116 / 187
出航の時
第116話 スーパー船酔いタイム開始
しおりを挟む
三人は黙って誠の私物を私室の備え付けの棚にかたずけた。
「じゃあ、私は行くから」
誠のイラストを机の引き出しにしまったアメリアがそう言って立ち上がる。
「そうだな。もうそろそろ出航の時間だ」
カウラはそう言いながら誠の酔い止めの入った薬箱をその下の引き出しに入れた。
「動きます?」
自分で行っておきながらかなり間抜けだと誠も思っていた。
船である以上動くのは当然である。しかし、誠は人並み外れて乗り物に弱かった。
「大丈夫よ!重力制御装置は最近ではかなり性能がいいから。しかも、この艦はハンガーや倉庫まで重力制御が効いてるのが自慢なの!まるで誠ちゃんのためにあつらえたみたい!それじゃあ!」
誠の私室を去っていくアメリアの言葉に誠は少しばかり安心した。
誠の胃は重力の制御を離れるとすぐに暴走するやんちゃな胃袋だった。この宇宙大航海時代にあって、まだ飛行機すら乗れない誠はまさに時代から取り残された存在だった。
パイロット育成過程でも誠の吐瀉癖は最強の酔い止めでなんとか止められる程度であり、自分としてはとても宇宙軍勤務は不可能だと思っていたので今回の演習には危機感を持って挑んでいた。
「神前……大丈夫か?」
カウラの言葉で誠は自分の顔に冷や汗が浮かんでいることがわかった。
「大丈夫だと思いますけど……」
とりあえず戸棚にカギをかけると誠はそう言いながら立ち上がった。
ぐらりと地面が揺れるような感覚が二人を襲った。
「出航だな」
カウラの言葉に誠は青ざめてうなづいた。
「とりあえず……僕は医務室で……酔い止めどか……点滴とか……」
誠は緊張のあまり胃から逆流してくる内容物を何とか抑え込みながらそう言ってカウラの美しい面差しを眺めていた。
「じゃあ、私は行くから」
誠のイラストを机の引き出しにしまったアメリアがそう言って立ち上がる。
「そうだな。もうそろそろ出航の時間だ」
カウラはそう言いながら誠の酔い止めの入った薬箱をその下の引き出しに入れた。
「動きます?」
自分で行っておきながらかなり間抜けだと誠も思っていた。
船である以上動くのは当然である。しかし、誠は人並み外れて乗り物に弱かった。
「大丈夫よ!重力制御装置は最近ではかなり性能がいいから。しかも、この艦はハンガーや倉庫まで重力制御が効いてるのが自慢なの!まるで誠ちゃんのためにあつらえたみたい!それじゃあ!」
誠の私室を去っていくアメリアの言葉に誠は少しばかり安心した。
誠の胃は重力の制御を離れるとすぐに暴走するやんちゃな胃袋だった。この宇宙大航海時代にあって、まだ飛行機すら乗れない誠はまさに時代から取り残された存在だった。
パイロット育成過程でも誠の吐瀉癖は最強の酔い止めでなんとか止められる程度であり、自分としてはとても宇宙軍勤務は不可能だと思っていたので今回の演習には危機感を持って挑んでいた。
「神前……大丈夫か?」
カウラの言葉で誠は自分の顔に冷や汗が浮かんでいることがわかった。
「大丈夫だと思いますけど……」
とりあえず戸棚にカギをかけると誠はそう言いながら立ち上がった。
ぐらりと地面が揺れるような感覚が二人を襲った。
「出航だな」
カウラの言葉に誠は青ざめてうなづいた。
「とりあえず……僕は医務室で……酔い止めどか……点滴とか……」
誠は緊張のあまり胃から逆流してくる内容物を何とか抑え込みながらそう言ってカウラの美しい面差しを眺めていた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第二部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。
宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。
そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。
どうせろくな事が怒らないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。
そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。
しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。
この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。
これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。
そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。
そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。
SFお仕事ギャグロマン小説。
レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞
橋本 直
SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。
その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。
しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。
さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。
直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。
他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。
しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。
考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。
誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?
空想科学小説-蘇り転生の魔王、絶滅寸前の魔族を救う!
shiba
SF
プログラマーの田中一郎はデバッグ中に意識を失い死亡する。死因は強制的に転生させられた事、享年35歳のおっさんである。しかし、目覚めると、やたらと豪奢なベッドの上で……
そこで彼は300年前に勇者と相打ちになった魔王である事を思い出す。今や魔族は風前の灯、生存圏はダンジョンのみ、かつての友や配下も討ち死にしてしまっている現状。
”世界は一つではない”と知った彼は転移ゲートを設置し、地球から異世界に輸入した様々な物品と知識で、天狼の娘や吸血鬼の令嬢、貴族の悪役令嬢(予定)たちと共に魔族勢力の巻き返しを図る!
※小説家になろう様でも掲載しております。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )
あおっち
SF
とうとう、AXIS軍が、椎葉きよしたちの奮闘によって、対馬市へ追い詰められたのだ。
そして、戦いはクライマックスへ。
現舞台の北海道、定山渓温泉で、いよいよ始まった大宴会。昨年あった、対馬島嶼防衛戦の真実を知る人々。あっと、驚く展開。
この序章3/7は主人公の椎葉きよしと、共に闘う女子高生の物語なのです。ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。
いよいよジャンプ血清を守るシンジケート、オリジナル・ペンタゴンと、異星人の関係が少しづつ明らかになるのです。
次の第4部作へ続く大切な、ほのぼのストーリー。
疲れたあなたに贈る、SF物語です。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる