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『特殊な部隊』の『特殊』な宴会
第170話 ほっとけない人々
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エレベータが開くとそこにはかなめ、アメリア、サラ、島田、そしてランが乗っていた。
「あのー。何してるんですか?」
少しばかり呆れて誠は口走っていた。
「アタシは……その、なんだ、何と言ったらいいか……『ペット』が変な気を起こさないかどうか確認しにきたんだ」
かなめは照れるようにうつむいて言葉を搾り出す。
「そう言う展開はアタシ達は遼州人である以上、『人口爆発阻止』の観点に基づいて指導しなきゃね」
アメリアそう言うとかなめがその顔を睨みつける。サラと島田はなぜか二人して原材料不明のジャーキーを食べながら缶ビールを飲んでいる。
「何を期待してるんですか!あんた等!」
誠は叫びたかった。『僕にもプライバシーがあるんです!』と。しかし、平和な世界に慣れた遼州人は意地でも『愛』の現場に乱入しなくては気が済まない習性があるので、誠も同じ状況なら現場に踏み込んでいただろうと思って、その言葉を静かに飲み込んだ。
「愛を語るにはテメーは未熟!まー『人類最強』のアタシを倒せたら、そん時は考えてやる」
さらりとランはそう言っていい顔をして笑った。
「クバルカ中佐。『人類最強』って言いますけど……どのくらい強いんですか?」
誠はランが口を開けば『人類最強』と言うのに飽きていた。どう見ても8歳幼女である。『死なない』と言うことを考慮に入れても『人類最強』を名乗るには無理があるんじゃないかと誠はようやくここで気づいた。
「おい、『ペット』」
かなめは誠に声をかけた。その声は恐怖に震えていた。
「誠ちゃん……死にたいの?」
アメリアはかわいそうな動物を見る視線で誠を見つめる。
「だって……確かに雰囲気は強そうですけど……ちっちゃいじゃないですか?クバルカ中佐……それに……」
そこまで言ったところで誠は腹部に激痛が走りしゃがみこんだ。
島田のボディーブローが誠の腹に炸裂していた。
「『偉大なる中佐殿』が自ら『人類最強』だとおっしゃってるんだ……察しろ!」
突然の島田の暴挙に誠は彼女であるサラを見上げた。彼女は誠の痛みを全く理解していないようで笑顔だった。
「そう言えばカウラ大丈夫?」
サラがはじめてカウラを気遣うと言う真っ当な発言をした。
「馬鹿じゃねえの?アイツのは演技だよ」
そう言うとかなめはラム酒瓶をラッパ飲みする。
「知ってたんですか?」
一口酒を飲み、ようやく落ち着いたかなめに誠は尋ねる。
「まあな。あのくらいで潰れるタマじゃねえよカウラは。それに姐御の教えも分かってるはずだ。どうせ人畜無害な世間話でもしてたんだろ」
「その割にはアタシや中佐を殆ど拉致みたいにして引っ張ってきたじゃない」
アメリアは冷やかすような調子でかなめの耳にささやいた。
「アメリア!外に出て真空遊泳でもして来い!もちろん生身でな!」
「助けて!誠ちゃん!」
機会があるとまとわりついてくると言うアメリアのネタも読めてきたが、一応上官であると言うところから黙って誠はアメリアに彼女に抱きつかれた。
「アタシの『ペット』の分際で……」
顔を上げればかなめが今にも襲い掛かってきそうな顔をして肩を震わせている。
「でもなあ、神前」
先ほどの鋭いボディーブローのことは忘れたというように島田が心配そうにつぶやいた。
「一応、俺の部下ってことになってる技術部の士官に情報通がいてな、そいつがオメエとベルガー大尉が変なことをしたというような画像をでっちあげて、ベルガー大尉のファンに配って回るという事態は想定できてるよな?」
島田はまた妙なことを言い始めた。
「そんな!盗撮なんて!」
誠は半分泣き声でそう叫んだ。
「それ、ありそうね。私もそれもらおうかしら。いいネタになるかもしれないし」
にやにや笑いながらアメリアが誠の弱みに付け込んでくる。
「安心しろ。奴には『前科』が有るからな。そんなことをしたら『殺人機能付き文化財』で斬首するって言ってある」
にこやかに、そしてかわいらしくつぶやかれたランの言葉が何となく恐ろしく感じて全員がその士官のこれから起きるだろう不幸を哀れんでいた。
「カウラちゃん大丈夫だった?」
ハンガーのある階で止まったエレベータが開くと、パーラが待ち構えていた。
「ああ、アイツはそう簡単にくたばらねえよ。パーラ、まだクエはあるか?」
そう言いながら、一向に誠から離れようとしないアメリアをかなめが引き剥がした。
「あのー。何してるんですか?」
少しばかり呆れて誠は口走っていた。
「アタシは……その、なんだ、何と言ったらいいか……『ペット』が変な気を起こさないかどうか確認しにきたんだ」
かなめは照れるようにうつむいて言葉を搾り出す。
「そう言う展開はアタシ達は遼州人である以上、『人口爆発阻止』の観点に基づいて指導しなきゃね」
アメリアそう言うとかなめがその顔を睨みつける。サラと島田はなぜか二人して原材料不明のジャーキーを食べながら缶ビールを飲んでいる。
「何を期待してるんですか!あんた等!」
誠は叫びたかった。『僕にもプライバシーがあるんです!』と。しかし、平和な世界に慣れた遼州人は意地でも『愛』の現場に乱入しなくては気が済まない習性があるので、誠も同じ状況なら現場に踏み込んでいただろうと思って、その言葉を静かに飲み込んだ。
「愛を語るにはテメーは未熟!まー『人類最強』のアタシを倒せたら、そん時は考えてやる」
さらりとランはそう言っていい顔をして笑った。
「クバルカ中佐。『人類最強』って言いますけど……どのくらい強いんですか?」
誠はランが口を開けば『人類最強』と言うのに飽きていた。どう見ても8歳幼女である。『死なない』と言うことを考慮に入れても『人類最強』を名乗るには無理があるんじゃないかと誠はようやくここで気づいた。
「おい、『ペット』」
かなめは誠に声をかけた。その声は恐怖に震えていた。
「誠ちゃん……死にたいの?」
アメリアはかわいそうな動物を見る視線で誠を見つめる。
「だって……確かに雰囲気は強そうですけど……ちっちゃいじゃないですか?クバルカ中佐……それに……」
そこまで言ったところで誠は腹部に激痛が走りしゃがみこんだ。
島田のボディーブローが誠の腹に炸裂していた。
「『偉大なる中佐殿』が自ら『人類最強』だとおっしゃってるんだ……察しろ!」
突然の島田の暴挙に誠は彼女であるサラを見上げた。彼女は誠の痛みを全く理解していないようで笑顔だった。
「そう言えばカウラ大丈夫?」
サラがはじめてカウラを気遣うと言う真っ当な発言をした。
「馬鹿じゃねえの?アイツのは演技だよ」
そう言うとかなめはラム酒瓶をラッパ飲みする。
「知ってたんですか?」
一口酒を飲み、ようやく落ち着いたかなめに誠は尋ねる。
「まあな。あのくらいで潰れるタマじゃねえよカウラは。それに姐御の教えも分かってるはずだ。どうせ人畜無害な世間話でもしてたんだろ」
「その割にはアタシや中佐を殆ど拉致みたいにして引っ張ってきたじゃない」
アメリアは冷やかすような調子でかなめの耳にささやいた。
「アメリア!外に出て真空遊泳でもして来い!もちろん生身でな!」
「助けて!誠ちゃん!」
機会があるとまとわりついてくると言うアメリアのネタも読めてきたが、一応上官であると言うところから黙って誠はアメリアに彼女に抱きつかれた。
「アタシの『ペット』の分際で……」
顔を上げればかなめが今にも襲い掛かってきそうな顔をして肩を震わせている。
「でもなあ、神前」
先ほどの鋭いボディーブローのことは忘れたというように島田が心配そうにつぶやいた。
「一応、俺の部下ってことになってる技術部の士官に情報通がいてな、そいつがオメエとベルガー大尉が変なことをしたというような画像をでっちあげて、ベルガー大尉のファンに配って回るという事態は想定できてるよな?」
島田はまた妙なことを言い始めた。
「そんな!盗撮なんて!」
誠は半分泣き声でそう叫んだ。
「それ、ありそうね。私もそれもらおうかしら。いいネタになるかもしれないし」
にやにや笑いながらアメリアが誠の弱みに付け込んでくる。
「安心しろ。奴には『前科』が有るからな。そんなことをしたら『殺人機能付き文化財』で斬首するって言ってある」
にこやかに、そしてかわいらしくつぶやかれたランの言葉が何となく恐ろしく感じて全員がその士官のこれから起きるだろう不幸を哀れんでいた。
「カウラちゃん大丈夫だった?」
ハンガーのある階で止まったエレベータが開くと、パーラが待ち構えていた。
「ああ、アイツはそう簡単にくたばらねえよ。パーラ、まだクエはあるか?」
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