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究極の『駄目人間』の巣
第22話 『すべて』を『失って』恐れを知らぬ若者が生まれた
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「それより……誠、一つ言っておくことがある」
先ほどまでのぼんやりとした表情から変わって、真剣なまなざしの嵯峨がそこにあった。
元々、嵯峨は46歳なのに、どう見ても外見は二十代半ばにしか見えない。そして長身で筋肉質な上に二枚目に見えないこともない。格好を付ければそれなりに決まるのである。
しかし、その死んだ瞳と机の上の『駄目人間』のアパートの畳の上を再現した散らかりようがすべてを台無しにしていた。
「なんだ?聞いてやる?」
もう頭の中で『煮るなり、焼くなり、勝手にしろ!』と啖呵を切っている誠は、高飛車にそう言い放った。
その態度を見てニヤリと笑った後、嵯峨は机に座ったまま頭を下げた。
「ごめんなさい。全部私がやりました。誠の『社会人人生』を『すべて』ぶっ壊したのは私です」
突然、謝罪されて、これまでの誠のどういう捨て台詞を残そうかと言う考えが吹き飛んだ。
ただ、『死』を恐れなくなった誠はもう目の前の『社会悪』に徹底的ダメージを与えることだけを考え始めた。
誠の目は完全に『据わっていた』。
「なんでやった……『駄目人間』。オメーだけじゃねーだろ。誰がやった……言ってみろ、『脳ピンク』」
ここまで来たらこのキャラで押そうと誠は強気で乱暴な口調を続けた。
嵯峨は顔を上げて自白を開始した。
「ここの全員だよ。おまえさんの志望した会社の担当者に、『特殊な部隊』の愉快な仲間達の『絆』を見せつけたわけ」
そう言い切る『駄目人間』の顔には、一切、反省の色は無かった。
頭を掻きながら嵯峨はめんどくさそうに、怒りの形相の誠から目を逸らした。
「まずさあ、就職活動のインターン五社。一社もメーカー系が入ってないから、これは潰しとこうってことで、これを全部潰した。電話やらネットでお前さんのあることないこと書き込んで人事関係者に曝したら、どんな担当者も手を引くわな普通。うちの隊員全員で手分けしてやった。全員共犯」
誠は思い出した。大学3年から始まる企業のインターン。担当者が次第に誠を汚物扱いするようになり、最終的にはすべてが立ち消えになったことを。
この時すでに、今朝受け取った誠の『特殊な部隊』への配属辞令の発令は決定していたわけである。
「人の人生をなんだと思ってんだ……」
誠は怒りに打ち震えながらランの手にした『殺人機能付き文化財』に目をやった。
ことと次第によっては、彼女の手から日本刀を奪い取ろう、そして、目の前の『社会悪』に正義の鉄槌を下す。そんなことも考えている誠を嵯峨はため息をつきながら見つめていた。
「物騒なことはしない方がいいよ。それより聞きなよ。そんなことしても、お前さんを欲しいという変わった会社があるの。2社役員面接まで行ったとこ、あったよね」
「あったよ……そこはどうやって潰した」
誠はドスの利いた声でそう言った。人生も青春もすべてこの『特殊な部隊』にめちゃくちゃにされてお先真っ暗なのである。もう誠には恐れるものなど何もなかった。
先ほどまでのぼんやりとした表情から変わって、真剣なまなざしの嵯峨がそこにあった。
元々、嵯峨は46歳なのに、どう見ても外見は二十代半ばにしか見えない。そして長身で筋肉質な上に二枚目に見えないこともない。格好を付ければそれなりに決まるのである。
しかし、その死んだ瞳と机の上の『駄目人間』のアパートの畳の上を再現した散らかりようがすべてを台無しにしていた。
「なんだ?聞いてやる?」
もう頭の中で『煮るなり、焼くなり、勝手にしろ!』と啖呵を切っている誠は、高飛車にそう言い放った。
その態度を見てニヤリと笑った後、嵯峨は机に座ったまま頭を下げた。
「ごめんなさい。全部私がやりました。誠の『社会人人生』を『すべて』ぶっ壊したのは私です」
突然、謝罪されて、これまでの誠のどういう捨て台詞を残そうかと言う考えが吹き飛んだ。
ただ、『死』を恐れなくなった誠はもう目の前の『社会悪』に徹底的ダメージを与えることだけを考え始めた。
誠の目は完全に『据わっていた』。
「なんでやった……『駄目人間』。オメーだけじゃねーだろ。誰がやった……言ってみろ、『脳ピンク』」
ここまで来たらこのキャラで押そうと誠は強気で乱暴な口調を続けた。
嵯峨は顔を上げて自白を開始した。
「ここの全員だよ。おまえさんの志望した会社の担当者に、『特殊な部隊』の愉快な仲間達の『絆』を見せつけたわけ」
そう言い切る『駄目人間』の顔には、一切、反省の色は無かった。
頭を掻きながら嵯峨はめんどくさそうに、怒りの形相の誠から目を逸らした。
「まずさあ、就職活動のインターン五社。一社もメーカー系が入ってないから、これは潰しとこうってことで、これを全部潰した。電話やらネットでお前さんのあることないこと書き込んで人事関係者に曝したら、どんな担当者も手を引くわな普通。うちの隊員全員で手分けしてやった。全員共犯」
誠は思い出した。大学3年から始まる企業のインターン。担当者が次第に誠を汚物扱いするようになり、最終的にはすべてが立ち消えになったことを。
この時すでに、今朝受け取った誠の『特殊な部隊』への配属辞令の発令は決定していたわけである。
「人の人生をなんだと思ってんだ……」
誠は怒りに打ち震えながらランの手にした『殺人機能付き文化財』に目をやった。
ことと次第によっては、彼女の手から日本刀を奪い取ろう、そして、目の前の『社会悪』に正義の鉄槌を下す。そんなことも考えている誠を嵯峨はため息をつきながら見つめていた。
「物騒なことはしない方がいいよ。それより聞きなよ。そんなことしても、お前さんを欲しいという変わった会社があるの。2社役員面接まで行ったとこ、あったよね」
「あったよ……そこはどうやって潰した」
誠はドスの利いた声でそう言った。人生も青春もすべてこの『特殊な部隊』にめちゃくちゃにされてお先真っ暗なのである。もう誠には恐れるものなど何もなかった。
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