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ある若者の運命と女と酒となじみの焼き鳥屋
第84話 仕組まれた席順
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「じゃあ、誠ちゃん。行きましょう」
かなめ達に続いてアメリアが歩き出す。誠もアスファルトの上の熱波にのぼせながら歩き続けた。
店はこじんまりとした商店街の中央の三階建ての店だった。『月島屋』の文字と、煙がもうもうと上がる様がすぐに目に入る。
「たぶん島田達が占拠してっから大丈夫だろ」
かなめの言い回しに嫌な予感を感じながら誠は店の縄のれんをくぐった。
「こら!この外道が!」
店の中では女子中学生が心張棒でかなめを殴っているところだった。当然、かなめは銃を抜いている。
「小夏!今日こそ死にたいらしいな!撃つからな!撃つからな!」
かなめは左手で攻撃を避けながら銃口を少女に向けつつ叫ぶ。
「撃つも何も……マガジン入ってないじゃないか……」
あっさりとカウラがそう言うとそのまま島田達三人が座っているカウンターに席を下した。
「はい、隣が誠ちゃんで、その隣が飼い主のかなめちゃん。アタシは手前でいいわ」
ここはお姉さん&上官スキルでアメリアが仕切って見せた。結果、一番奥からパーラ、島田、サラ、カウラ、誠、かなめ、アメリアと言う形で焼鳥屋のカウンターは占められることになった。
「なんか……私の席、神前君から遠くない?」
不服そうに抗議するパーラだが、カウラとかなめからの殺気を帯びた視線を浴びると仕方ないというように静かにうなだれた。
「かなめの下衆が野郎の隣……こいつ『百合女王様』だったと記憶してんだけど……アタシを前に支配しようとして失敗して……」
先ほどかなめとバトルを展開していた少女はお通しを配りながらぶつぶつとつぶやいた。彼女は誠の隣に立つとにっこりと微笑んで見せた。
「アタシは家村小夏って言う女郎っす。ランの姐御の下で日々精進して、ゆくゆくは『特殊な部隊』の隊員になろうと頑張ってます!きっと『使えない』神前の兄さんよりは使える人材になる予定です!」
そばかすの目立つかわいらしい少女に声をかけられて誠はつい黙り込んで照れ笑いを浮かべた。
「ランの姐御……うちを『指定暴力団』にでもしてえのか?ったく……小夏!アタシの酒!」
かなめが叫ぶと、店の奥からラム酒のボトルを持った藤色の和服を着た30代半ばの女性が現れた。
「すみませんね……いつもごひいきに。西園寺さんの『レモンハート』。まだまだケースであるわよ」
女将らしい女性はそう言ってラム酒のボトルをかなめのカウンターの上に置いた。
「私は家村春子。ここは私のお店。まあ、新さん……いえ、嵯峨隊長とは以前いろいろあってね……」
春子は誠にそう名乗るとそのまま静かにカウンターの裏へと消えていった。誠は彼女の言葉の最後の意味が理解できずに呆然と店内を見回していた。
かなめ達に続いてアメリアが歩き出す。誠もアスファルトの上の熱波にのぼせながら歩き続けた。
店はこじんまりとした商店街の中央の三階建ての店だった。『月島屋』の文字と、煙がもうもうと上がる様がすぐに目に入る。
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かなめの言い回しに嫌な予感を感じながら誠は店の縄のれんをくぐった。
「こら!この外道が!」
店の中では女子中学生が心張棒でかなめを殴っているところだった。当然、かなめは銃を抜いている。
「小夏!今日こそ死にたいらしいな!撃つからな!撃つからな!」
かなめは左手で攻撃を避けながら銃口を少女に向けつつ叫ぶ。
「撃つも何も……マガジン入ってないじゃないか……」
あっさりとカウラがそう言うとそのまま島田達三人が座っているカウンターに席を下した。
「はい、隣が誠ちゃんで、その隣が飼い主のかなめちゃん。アタシは手前でいいわ」
ここはお姉さん&上官スキルでアメリアが仕切って見せた。結果、一番奥からパーラ、島田、サラ、カウラ、誠、かなめ、アメリアと言う形で焼鳥屋のカウンターは占められることになった。
「なんか……私の席、神前君から遠くない?」
不服そうに抗議するパーラだが、カウラとかなめからの殺気を帯びた視線を浴びると仕方ないというように静かにうなだれた。
「かなめの下衆が野郎の隣……こいつ『百合女王様』だったと記憶してんだけど……アタシを前に支配しようとして失敗して……」
先ほどかなめとバトルを展開していた少女はお通しを配りながらぶつぶつとつぶやいた。彼女は誠の隣に立つとにっこりと微笑んで見せた。
「アタシは家村小夏って言う女郎っす。ランの姐御の下で日々精進して、ゆくゆくは『特殊な部隊』の隊員になろうと頑張ってます!きっと『使えない』神前の兄さんよりは使える人材になる予定です!」
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「ランの姐御……うちを『指定暴力団』にでもしてえのか?ったく……小夏!アタシの酒!」
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「私は家村春子。ここは私のお店。まあ、新さん……いえ、嵯峨隊長とは以前いろいろあってね……」
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