上 下
124 / 187
誠の本当の『仲間達』

第124話 誠の相談に乗る気さくな幼女

しおりを挟む
 誠は展望ルームから出ると、緊張からくる胃のむかつきを抑えようとハンカチで口を押えながらながらエレベータルームにたどり着いた。

 彼はとりあえず自分の決断を伝えようと、『特殊な部隊』司法局実働部隊機動部隊長である『偉大なる中佐殿』ことクバルカ・ラン中佐の個室を目指した。

 エレベータが誠のいる階に到着して扉が開く。

 中には先客がいた。あの幼女だった。
 
 『偉大なる中佐殿』と『特殊な部隊』で呼ばれ尊敬を集めるカリスマ、クバルカ・ラン中佐その人だった。

「クバルカ中佐!」

 誠は嵯峨から告げられた『非情で危険な任務』について確かめようと小さなランに声をかけた。

「なんだ?神前。ここじゃあなんだから話なら食堂で聞くぞ」

 そう言ってランは誠に笑顔を向けた。相変わらずどう見ても8歳の女の子にしか見えない。

 誠は彼女の大きな目を見て、その脳内が完全に『体育会系鬼軍曹』そのものである事実に気づいた。

 誠は幼女にしては迫力のありすぎるランの態度におどおどしながら、エレベータに乗り込んだ。

「クバルカ中佐の執務室に行くんじゃないですか?」

 そう言ってみる誠だが、ランは否定するように首を振った。

「いいや、食堂に行く。アタシの部屋は神前には刺激が強いからな」

 エレベータは食堂のある共有フロアーに到着した。

 ランは小さな体で肩で風をきって歩く。誠もおずおずとその後ろに従った。

 廊下一面に『魚拓』や大物を釣り上げた記念写真が並ぶ。

「また今日も魚ですか?」

 体力自慢の誠も『点滴』と『魚料理』の繰り返しの日々には飽きてきた。

「アタシは慣れたぞ。旬じゃねえが『しらぽん』が酒に会う」

 ランはまた珍妙な発言をする。

「『しらぽん?』」

 不思議そうにランを眺める誠を見ながら、彼女は食堂に入った。

「『しらぽん』もしらねーのか?マダラの白子にポン酢をかけるんだ。だから『白子ポン酢』。略して『しらぽん』。伏見の辛口にこれがあれば……」

 どう見ても8歳女児の酒の肴の話を聞く現実に耐えられなかったので、誠は食堂の奥のテーブルに黙って腰かけた。

 ランは誠の正面に座って誠の顔を見ると静かにうなづいた。

「どうせアレだろ?近藤とか言う『クーデター首謀者』を隊長が処刑しろって言ったことだろ?」

 誠の正面に腰を掛けたランはそう言ってにっこり笑った。すごくかわいかった。

「神前、今、アタシに『萌え』たな」

 いつもの貫録のある幼女の顔でランはそう言ってにんまりと笑った。

「僕は……『ロリコン』じゃない……と思いますけど……」

 自分は『特殊』では無いと言い張りたい気持ちを我慢しながらそう言った。

 誠は自分の性癖せいへきが違法なモノでは無いと主張したかった。

 誠はランのかわいい姿に萌えていたので静かにうなづいた。

「無理もねーな。誰もが避けて通れない道なんだ。アタシをかわいいと思う。守りたいと身の程も知らずに勘違いする……罪だな、アタシは」

 ランはそう言って天井を見上げた。その瞳は遠い星でも見上げるような情感を込めたそれだった。

「自分で言いますか?普通」

 誠の言葉をランは完全に無視した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』

橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった その人との出会いは歓迎すべきものではなかった これは悲しい『出会い』の物語 『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる 法術装甲隊ダグフェロン 第二部  遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。 宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。 そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。 どうせろくな事が怒らないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。 そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。 しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。 この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。 これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。 そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。 そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。 SFお仕事ギャグロマン小説。

❤️レムールアーナ人の遺産❤️

apusuking
SF
 アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。  神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。  時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。  レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。  宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。  3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ

美少女アンドロイドが空から落ちてきたので家族になりました。

きのせ
SF
通学の途中で、空から落ちて来た美少女。彼女は、宇宙人に作られたアンドロイドだった。そんな彼女と一つ屋根の下で暮らすことになったから、さあ大変。様々な事件に巻き込まれていく事に。最悪のアンドロイド・バトルが開幕する

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

MS
SF
これは戦争に巻き込まれた少年が世界を変えるために戦う物語。 戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。 そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。 親友が起こしたキャスター強奪事件。 そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。 それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。 新たな歴史が始まる。 ************************************************ 小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。 投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。

呆然自失のアンドロイドドール

ショー・ケン
SF
そのアンドロイドは、いかにも人間らしくなく、~人形みたいね~といわれることもあった、それは記憶を取り戻せなかったから。 ある人間の記憶を持つアンドロイドが人間らしさを取り戻そうともがくものがたり。

ラスト・オブ・文豪

相澤愛美(@アイアイ)
SF
技術の進歩により、AIが小説を書く時代になった。芥川、夏目、川端モデルが開発され、電脳文豪(サイバライター)が小説を出版する様になる。小説好きの菊池栄太郎はある男と出会い、AI小説の危険性を聞き、AIとの小説対決をする事になる。

処理中です...