105 / 187
『駄目人間』の先読みの『一手』
第105話 初めての『機動兵器を所有する特殊部隊』らしいお仕事の予定
しおりを挟む
「おはようございます……」
誠は詰め所に定時少し前に顔を出した。
昨日は銃の訓練の後、ランにつかまって日没までランニングをさせられて体力の限界を超えた誠は、そのまま寮まで20キロの道のりを走って帰ることになった。
「元気じゃん。あれから何回吐いた」
ランはずっと高級外車から怒鳴っていただけなのでいつも通りである。
カウラは新人教育はランの仕事と割り切って、誠を一瞥しただけで書類の整理を続けている。
「本当にすいません。二回ほど……疲れると人間、吐きますね。僕以外も吐くと思いますよ、普通」
誠のその言葉についにかなめが噴き出した。それを聞くと誠は穴があったら入りたい気分だった。
「いいじゃん!面白ければ!まあ、アタシの実家の猫もよく吐いたぞ」
かなめは彼女らしく誠を『愛玩動物』扱いしていたずら好きなタレ目を見せながらつぶやいた。
「馬鹿話はそれくらいにしろ。来週の実働部隊の演習の概要だ。西園寺、神前。貴様等、ちゃんと読んでおけ」
カウラはそう言うと厚めの冊子を誠に手渡した。
「へいへい、カウラ。後で音声データで送ってくれや。アタシは活字は読めねえから」
やる気がないかなめは、カウラから演習概要説明の冊子を受け取った。そして、読むまでもないと執務机の上にそれを投げた。
突然の演習と言う言葉。
いかにも『機動兵器を所有する特殊部隊』風の言葉に誠は違和感を感じていた。
その言葉の重みと手にした書類の重みに誠の胃は緊張して酸っぱい液体の製造を始める。
「これが新入りの僕を迎えての初の部隊演習ですか……それにしても本当に『甲武国』の第三演習宙域使うんですか?」
『甲武国・第三演習宙域使用演習』
演習概要説明の冊子の表紙に誠はどうも納得できずにそうつぶやいた。
「それがどうした?」
誠のつぶやきにカウラが表情を変えずにそう聞き返してきた。それを見た誠は、まったくの無表情と言うものがどんな顔だか判るような気がしてきていた。
「あそこは前の大戦で甲武国軍の最終防衛ラインとして激戦が行われて、大量のデブリや機雷なんかが放置されているって話じゃないですか?そんな所でいきなり……」
「何だ神前?ビビってんのか?情けねえなあ」
ニヤニヤと笑いながらかなめはあおるようにそう言った。彼女が激戦を乗り越えてきたことは良くわかるが、その人を小馬鹿にするような物言いには、さすがの誠もカチンと来ていた。
「別にそんなんじゃ……。分かりました!早速これ読みます」
「役所の文章は読みにくいからな。とは言えそれが仕事だ、今日中に頭に叩き込んでおけ」
カウラはそう言うと自分の席に戻って、再び書類に目を通し始めた。
誠もまた難解な語句を駆使している演習概要の冊子を読み始めた。
誠は詰め所に定時少し前に顔を出した。
昨日は銃の訓練の後、ランにつかまって日没までランニングをさせられて体力の限界を超えた誠は、そのまま寮まで20キロの道のりを走って帰ることになった。
「元気じゃん。あれから何回吐いた」
ランはずっと高級外車から怒鳴っていただけなのでいつも通りである。
カウラは新人教育はランの仕事と割り切って、誠を一瞥しただけで書類の整理を続けている。
「本当にすいません。二回ほど……疲れると人間、吐きますね。僕以外も吐くと思いますよ、普通」
誠のその言葉についにかなめが噴き出した。それを聞くと誠は穴があったら入りたい気分だった。
「いいじゃん!面白ければ!まあ、アタシの実家の猫もよく吐いたぞ」
かなめは彼女らしく誠を『愛玩動物』扱いしていたずら好きなタレ目を見せながらつぶやいた。
「馬鹿話はそれくらいにしろ。来週の実働部隊の演習の概要だ。西園寺、神前。貴様等、ちゃんと読んでおけ」
カウラはそう言うと厚めの冊子を誠に手渡した。
「へいへい、カウラ。後で音声データで送ってくれや。アタシは活字は読めねえから」
やる気がないかなめは、カウラから演習概要説明の冊子を受け取った。そして、読むまでもないと執務机の上にそれを投げた。
突然の演習と言う言葉。
いかにも『機動兵器を所有する特殊部隊』風の言葉に誠は違和感を感じていた。
その言葉の重みと手にした書類の重みに誠の胃は緊張して酸っぱい液体の製造を始める。
「これが新入りの僕を迎えての初の部隊演習ですか……それにしても本当に『甲武国』の第三演習宙域使うんですか?」
『甲武国・第三演習宙域使用演習』
演習概要説明の冊子の表紙に誠はどうも納得できずにそうつぶやいた。
「それがどうした?」
誠のつぶやきにカウラが表情を変えずにそう聞き返してきた。それを見た誠は、まったくの無表情と言うものがどんな顔だか判るような気がしてきていた。
「あそこは前の大戦で甲武国軍の最終防衛ラインとして激戦が行われて、大量のデブリや機雷なんかが放置されているって話じゃないですか?そんな所でいきなり……」
「何だ神前?ビビってんのか?情けねえなあ」
ニヤニヤと笑いながらかなめはあおるようにそう言った。彼女が激戦を乗り越えてきたことは良くわかるが、その人を小馬鹿にするような物言いには、さすがの誠もカチンと来ていた。
「別にそんなんじゃ……。分かりました!早速これ読みます」
「役所の文章は読みにくいからな。とは言えそれが仕事だ、今日中に頭に叩き込んでおけ」
カウラはそう言うと自分の席に戻って、再び書類に目を通し始めた。
誠もまた難解な語句を駆使している演習概要の冊子を読み始めた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ブチギレ令嬢の復讐婚~親友と浮気され婚約破棄、その上結婚式場として予定していた場所まで提供してほしいと言われ💔
青の雀
恋愛
事実は小説より奇なり
まるで、私の作品のような話が、本当にありました
この話を書かずして、誰が書くの?という内容なので
3年ほど前に書いたような気がするけど、ちょっと編集で分からなくなってしまって
どっちにしても婚約破棄から玉の輿のスピンオフで書きます
余りにもリアルな話なので、異世界に舞台を置き換えて、ファンタジー仕立てで書くことにします
ほぼタイトル通りの内容です
9/18 遅ればせながら、誤字チェックしました
第1章 聖女領
第2章 聖女島
第3章 聖女国
第4章 平民の子を宿した聖女
番外編
番外編は、しおりの数を考慮して、スピンオフを書く予定
婚約破棄から聖女様、短編集
アンドロイドちゃんねる
kurobusi
SF
文明が滅ぶよりはるか前。
ある一人の人物によって生み出された 金属とプラスチックそして人の願望から構築された存在。
アンドロイドさんの使命はただ一つ。
【マスターに寄り添い最大の利益をもたらすこと】
そんなアンドロイドさん達が互いの通信機能を用いてマスター由来の惚気話を取り留めなく話したり
未だにマスターが見つからない機体同士で愚痴を言い合ったり
機体の不調を相談し合ったりする そんなお話です
裏信長記 (少しぐらい歴史に強くたって現実は厳しいんです)
ろくさん
SF
時は戦国の世、各地にいくさ、争い、 絶えざる世界
そんな荒廃しきった歴史の大きな流れの中に、1人の少年の姿があった。
平成の年号になって、平和にどっぷりと浸かりきった現在、まず見られることはないであろう少しユニークとすら言える格式?高い家に生まれた少年が、元服の儀で家宝の小刀を受け継ぐ。
そんな家宝である小刀が輝くとき、少年は不思議な世界に迷い込む!
誤字脱字等、多々あろうことかとおもいますが、暖かい目で見ていただけると幸いです。
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-
双葉 鳴|◉〻◉)
SF
Atlantis World Online。
そこは古代文明の後にできたファンタジー世界。
プレイヤーは古代文明の末裔を名乗るNPCと交友を測り、歴史に隠された謎を解き明かす使命を持っていた。
しかし多くのプレイヤーは目先のモンスター討伐に明け暮れ、謎は置き去りにされていた。
主人公、笹井裕次郎は定年を迎えたばかりのお爺ちゃん。
孫に誘われて参加したそのゲームで幼少時に嗜んだコミックの主人公を投影し、アキカゼ・ハヤテとして活動する。
その常識にとらわれない発想力、謎の行動力を遺憾なく発揮し、多くの先行プレイヤーが見落とした謎をバンバンと発掘していった。
多くのプレイヤー達に賞賛され、やがて有名プレイヤーとしてその知名度を上げていくことになる。
「|◉〻◉)有名は有名でも地雷という意味では?」
「君にだけは言われたくなかった」
ヘンテコで奇抜なプレイヤー、NPC多数!
圧倒的〝ほのぼの〟で送るMMO活劇、ここに開幕。
===========目録======================
1章:お爺ちゃんとVR 【1〜57話】
2章:お爺ちゃんとクラン 【58〜108話】
3章:お爺ちゃんと古代の導き【109〜238話】
4章:お爺ちゃんと生配信 【239話〜355話】
5章:お爺ちゃんと聖魔大戦 【356話〜497話】
====================================
2020.03.21_掲載
2020.05.24_100話達成
2020.09.29_200話達成
2021.02.19_300話達成
2021.11.05_400話達成
2022.06.25_完結!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる