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『嘔吐』の果てに主人公が見た『現実』
第123話 暗い過去を持つ『駄目人間』
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「人間は基本的に『生きたいんだ』。理想のために死ぬのは格好がいいけど、そんなに簡単に死ねるのは一握りなの。おまえさんの乗艦の『那珂』のブリッジの連中は、確かにそのレアスキルを持っていて戦力にはなる」
嵯峨は退屈そうに話を続けた。近藤は仕方なくその言葉を聞いているだけだった。
「だけどさ、他の兵隊はどうかな?俺がちょっと、そいつらの家族にあてた『私信』を覗き見たら……死ぬ気はないよ、あいつ等。あんた等『士族』と違って『平民』だもの、義理立てする必要はないもの。日々の生活で精いっぱいなんだ。近藤さん達と一緒に地獄に落ちるつもりは無いよ……さて、そいつ等が戦力になるかな?」
何気なくつぶやく嵯峨の言葉に近藤は激高してこぶしを握り締めた。
『『私信』だと!そんなものを見て恥ずかしくないのか!貴様は正々堂々と戦うつもりはないのか!』
「うん、無いよ。俺はプライドゼロが売りだもの。前だけ向いて勝てるなら将棋でもやりな」
怒りに任せて叫ぶ近藤に嵯峨はやる気のない表情で答える。
「『甲武国』の憲兵資格ってのは便利でね。『司令部勤め』の近藤さんには理解できないでしょ?そんなところに戦争の結果が噛んでるなんて。兵士もね、人間なんだ。彼等には『戦後』を生きる義務と権利がある。俺達職業軍人はそれを時々忘れちまうんだよ。でも、あんたも前の戦争が終わった後まで連中の面倒見たの?見てないでしょ?それがあんたの頭の中の『八丁味噌』の限界だ」
近藤の怒りに震える顔を見ながら嵯峨はそう言い放った。
「そこまで見れちゃうんだな、俺達諜報や憲兵をやってた人間には。憲兵隊には兵士の『私信』を検閲する権限があるんだ。『甲武国』の軍人の家族とか恋人とかに宛てた手紙を見る権限が俺にはある。他の軍隊にも大体あるよ、似たようなのが。俺はそいつに『嘘』を混ぜてその『兵隊』を使い物にならなくするようなお仕事もした経験があるわけ。いやあ、見事に引っかかったよ『馬鹿な地球圏の兵隊』達。おかげであんた等『甲武国軍上層部』の無能を証明するような作戦でも通用したんだ。その点は感謝してもらわないと『作戦屋さん』」
近藤は嵯峨と言う男を図りかねていた。
同志であるルドルフ・カーンが言うように、嵯峨が『食えない男』であることは認める。
だが、やり方が汚すぎる。私情を利用して兵隊をかく乱しての勝利など近藤は望んではいなかった。
「汚いものを見るような視線だね、近藤さん。戦争とはそもそも殺し合い。『きれい』とか『汚い』とか贅沢は言えないんだ。違うかな?俺は間違ってるかな?」
近藤は『年齢と見た目が一致しない化け物』を目にしている事実に気づかないほど愚かではなかった。
「俺は『東都共和国二等武官』の仮面の下でそんなお仕事をしていたわけ。大使館の中で消息を絶った俺は『戦争の汚さ』をうんざりするほど見てきたんだ。だから、俺は戦争は嫌いだよ。近藤さんみたいにいい作戦を立案することで『甘い蜜』を吸ったことがねえからな、俺は」
そう言って嵯峨は画面に映し出される近藤を『殺意』を込めた力強い視線で睨みつけた。
「近藤さん。俺達『特殊な部隊』、遼州同盟司法局実働部隊は、あんたを『クーデター首謀者』として処刑する。俺と高名な『偉大なる中佐殿』ことクバルカ・ラン中佐がその首を落とす。多少の被害が出るが、くたばるあんたの知ったことじゃねえがな」
画面が突然消えた。近藤が不愉快さのあまり通信を遮断した結果だった。
「自分の都合のいいようにしか物事を考えられない『脳なし』には、綺麗に見えるのかな?『戦い』は。それに『歴史』は生き残った人間が書くんだ。死んだ人間には『歴史』を書く資格がねえんだよ」
そう言うと嵯峨は、大きな展望ルームのガラスの外に広がる世界に目をやった。
そこには宇宙のごみとなった『戦闘機械の残骸』が無数に浮かんでいた。
嵯峨は退屈そうに話を続けた。近藤は仕方なくその言葉を聞いているだけだった。
「だけどさ、他の兵隊はどうかな?俺がちょっと、そいつらの家族にあてた『私信』を覗き見たら……死ぬ気はないよ、あいつ等。あんた等『士族』と違って『平民』だもの、義理立てする必要はないもの。日々の生活で精いっぱいなんだ。近藤さん達と一緒に地獄に落ちるつもりは無いよ……さて、そいつ等が戦力になるかな?」
何気なくつぶやく嵯峨の言葉に近藤は激高してこぶしを握り締めた。
『『私信』だと!そんなものを見て恥ずかしくないのか!貴様は正々堂々と戦うつもりはないのか!』
「うん、無いよ。俺はプライドゼロが売りだもの。前だけ向いて勝てるなら将棋でもやりな」
怒りに任せて叫ぶ近藤に嵯峨はやる気のない表情で答える。
「『甲武国』の憲兵資格ってのは便利でね。『司令部勤め』の近藤さんには理解できないでしょ?そんなところに戦争の結果が噛んでるなんて。兵士もね、人間なんだ。彼等には『戦後』を生きる義務と権利がある。俺達職業軍人はそれを時々忘れちまうんだよ。でも、あんたも前の戦争が終わった後まで連中の面倒見たの?見てないでしょ?それがあんたの頭の中の『八丁味噌』の限界だ」
近藤の怒りに震える顔を見ながら嵯峨はそう言い放った。
「そこまで見れちゃうんだな、俺達諜報や憲兵をやってた人間には。憲兵隊には兵士の『私信』を検閲する権限があるんだ。『甲武国』の軍人の家族とか恋人とかに宛てた手紙を見る権限が俺にはある。他の軍隊にも大体あるよ、似たようなのが。俺はそいつに『嘘』を混ぜてその『兵隊』を使い物にならなくするようなお仕事もした経験があるわけ。いやあ、見事に引っかかったよ『馬鹿な地球圏の兵隊』達。おかげであんた等『甲武国軍上層部』の無能を証明するような作戦でも通用したんだ。その点は感謝してもらわないと『作戦屋さん』」
近藤は嵯峨と言う男を図りかねていた。
同志であるルドルフ・カーンが言うように、嵯峨が『食えない男』であることは認める。
だが、やり方が汚すぎる。私情を利用して兵隊をかく乱しての勝利など近藤は望んではいなかった。
「汚いものを見るような視線だね、近藤さん。戦争とはそもそも殺し合い。『きれい』とか『汚い』とか贅沢は言えないんだ。違うかな?俺は間違ってるかな?」
近藤は『年齢と見た目が一致しない化け物』を目にしている事実に気づかないほど愚かではなかった。
「俺は『東都共和国二等武官』の仮面の下でそんなお仕事をしていたわけ。大使館の中で消息を絶った俺は『戦争の汚さ』をうんざりするほど見てきたんだ。だから、俺は戦争は嫌いだよ。近藤さんみたいにいい作戦を立案することで『甘い蜜』を吸ったことがねえからな、俺は」
そう言って嵯峨は画面に映し出される近藤を『殺意』を込めた力強い視線で睨みつけた。
「近藤さん。俺達『特殊な部隊』、遼州同盟司法局実働部隊は、あんたを『クーデター首謀者』として処刑する。俺と高名な『偉大なる中佐殿』ことクバルカ・ラン中佐がその首を落とす。多少の被害が出るが、くたばるあんたの知ったことじゃねえがな」
画面が突然消えた。近藤が不愉快さのあまり通信を遮断した結果だった。
「自分の都合のいいようにしか物事を考えられない『脳なし』には、綺麗に見えるのかな?『戦い』は。それに『歴史』は生き残った人間が書くんだ。死んだ人間には『歴史』を書く資格がねえんだよ」
そう言うと嵯峨は、大きな展望ルームのガラスの外に広がる世界に目をやった。
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