40 / 187
やりすぎた『手洗い歓迎』にあきれる『駄目人間』と『盗聴』
第40話 完落ちした『落ちこぼれ』
しおりを挟む
「神前……こんだけいじめて……母ちゃんにでも連絡すりゃあすぐ逃げられるのに。そこは俺でも潰しようがないよ、なんで考え付かないのかな?……そのくらい大学の就職課で教えるだろ。いい大学なんだから、アイツの大学」
そこまで言うと嵯峨はランを見据えてにんまりと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「しかし……『中佐殿』、よくやった。あれだけいじめて出ていかねえってことは、神前は落ちた。完堕ちだ。アイツには逃げるつもりはねえな。大したもんだ。さすが『あのお方』の息子だ。これで俺の勝ち。まず1勝」
そう言って嵯峨は顔を上げる。この部屋の音声を聞いている者に、わざと聞かせているような回りくどい言葉だった。
言い終わると、嵯峨は再び死んだような視線をランに目を向けて不敵に笑う。
「そう、これが俺流の戦い。『廃帝』との戦いに必要な手駒はこうしてそろえる。これ、俺の特許」
嵯峨の前のモニターにランの率いる実働部隊・機動部隊の執務室の監視カメラの映像が映っていた。
そこには取って付けた事務机に座っている誠の姿があった。すでに実働部隊の制服に着替えた『胃弱のスペシャリスト』と言う二つ名を獲得した青年は、黙って座っていた。
机の上には内線の子機だけがあり、その隣でエメラルドグリーンのポニーテールのカウラが誠に内線の使い方を教えていた。
「これで……『回収・補給』向けのパイロットがそろったか。神前は『法術師』としての伸びしろがある、もしかしてアタシ等を超えるかな?」
ランはそう言って笑顔を浮かべて嵯峨を見つめた。
「そうかもね」
『駄目人間』はランの言葉にあいまいに返事をした。彼女の意向と関係なく勝手なことをする嵯峨を見て、ランはため息をついた。
しかし、ランは急に『日本刀』の柄に右手を添えて、殺気を放った。
いつでも『殺人機能付き文化財』を抜き放てる構えのランを見ながら、嵯峨は机の上の『エロ記事』が売りの週刊誌に視線を投げたままで黙り込んだ。
「さすが『中佐殿』……当たり……盗聴器だよ。当然、あるわな……普通の役所の建物だもん。ここは……」
そう言うと嵯峨はランに視線を向ける。顔は満足げに笑っている。
「趣味がわりーぜ。『皇帝陛下』」
ランは多少聞こえよがしにそう言った。嵯峨は静かにうなづく。
「興味あるなら聞けば?俺は全部、その『裏』をかく。こっちの考えは分かんねえだろ?あんた等。肝心の神前の『秘密』は俺以外、知らねえーよ。バーカ」
『駄目人間』の『脳ピンク』が満足げに笑った。手には再びタバコがある。
「俺もそいつがどこまで重要な『秘密』かは知らねえんだ。でも、察しはつく、俺の頭には『脳味噌』が詰まってるから」
「その『秘密』を共有しているアタシはどうなんだ?」
タバコをふかす嵯峨にランはそう言った。
「お前さんの頭にも『脳味噌』が詰まってるよ。『不殺不傷』の誓いは『脳味噌』のある人間にしか立てられねえから……」
嵯峨はそう言ってにやりと笑って見せた。
そこまで言うと嵯峨はランを見据えてにんまりと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「しかし……『中佐殿』、よくやった。あれだけいじめて出ていかねえってことは、神前は落ちた。完堕ちだ。アイツには逃げるつもりはねえな。大したもんだ。さすが『あのお方』の息子だ。これで俺の勝ち。まず1勝」
そう言って嵯峨は顔を上げる。この部屋の音声を聞いている者に、わざと聞かせているような回りくどい言葉だった。
言い終わると、嵯峨は再び死んだような視線をランに目を向けて不敵に笑う。
「そう、これが俺流の戦い。『廃帝』との戦いに必要な手駒はこうしてそろえる。これ、俺の特許」
嵯峨の前のモニターにランの率いる実働部隊・機動部隊の執務室の監視カメラの映像が映っていた。
そこには取って付けた事務机に座っている誠の姿があった。すでに実働部隊の制服に着替えた『胃弱のスペシャリスト』と言う二つ名を獲得した青年は、黙って座っていた。
机の上には内線の子機だけがあり、その隣でエメラルドグリーンのポニーテールのカウラが誠に内線の使い方を教えていた。
「これで……『回収・補給』向けのパイロットがそろったか。神前は『法術師』としての伸びしろがある、もしかしてアタシ等を超えるかな?」
ランはそう言って笑顔を浮かべて嵯峨を見つめた。
「そうかもね」
『駄目人間』はランの言葉にあいまいに返事をした。彼女の意向と関係なく勝手なことをする嵯峨を見て、ランはため息をついた。
しかし、ランは急に『日本刀』の柄に右手を添えて、殺気を放った。
いつでも『殺人機能付き文化財』を抜き放てる構えのランを見ながら、嵯峨は机の上の『エロ記事』が売りの週刊誌に視線を投げたままで黙り込んだ。
「さすが『中佐殿』……当たり……盗聴器だよ。当然、あるわな……普通の役所の建物だもん。ここは……」
そう言うと嵯峨はランに視線を向ける。顔は満足げに笑っている。
「趣味がわりーぜ。『皇帝陛下』」
ランは多少聞こえよがしにそう言った。嵯峨は静かにうなづく。
「興味あるなら聞けば?俺は全部、その『裏』をかく。こっちの考えは分かんねえだろ?あんた等。肝心の神前の『秘密』は俺以外、知らねえーよ。バーカ」
『駄目人間』の『脳ピンク』が満足げに笑った。手には再びタバコがある。
「俺もそいつがどこまで重要な『秘密』かは知らねえんだ。でも、察しはつく、俺の頭には『脳味噌』が詰まってるから」
「その『秘密』を共有しているアタシはどうなんだ?」
タバコをふかす嵯峨にランはそう言った。
「お前さんの頭にも『脳味噌』が詰まってるよ。『不殺不傷』の誓いは『脳味噌』のある人間にしか立てられねえから……」
嵯峨はそう言ってにやりと笑って見せた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
人間の恋人なんていらない。
みらいつりびと
SF
お仕事恋愛長編小説です。全43話。
地方公務員の波野数多は内気で異性と話すのが苦手。
貯金して高性能AIを搭載した美少女アンドロイドを購入し、恋人にしようと思っている。
2千万円貯めて買った不良少女型アンドロイドは自由意志を持っていた。
彼女と付き合っているうちに、職場の後輩からも言い寄られて……。
お尻たたき収容所レポート
鞭尻
大衆娯楽
最低でも月に一度はお尻を叩かれないといけない「お尻たたき収容所」。
「お尻たたきのある生活」を望んで収容生となった紗良は、収容生活をレポートする記者としてお尻たたき願望と不安に揺れ動く日々を送る。
ぎりぎりあるかもしれない(?)日常系スパンキング小説です。
黄昏の国家
旅里 茂
SF
近未来である西暦2057年、日本国から世界で初めての、準政府組織オーイックスが誕生する。
全てにおいて、弱り切った現政府機関を持ち直し、時には時事介入する特殊な組織。
ブレーンの一人である高沢健司が、様々なプランを打ち立てて奮闘する。
乾坤一擲
響 恭也
SF
織田信長には片腕と頼む弟がいた。喜六郎秀隆である。事故死したはずの弟が目覚めたとき、この世にありえぬ知識も同時によみがえっていたのである。
これは兄弟二人が手を取り合って戦国の世を綱渡りのように歩いてゆく物語である。
思い付きのため不定期連載です。
EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。
※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。
「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.
あおっち
SF
海を埋め尽くすAXISの艦隊。
飽和攻撃が始まる台湾、金門県。
海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。
同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。
苫小牧市を守るシーラス防衛軍。
そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った!
SF大河小説の前章譚、第5部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる