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『タフネス』と『銃』

第98話 グロック

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「撃ってますね……」

 イヤレシーバーをしても銃声は断続的に続いている。隊員達の持つ銃のほとんどが東和宇宙軍の採用銃とは違う型のものばかりだった。

「じゃあ、これ」

 カウラはそう言って誠に拳銃を手渡した。

「見たことがあるような……無いような……なんです?この銃。明らかにグリップの下に変なのが付いているんですけど……」

 誠が受け取った銃は角ばった印象のスライドと明らかに後付けのグリップの下のプラスチック部品が目に付く黒い銃だった。

「『グロック』……ディスカウントストアーで大特価とかで売ってるそうだ、一部の国では」

 カウラの言葉に誠はこけそうになった。

「『グロック』……なんか聞いたことがありますけど……地球の銃ですか?」

 手渡された小ぶりの印象の銃を誠は握りしめた。そして、そのグリップの下の延長部分が誠の大きな手に合わせて延長されたものだと感じてかなめの満足そうな顔を見た。

「うちは20世紀末前後の銃を使うんだわ。その時期にもう銃の可能性は出尽くしてんの。もうそれから500年経つわけだけど、そっから後の銃はみんな『小改良』程度だな。素材を変えてみたり、口径を変えてみたり、いろいろあるけど結局性能的には大差ないんだわ。せいぜい製造工程が進化したんでコストが下がったのが時代が下ったおかげなんだけど……そんなら市場に溢れてる中古の銃を買った方が安いからな」

 そう言って誠が軽く握っている銃にかなめが手をやる。

「グロッグの利点は『馬鹿でも撃てる』し『左利きでも撃ちやすい』ってところかな?手動の安全装置がトリガーについてるから、普通は馬鹿でも撃てるし、スライドストップも左手用のがついてるから右利き左利き関係なく撃てる。まあ、撃ってみな」

 かなめはそう言うと射場の向こう側に目をやった。

 25メートルくらい先に鉄板の的が置いてあった。かなりくたびれていて的を描いていたペンキが剥げて銀色の地肌がむき出しになっている。

「あのー、あれじゃあ当たったかどうかわからないと思うんですけど……」

 それとなく尋ねる誠を見てかなめ達三人は大きくため息をついた。

「あのなあ。オメエに精密射撃なんて期待してねえの。それにだ。拳銃で25メートル確実に当てれば立派なもんだよ」

 あきらめたようなかなめの言葉を聞いてカチンときた誠は仕方なく銃口を的に向けた。
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