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『タフネス』と『銃』

第95話 体力勝負の社会と言うもの

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「そんな体力馬鹿のオメーにも実はいい進路があるんだ」

 ランはいい顔をして息を切らせて自分を見下ろしてくる誠をにらみつけた。

「逃げられるんですか?『作業員』や『重機オペレーター』以外の道があるんですね!大学卒にふさわしい職があるんですね!」

 誠はなんとかこの『特殊な部隊』の生活から逃げ出せる答えがランから出ると思ってそう言った。

 すでにアメリア達『人権が認められている先輩』は誠の視界の中には残っていなかった。

「そうだ、有名大卒にふさわしい仕事。『根性』と『気配り』を武器とする『体力がすべて』のいい仕事がある」

 ランは自信をもってそう言った。

「大卒向けなんですよね、でもなんで『根性』とか『気配り』とか『体力がすべて』とか出てくるんです?それ学歴と関係ないですよね。体育の先生ですか?僕、教員免許もってないですよ」

 戸惑う、目が点になる。そんな顔をしている自分を想像しながら、誠はランの力強い言葉に愛の手を入れた。

「それは『大手ゼネコン営業マン』という仕事だ。……『根性』で嫌がる新規顧客を訪問し、『気配り』で顧客に付き合って酒を飲んだりゴルフをしたりして心をつかみ、最後は『体力』にものを言わせて競合会社に入札で勝利する。これが『大手ゼネコン営業マン』の仕事だ」

 誠は驚愕した。

 誠の母校の工学部建築学科の同窓生達は、明らかに就活で『ゼネコン』を避けていた。

 その理由が今、ランの口から明らかになった。

「それじゃあ……体育学部の学生でいいじゃないですか。僕、理工学部です」

 なんとかランの『間違った進路指導』に反抗しようと誠は彼女に逆らってみた。

「そうだ、『東都証券所一部上場企業』では『体育学部』の学生を非常に重んじる。多少勉強ができる『モヤシ』には書類仕事しかねーんだ。真の戦い『営業マン』の世界は『根性』、『気配り』、そして『体力』。この三つがあればいーんだ」

 そう言って『偉大なる中佐殿』はグッと右手を握りしめて誠に差し伸べた。
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