上 下
80 / 187
悲劇の代償

第80話 パチンコ狂時代と逃避行未遂

しおりを挟む
「カウラさん『パチンコの無い生活は想像できない』って言ってますけど。パチンコチェーンがあるんですか『ゲルパルト帝国』には」

 自分に与えられた試練に打ちのめされながら誠はそう言った。

「ああ、私達の『製造工場』は敵対する『連合軍』に接収されたから。私もサラも、当然カウラちゃんも、『東和共和国』で『ロールアウト』したからわけ。だから出身国や国籍は『東和共和国』よ。カウラちゃんが『ロールアウト』した施設の周りには、当然ながら『パチンコ屋』が周りにいっぱいあったわけ」

 パーラが言う『ロールアウト』の意味が『出荷』という意味らしいことは分かった。そして、カウラの出荷先がどうやら『パチンコ屋』の近くだったことは想像がついた。

 そこでパーラは涙を流しつつ誠に寄り添ってくる。

「そんなつまらない過去より……」

 『悲劇的な生まれの過去を持つ』女性。パーラ・ラビロフ中尉の心からの救済を求める視線を感じた。

「神前君……一緒に逃げましょう……この『特殊な部隊』から……」

 パーラはそう言って誠の胸に飛び込んできた。

 ここで抱きしめて一緒に逃避行をするべきなのだ。

 彼女も誠と同じこの『特殊な部隊』の『体育会系気質』の被害者である自覚がある。

「パーラさん……」

 感極まった誠。涙を浮かべるパーラ。見つめあう二人。

 同じ不幸な境遇を共有する二人が見つめあった瞬間だった。

「逃げられると思うなよ……甘ちゃん」

 誠の腹部に激痛が走った。顔を見上げるとにやりと笑う島田の姿が見える。

 島田の右ストレートが腹部に炸裂したのがその痛みの原因だった。

「神前君!」

 パーラの叫びがむなしく響く中、誠は意識を失いつつ口から胃の内容物を吐き出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。 だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。 リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。 だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。 あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。 そして身体の所有権が俺に移る。 リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。 よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。 お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。 お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう! 味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。 絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ! そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!

アシュターからの伝言

あーす。
SF
プレアデス星人アシュターに依頼を受けたアースルーリンドの面々が、地球に降り立つお話。 なんだけど、まだ出せない情報が含まれてるためと、パーラーにこっそり、メモ投稿してたのにパーラーが使えないので、それまで現実レベルで、聞いたり見たりした事のメモを書いています。 テレパシー、ビジョン等、現実に即した事柄を書き留め、どこまで合ってるかの検証となります。 その他、王様の耳はロバの耳。 そこらで言えない事をこっそりと。 あくまで小説枠なのに、検閲が入るとか理解不能。 なので届くべき人に届けばそれでいいお話。 にして置きます。 分かる人には分かる。 響く人には響く。 何かの気づきになれば幸いです。

愛しのアリシア

京衛武百十
SF
彼女の名前は、<アリシア2234-LMN>。地球の日本をルーツに持つ複合企業体<|APAN-2(ジャパンセカンド)>のロボティクス部門が製造・販売するメイド型ホームヘルパーロボットの<アリシアシリーズ>の一体である。 しかし彼女は、他のアリシアシリーズとは違った、ユニークな機体だった。 まるで人間の少女のようにくるくると表情が変わり、仕草もそれこそ十代の少女そのものの、ロボットとしてはひどく落ち着きのないロボットなのである。 なぜなら彼女には、<心>としか思えないようなものがあるから。 人類が火星にまで生活圏を広げたこの時代でも、ロボットに搭載されるAIに<心>があることは確認されていなかった。それを再現することも、意図的に避けられていた。心を再現するためにリソースを割くことは、人間大の機体に内蔵できるサイズのAIではまったく合理的ではなかったからである。 けれど、<千堂アリシア>とパーソナルネームを与えられた彼女には、心としか思えないものがあるのだ。 ただしそれは、彼女が本来、運用が想定されていた条件下とは全く異なる過酷な運用が行われたことによって生じた<バグ>に過ぎないと見られていた。 それでも彼女は、主人である千堂京一を愛し、彼の役に立ちたいと奮闘するのであった。

グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-

山中カエル
SF
サッカー日本代表山下龍也は、数多の困難を乗り越えついにワールドカップ本戦に駒を進めた。 待ちに待った開会式、その日会場は 破壊された 空に浮かぶUFO。壊される会場。現実味のない光景が眼前に広がる中、宇宙人から声が発せられる。 『サッカーで勝負だ。我々が勝てば地球は侵略する』 地球のため、そして大好きなサッカーのため、龍也は戦うことを決意する。 しかしそこに待ち受けていたのは、一癖も二癖もある仲間たち、試合の裏に隠された陰謀、全てを統べる強大な本当の敵。 そして龍也たちに隠された秘密とは……? サッカーを愛する少年少女の、宇宙での戦いが今ここに始まる……! *** ※カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも同時掲載中です ※第三章は毎週水曜土曜更新の予定です *** はじめまして、山中カエルです! 小説を書くのは初めての経験で右も左もわかりませんが、とにかく頑張って執筆するので読んでいただけたら嬉しいです! よろしくお願いします! Twitter始めました→@MountainKaeru

ニケ… 翼ある少女

幻田恋人
SF
現代の日本にギリシア神話に登場する二人の女神が母と娘として覚醒した…アテナとニケである。 彼女達をめぐって、古よりの妖や現代テクノロジーによって生み出された怪物、そして日本を引いては世界をも支配しようとする組織との戦いが巻き起こる。 一方で二人を守り共に戦う正義の人々… 様々な思いや権謀術数が入り乱れた争いの火ぶたが、日本を舞台に切って落とされた。 二人の女神は愛する日本を、愛する人々を守り抜くことが出来るのか?

啓蟄のアヴァ

藤井咲
SF
核大戦後人類は地上に住むことをやめた。 ヘキサッド・キャピタル国の巨大な海上都市に暮らしているアヴァは過眠症を発症してからアカデミーでの仕事を辞め、夢を売ることになる。全てに対しどこか諦めのあるアヴァは自らの最大の秘密【夢】を売ることによって自己肯定を高めどんどんと孤独に陥り深みに嵌まっていく。アヴァの夢は彼女を苦しめ、忘れたい記憶が浮かび上がる。 夢を売るアヴァに口うるさい兄、子供をほったらかしの母は気づけばアル中になっていた。 この家族に救いはあるのか、海上都市に住む人類は娯楽に飲み込まれていくのか。 アヴァの抱えている問題とは何なのか…? ―――どこか別の近未来にいる家族の物語―――

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

巡(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記

武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
時司巡(ときつかさめぐり)は制服にほれ込んで宮之森高校を受験して合格するが、その年度から制服が改定されてしまう。 すっかり入学する意欲を失った巡は、定年退職後の再任用も終わった元魔法少女の祖母に相談。 「それなら、古い制服だったころの宮の森に通ってみればぁ?」「え、そんなことできるの!?」 お祖母ちゃんは言う「わたしの通っていた学校だし、魔法少女でもあったし、なんとかなるよ」 「だいじょうぶ?」 「任しとき……あ、ちょっと古い時代になってしまった」 「ええ!?」  巡は、なんと50年以上も昔の宮之森高校に通うことになった!

処理中です...