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ある若者の運命と女と酒となじみの焼き鳥屋

第90話 『特殊な部隊』では希少な誠と言う存在

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「家族とは……いろいろあるんだな」

 カウラは豚串を食べた後、そうつぶやいた。

「まあな、それぞれ色々あるんだわ。オメエ等いいな、そんなめんどくさそうなのと無縁で。親父やお袋なんて家借りるときの保証人くらいの役にしか立ってねえぞ、うちなんか。後は被害ばっか」

 かなめは相変わらず悠然と葉巻をくゆらせながらそう言った。

「でも、一応生んでくれた恩とか、育ててくれたこととか」

「アタシが頼んだわけじゃねえよ。特にこんな体になってからはそうだ。それにアタシは実家の土地がでかいのとさっき言った『太閤』の位になると貰える荘園の収入で好き勝手やれんの。まあ、『無職』になるとそれもパーになるから仕事はしてっけど……両親に育てられたなんて自覚はねえよ」

 なんとか取り繕うとする誠の言葉にかなめはつれなくそう答えた。

「私も……家族ってほしいとは思わないわね。まあ、うちの部隊で家族にいい思い出があるのは少数派なんじゃないかしら。運航部の女子は全員『ラスト・バタリオン』で人工的に作られた存在だから家族なんていないけど……技術部の連中も聞いてみるとあんまりいい話は聞かないわよ。家族にいい思い出があるならうちみたいな『特殊な部隊』には来ないんじゃない?」

 アメリアはそう言いながらビールを飲み干した。

「注ぎますよ!」

 誠はそう言ってビールを注ぐ。

 いつの間にか島田達が馬鹿話をやめて誠達の方に目をやっていた。

「いいんじゃねえの、家族なんていたっていなくたって。『家族は最初の他人』だぜ。世話になったのは事実だが……それに縛られる義理はねえわな」

 島田はそう言って最後の豚串を食べ終えた。

「じゃあ、終いとするか……島田、ちっちゃい姐御にいくらか貰ってたろ」

 かなめは葉巻を灰皿において立ち上がってそう言った。

「三万出してくれましたけど」

 島田はそう言ってズボンのポケットからしわだらけの封筒を取り出す。

「春子さん!三万で足ります?」

 そう言ってかなめはそのまま島田から奪い取った封筒を手にレジの方に向かった。春子はカウンターの向こうでレジに向け歩き出すのが見えた。

「誠ちゃん。まあ、うちでは誠ちゃんは結構レアな存在なわけよ。それだけに欠かせないの……がんばって」

 誠は立ち上がろうとしたところをアメリアにそんな言葉をかけられた。

 誠はただアルコールの酔いに任せて静かにうなづくしかなかった。
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