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力に目覚めるということ
第184話 悲しき自然淘汰
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ランは少しばかりしょんぼりとした調子で話を続けた。
「で、その『昼寝』の前に食った『イクチオステガ』は……もう絶滅してるんだ。残酷だな時間は……3億7000万年ほど前に……食ったよ、アタシ。アタシが滅ぼしたのかな……『イクチオステガ』」
残念ながら誠は『イクチオステガ』を知っていた。大学の『古代生物学』の授業で『初めて鼓膜を持った脊椎動物』と言う教授の言葉が誠の耳に残っていたからだった。
誠は仕方なく、『理系の地球の歴史』知識を披露することに決めた。
「あのー。それは『デボン紀』ですね。『石炭紀』の前の。『古生代』の……恐竜とかいた『中生代』の前の」
それまで落ち込んでいたランの表情が急に明るくなった。
「ああ、オメー歴史詳しいじゃん!オメー地球の歴史は苦手じゃねーのか?」
まるで自分のことを初めて分かってくれた出会いのような顔のちっちゃな上司の姿に誠はただひたすら戸惑うしかなかった。
「それ……地球の『生物』とか『地質学』とか『地球物理学』の理系の大学の授業で習う『歴史』の基準ですけど……」
誠の理系的歴史知識にランは満足したようにうなづいて、いつもの元気な幼女の姿に戻った。
「だって仕方ねーだろ?アタシが寝てたのは『遼帝国』の『炭鉱』の石炭の地層の『ずいぶん下』だったって話だから。でも寝ぼけててよかったよな!炭鉱のおっさんに『おい!起きろ!』って言われてもどー反応したらいーかわかんねーぞ」
こっちがどうツッコんでいいのかわからないと言いたい誠は上司の戯言に苦笑いを浮かべていた。
「アタシが掘り出された地層が、地球の『デボン紀』と同じ時代の地層だったんだから。時代は合ってる!間違いなく3億7000万年くれー前の地球!」
この幼女の年齢がどうやら『億』の単位を超えていることを聞かされた誠は、『不老不死』とか言う以前に目の前の幼女の存在自体に不安を持ち始めた。
元気を取り戻したランはさらに能弁に語り続けた。
「あと、1億年後だったらよかったんだよ……『メガネウラ』がいたんだぜ!アタシくらいの大きさの虫が空飛んでんだぜ!地球!すっげーって自慢できたよな!生で1メートルの地球のトンボを見たって言えっからな!12メートルのムカデとか、50センチのゴキブリとかいた時代だぞ!歴史ってスゲー!」
誠は思った。『それは歴史とは言わない』と。
人類登場まで3億6700万年かかる。それも1000万年単位の誤差があるので言うだけ無駄だと悟って話題を変えることにした。
「じゃあ、途中で起きれば『恐竜』とか見られたんじゃないですか!地球人がどうやって進化したかわかるなんて……凄いですね!」
誠の空元気の言葉に、ランは完全に冷めた視線を向けてくる。
「恐竜?そんなの寝てたから知らねーよ。地球人?アタシが食わなかった『イクチオステガ』の家族の子供達だろ?なんでアタシが食い物のガキについて語らなきゃならねーんだよ」
誠の地球へのフォローは完全に上滑りしていた。
ランは明らかに白けた表情で話を続けた。
「アタシは『覚醒した法術師』で『不老不死』なんだよ。だからアタシには3億7000万年など『ぐっすり眠ると過ぎちゃう』程度の時間なんだ」
はっきりとそう言い切る8歳幼女にしか見えない『偉大なる中佐殿』が、誠にはあまりに『偉大』に見えた。
そして再び『偉大過ぎる中佐殿』はかわいらしくもじもじし始めた。
「これは……自慢じゃねえぞ。恥ずかしーんだからな。さすがに寝すぎた自覚はあるから……ぜってー言うんじゃねーぞ。特に西園寺は『寝すぎだよ姐御!』とか言ってアタシをいじるからな……何が『歴史』だよ。1億年くれー『誤差』じゃねーか」
1億年を『誤差』と言い切る『偉大過ぎる中佐殿』に、もはや誠は何も言うことは無かった。
「つーわけで。これがアタシの『恥ずかしー秘密』だ!よそで言ったら『殺す』から!」
誠は『言っても誰も信じません』と言うことと、『この幼女を見つけた炭鉱の人はどう反応したんだろう』と言うことを考えながら静かにうなづいた。
「で、その『昼寝』の前に食った『イクチオステガ』は……もう絶滅してるんだ。残酷だな時間は……3億7000万年ほど前に……食ったよ、アタシ。アタシが滅ぼしたのかな……『イクチオステガ』」
残念ながら誠は『イクチオステガ』を知っていた。大学の『古代生物学』の授業で『初めて鼓膜を持った脊椎動物』と言う教授の言葉が誠の耳に残っていたからだった。
誠は仕方なく、『理系の地球の歴史』知識を披露することに決めた。
「あのー。それは『デボン紀』ですね。『石炭紀』の前の。『古生代』の……恐竜とかいた『中生代』の前の」
それまで落ち込んでいたランの表情が急に明るくなった。
「ああ、オメー歴史詳しいじゃん!オメー地球の歴史は苦手じゃねーのか?」
まるで自分のことを初めて分かってくれた出会いのような顔のちっちゃな上司の姿に誠はただひたすら戸惑うしかなかった。
「それ……地球の『生物』とか『地質学』とか『地球物理学』の理系の大学の授業で習う『歴史』の基準ですけど……」
誠の理系的歴史知識にランは満足したようにうなづいて、いつもの元気な幼女の姿に戻った。
「だって仕方ねーだろ?アタシが寝てたのは『遼帝国』の『炭鉱』の石炭の地層の『ずいぶん下』だったって話だから。でも寝ぼけててよかったよな!炭鉱のおっさんに『おい!起きろ!』って言われてもどー反応したらいーかわかんねーぞ」
こっちがどうツッコんでいいのかわからないと言いたい誠は上司の戯言に苦笑いを浮かべていた。
「アタシが掘り出された地層が、地球の『デボン紀』と同じ時代の地層だったんだから。時代は合ってる!間違いなく3億7000万年くれー前の地球!」
この幼女の年齢がどうやら『億』の単位を超えていることを聞かされた誠は、『不老不死』とか言う以前に目の前の幼女の存在自体に不安を持ち始めた。
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「あと、1億年後だったらよかったんだよ……『メガネウラ』がいたんだぜ!アタシくらいの大きさの虫が空飛んでんだぜ!地球!すっげーって自慢できたよな!生で1メートルの地球のトンボを見たって言えっからな!12メートルのムカデとか、50センチのゴキブリとかいた時代だぞ!歴史ってスゲー!」
誠は思った。『それは歴史とは言わない』と。
人類登場まで3億6700万年かかる。それも1000万年単位の誤差があるので言うだけ無駄だと悟って話題を変えることにした。
「じゃあ、途中で起きれば『恐竜』とか見られたんじゃないですか!地球人がどうやって進化したかわかるなんて……凄いですね!」
誠の空元気の言葉に、ランは完全に冷めた視線を向けてくる。
「恐竜?そんなの寝てたから知らねーよ。地球人?アタシが食わなかった『イクチオステガ』の家族の子供達だろ?なんでアタシが食い物のガキについて語らなきゃならねーんだよ」
誠の地球へのフォローは完全に上滑りしていた。
ランは明らかに白けた表情で話を続けた。
「アタシは『覚醒した法術師』で『不老不死』なんだよ。だからアタシには3億7000万年など『ぐっすり眠ると過ぎちゃう』程度の時間なんだ」
はっきりとそう言い切る8歳幼女にしか見えない『偉大なる中佐殿』が、誠にはあまりに『偉大』に見えた。
そして再び『偉大過ぎる中佐殿』はかわいらしくもじもじし始めた。
「これは……自慢じゃねえぞ。恥ずかしーんだからな。さすがに寝すぎた自覚はあるから……ぜってー言うんじゃねーぞ。特に西園寺は『寝すぎだよ姐御!』とか言ってアタシをいじるからな……何が『歴史』だよ。1億年くれー『誤差』じゃねーか」
1億年を『誤差』と言い切る『偉大過ぎる中佐殿』に、もはや誠は何も言うことは無かった。
「つーわけで。これがアタシの『恥ずかしー秘密』だ!よそで言ったら『殺す』から!」
誠は『言っても誰も信じません』と言うことと、『この幼女を見つけた炭鉱の人はどう反応したんだろう』と言うことを考えながら静かにうなづいた。
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