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『悪党の狩場』
第75話 『駄目人間』のけじめ
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「舐めんじゃねえぞ糞餓鬼。東都警察がテメエの配下の下部組織を四つ潰して台所が火の車だってことは分かってるんだよ。どうせこのまま行ったら次の旦那衆の会合次第で、そこに飾ってある家族ともども地球の地中海で魚の餌になる予定なんだろ?今のテメエならカネの為なら何でもすることくらいお見通しだよ。な・め・る・な・よ」
嵯峨の言葉は深い重みをもっていた。表情を変えずにそれを聞くカルヴィーノの肩がかすかに震えていた。
カルヴィーノは静かに乱れた金色の前髪を血にぬれた手で撫で付けている。それを見ると冷たい笑みを浮かべた嵯峨が言葉を続けた。
「カネに困ったおまえさんは手っ取り早くカネになりそうな博打に出たわけだ。東和共和国以外の金持ちの政府関係者が探している俺達『法術師』を捕まえて売れば、当然、相当なカネになる」
そう言いながら嵯峨は怯えるカルヴィーノを無視して今度は壁に掛けられた絵に視線を飛ばす。
「それも一番、カネになるのはその異能力者、俺達『法術師』を、生きたまま捕獲する。そうすれば、一気に旦那衆から土下座されてトップになれる。そうオメエさんは考えたが……相手が悪かったな」
嵯峨はそう言い終わると胸のポケットから軍用タバコ『錦糸』を取り出した。
「この部屋は禁煙ですよ。大佐殿」
青ざめた顔をしながらも、東都の地球系マフィアを統べるボスとしてのプライドから、カルヴィーノは引きつった笑みを浮かべながらそう言った。
「オメエはタバコはやらねえんだったよな。まったく『この業界』で禁煙主義なんてつまんねえ人生送ったな。『同業者』としては理解不能だ」
嵯峨はカルヴィーノの言葉を無視してタバコに火をつける。カルヴィーノは肩を落として嵯峨の姿をただ見つめていた。
「どうせ何も話すつもりは無いんだろ?地球系マフィアのその忠誠心はいつも感心させられるよ。遼州系のチンピラにも教えてやってくれよ、その『美徳』を」
そんな嵯峨の皮肉にピクリとカルヴィーノはこめかみを動かした。
「まあここでテメエを斬ってやってもいいんだが……」
「斬らないのか?珍しいことだ」
苦々しげに呟くカルヴィーノに嵯峨は不敵な笑みで応える。
「テメエは生かしといた方が面白いからな。当局にテメエの身柄がある限りテメエの家族の安全ははどうなるかわからない……」
そう言って嵯峨は憐れむような笑みをカルヴィーノに投げかける。
カルヴィーノはムキになったように嵯峨の手を振りほどいた。
「言うな!」
嵯峨の手から解放されたカルヴィーノは、思いつめたような表情を浮かべてネクタイを締めなおす。。
「まあ、落ちた『極道の行先』はどこでも『地獄』って決まってるんだ。完全黙秘で刑期を終えりゃあ女房の葬式には間に合うだろ」
嵯峨がそこまで言った時、アメリア貴下の運航部の女性隊員達がそれぞれ小銃を手に部屋になだれ込んでくる。
「動くな!」
長身のアメリアが手にした拳銃を素早く構えてカルヴィーノの額を狙う。
「おお、ご苦労さん。まあ、これから完全黙秘を貫こうとする『アウトロー世界の勇者』だ。丁寧に扱ってくれよ」
嵯峨の言葉を聞くとアメリアの部下達の『自称女芸人』はカルヴィーノを引き立てて部屋を出ていく。
「一件落着ってことか……いや、これからが問題か……」
嵯峨はそう言うとゆっくりと刀を鞘に収めた。
「クラウゼ、あとは頼むわ」
「了解しました」
紺色の髪に青いベレー帽をかぶった指揮官らしい姿のアメリアに嵯峨はそう言った。
彼はタバコを咥えたままこの店の『真の主』がいた部屋を後にした。
「こちらのカードは順調に良い手になるように集まってる……さあ、『ネオナチ』の旦那。そっちのカードの手は何だろうな……」
そうつぶやくと嵯峨は煙草の煙を天井に向けて吐いた。
嵯峨の言葉は深い重みをもっていた。表情を変えずにそれを聞くカルヴィーノの肩がかすかに震えていた。
カルヴィーノは静かに乱れた金色の前髪を血にぬれた手で撫で付けている。それを見ると冷たい笑みを浮かべた嵯峨が言葉を続けた。
「カネに困ったおまえさんは手っ取り早くカネになりそうな博打に出たわけだ。東和共和国以外の金持ちの政府関係者が探している俺達『法術師』を捕まえて売れば、当然、相当なカネになる」
そう言いながら嵯峨は怯えるカルヴィーノを無視して今度は壁に掛けられた絵に視線を飛ばす。
「それも一番、カネになるのはその異能力者、俺達『法術師』を、生きたまま捕獲する。そうすれば、一気に旦那衆から土下座されてトップになれる。そうオメエさんは考えたが……相手が悪かったな」
嵯峨はそう言い終わると胸のポケットから軍用タバコ『錦糸』を取り出した。
「この部屋は禁煙ですよ。大佐殿」
青ざめた顔をしながらも、東都の地球系マフィアを統べるボスとしてのプライドから、カルヴィーノは引きつった笑みを浮かべながらそう言った。
「オメエはタバコはやらねえんだったよな。まったく『この業界』で禁煙主義なんてつまんねえ人生送ったな。『同業者』としては理解不能だ」
嵯峨はカルヴィーノの言葉を無視してタバコに火をつける。カルヴィーノは肩を落として嵯峨の姿をただ見つめていた。
「どうせ何も話すつもりは無いんだろ?地球系マフィアのその忠誠心はいつも感心させられるよ。遼州系のチンピラにも教えてやってくれよ、その『美徳』を」
そんな嵯峨の皮肉にピクリとカルヴィーノはこめかみを動かした。
「まあここでテメエを斬ってやってもいいんだが……」
「斬らないのか?珍しいことだ」
苦々しげに呟くカルヴィーノに嵯峨は不敵な笑みで応える。
「テメエは生かしといた方が面白いからな。当局にテメエの身柄がある限りテメエの家族の安全ははどうなるかわからない……」
そう言って嵯峨は憐れむような笑みをカルヴィーノに投げかける。
カルヴィーノはムキになったように嵯峨の手を振りほどいた。
「言うな!」
嵯峨の手から解放されたカルヴィーノは、思いつめたような表情を浮かべてネクタイを締めなおす。。
「まあ、落ちた『極道の行先』はどこでも『地獄』って決まってるんだ。完全黙秘で刑期を終えりゃあ女房の葬式には間に合うだろ」
嵯峨がそこまで言った時、アメリア貴下の運航部の女性隊員達がそれぞれ小銃を手に部屋になだれ込んでくる。
「動くな!」
長身のアメリアが手にした拳銃を素早く構えてカルヴィーノの額を狙う。
「おお、ご苦労さん。まあ、これから完全黙秘を貫こうとする『アウトロー世界の勇者』だ。丁寧に扱ってくれよ」
嵯峨の言葉を聞くとアメリアの部下達の『自称女芸人』はカルヴィーノを引き立てて部屋を出ていく。
「一件落着ってことか……いや、これからが問題か……」
嵯峨はそう言うとゆっくりと刀を鞘に収めた。
「クラウゼ、あとは頼むわ」
「了解しました」
紺色の髪に青いベレー帽をかぶった指揮官らしい姿のアメリアに嵯峨はそう言った。
彼はタバコを咥えたままこの店の『真の主』がいた部屋を後にした。
「こちらのカードは順調に良い手になるように集まってる……さあ、『ネオナチ』の旦那。そっちのカードの手は何だろうな……」
そうつぶやくと嵯峨は煙草の煙を天井に向けて吐いた。
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