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『力』を持つ者の定め 『特殊な部隊』の通過儀礼としての『事件』

第58話 『体育会系武装警察』における誠の『日常』

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 それから誠の『歓迎会』と称する5日連続の饗宴が、午後の五時が過ぎるたびに開かれた。

 『説教』、『土下座要求』、『強制飲酒』などの『体育会系縦社会の新人教育』が続いた。

 誠はこれらのいじめに、ひたすら胃から『酸っぱい液体』を口から吐き出すことで対抗した。

 そして、そのまま『男子下士官寮』と呼ばれている、初日に監禁された薄汚れた建物と本部を往復する日々を送っていた。

「眠い……」 

 誠は自分の機動部隊詰め所の机に座っていた。いずれやって来る、自分の専用の機体の『05式乙型』を想像しながら大きくあくびをした。

 もうすでに胃の中には吐くものは何もなかった。

 まだ実戦どころか、訓練さえ経験していないピカピカの誠の機体が思い浮かぶ。

 運ばれてくるときは、おそらく東和宇宙軍の紺色の一般色だろう。使える武器はクレーンのみだが。

「いつかは僕も……」

 誠の正面には二人の女性パイロットと言う『人格破綻者』の席があった。

「……ったくだらしのない奴だぜ。さっき吐いて胃が空になったか。あと二時間で昼飯だ。神前はアタシの『ペット』だから、当然注文係」 

 常に制服の上の皮のホルスターをぶら下げる女。西園寺かなめが残酷にそう言った。

 心配そうな顔を誠に向けていたカウラがかなめをにらんだ。

「西園寺!言いすぎだぞ!まず、注文する品を決めてからだ!私は親子丼だ」 

「へいへい、隊長さんは部下思いでいらっしゃること。アタシは天丼」 

 そう言うとかなめは不満げに机の上に足を乗っけた。椅子のきしむ音が響く。誠は自分がいる場所がわかって安心すると、そのまま上体を起こした。

 誠が見回す視線の先では、まず、ランが巨大な『機動部隊長』の机で難しそうな顔をして将棋盤を見つめているのが見えた。

 そのたるみ切った光景は、これが遼州星系を代表する『特殊な部隊』のそれだった。

 せめて自分くらいは……そういう思いが誠を奮い立たせて、痛む首筋をさすりながらソファーから起き上がらせた。

「大丈夫か?」 

 心配そうにカウラがよろける誠を支える。

「なんだ、心配することないじゃん。それにしても暑いなあー……こういう時、『愛玩動物』なら何かしようって思うんじゃないのかなあ……気が利かねえなあ」 

 暑さで不機嫌なかなめが大声を上げる。

「西園寺!貴様!神前だって気づかないだけだ!きっと本心では『先輩の力になりたい』と思っているはずだ!」 

 カウラは誠が『奴隷根性』に目覚めたことを前提に話をしている。誠はもう誰もあてにしないことに決めて大きなため息をついた。
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