。それじゃあ本棚は私達がやるから中身の方お願いね」
部屋から現れたアメリアとパーラが横に置かれた本棚に手をやる。
「じゃあ行くぞ」
島田の一声で誠と西はその後に続いた。サラはパーラに引っ張られてアメリアの部屋に消えた。玄関まで下りた彼等の前にカウラが大きなダンボールを抱えている姿が目に入る。
「カウラさん持ちますよ」
そう言って誠はカウラに走り寄る。
「良いのか?任せて」
「大丈夫です!これくらい、良いトレーニングですよ」
そう言って誠は笑う。
「そうか、カウラのは持つんだな」
誠は恐る恐るカウラの後ろを見た。同じようにダンボール箱を抱えたかなめがいた。
「いいぜ、どうせアタシは機械人間だからな。テメエ等生身の奴とは、勝手が違うだろうしな」
そう言いながら立ち尽くす誠とカウラの脇を抜けてかなめは寮の廊下に消えていく。
「あの……」
そう言って後を追おうとした誠の肩をカウラがつかんだ。
「神前……」
カウラの手にいつもと違う力がこもっているのを感じて誠は振り返った。
「ようやく起きやがった。この馬鹿」
目の前にはかなめの顔がある。誠は飛び上がって周りを見回した。プラモと漫画、それにアニメのポスター。自分の部屋だった。頭は割れるように痛い。そこで自分の部屋にかなめがいるという事実を再確認して誠は飛び上がるようにしてはね起きた。
「西園寺さん!なんで僕の部屋に!」
突然の誠の反応にかなめは得意げににやりと笑った。
「もう十時過ぎだぞ。荷物着いたから早く着替えろ」
そう言うとかなめは出て行った。確かに時計を見れば十時を過ぎていた。のろのろと誠は起き上がる。
かなめ、アメリア、カウラの引越し。かなめの荷物がほとんど無いのは良いとして、アメリアの荷物は噂に聞く限り相当なモノらしい。誠は島田の説教が嫌で焼酎を飲みすぎて意識を飛ばしてから、どうやって自分の部屋でジャージに着替えて眠ったのかまったく覚えていなかったが、良くあることなのですぐ考えるのをやめた。
B級特撮映画の仮面戦隊トウリアンのロゴがプリントされたTシャツを着て、ジーパンに足を通す。二日酔いの頭が未だに完全に動いてくれてはいないようで、片足を上げたまま転がる。
「おい!」
今度入ってきたのは島田だった。
「何遊んでんだ?早く手伝え!」
それだけ言うとまた部屋の扉を閉める。とりあえず誠はベルトを締めて、そのまま部屋を出た。ムッとする熱気が誠を襲う。昨日よりも明らかに暑い。誠はそのまま廊下から玄関に向かって歩く。
「西!とりあえず下持て!」
「島田班長、無茶ですよ……って神前曹長!手伝ってください!」
大きな本棚をもてあましている西が声をかけてくる。誠は仕方なくそちらの方に手を貸した。
「西、もう少し端を持て。島田先輩、大丈夫ですか?」
「無駄に重いなあ。誰かこっちも一人くらい……」
表からやってきたサラが力を貸す。
「じゃあ行きますよ!」
そう言うと島田の誘導で本棚は廊下の角に沿って曲がりながら進む。
「とりあえずここで」
アメリアの部屋の前でとりあえず四人は一休みした。
「はいはい!ありがとうね。それじゃあ本棚は私達がやるから中身の方お願いね」
部屋から現れたアメリアとパーラが横に置かれた本棚に手をやる。
「じゃあ行くぞ」
島田の一声で誠と西はその後に続いた。サラはパーラに引っ張られてアメリアの部屋に消えた。玄関まで下りた彼等の前にカウラが大きなダンボールを抱えている姿が目に入る。
「カウラさん持ちますよ」
そう言って誠はカウラに走り寄る。
「良いのか?任せて」
「大丈夫です!これくらい、良いトレーニングですよ」
そう言って誠は笑う。
「そうか、カウラのは持つんだな」
誠は恐る恐るカウラの後ろを見た。同じようにダンボール箱を抱えたかなめがいた。
「いいぜ、どうせアタシは機械人間だからな。テメエ等生身の奴とは、勝手が違うだろうしな」
そう言いながら立ち尽くす誠とカウラの脇を抜けてかなめは寮の廊下に消えていく。
「あの……」
そう言って後を追おうとした誠の肩をカウラがつかんだ。
「神前……」
カウラの手にいつもと違う力がこもっているのを感じて誠は振り返った。
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