10 / 137
駄目人間の巣
第10話 取ってつけたような謝罪
しおりを挟む
嵯峨は雑誌の入った袖机を未練がましい目で何度も見た後、誠に向き直った。
「それより……誠、一つ言っておくことがある」
いつも母に向ける真剣な表情の嵯峨がそこにあった。
元々嵯峨はアラフィフなのに、見た目は二十代半ば、そして長身で筋肉質な上に二枚目に見えないこともない。格好を付ければそれなりに決まるのである。
「なんですか?」
もう辞める気満々の誠は高飛車にそう言い放った。
その態度にニヤリと笑った後、嵯峨は机に座ったまま頭を下げた。
「ごめんなさい。全部私がやりました。神前の人生をぶっ壊したのは私です。東和宇宙軍のパイロットコースもごり押しで通しました。ですから、ごめんなさい」
突然謝罪されて、これまでの誠のどういう捨て台詞を残そうかと言う考えが吹き飛んだ。
「なんでやった……オメーだけじゃねーだろ。誰がやった……言ってみろ、中年」
ここまで来たらこのキャラで押そうと誠は強気で乱暴な口調で詰問した。嵯峨は謝ったらもう済んだとでもいうように顔を上げ開き直った調子で椅子の背もたれに体を預けた。
「ここの全員。まずさあ、就職活動のインターン5社。1社もメーカーが入ってないから、これは潰し解こうってことで、これを全部潰した。希望者募って電話やらネットでお前さんのあることないこと書き込んで人事関係者に曝したら、どんな担当者も手を引くわな普通」
誠は思い出した。大学3年から始まる企業のインターン。担当者が次第に誠を汚物扱いするようになり、最終的にはすべてが立ち消えになった。
「そんなことしても、お前さんを欲しいという酔狂な会社があるの。2社役員面接まで行ったとこ、あったよね。そこにトドメを刺したのが、隣の人格者の幼女」
そう言って嵯峨はランを指さす。
ランは急に表情を消した顔で誠を見上げた。誠は怒りに震えながら、かわいらしいランをにらみつける。
「トドメを刺したのはアタシだ。オメーが幼女にしか欲情しないド変態で、その嗜好を実行したことを演技と妄想でしゃべったら、落ちるわな、ふつー。あと、どちらも成果主義が売りの会社だから英語できなきゃ管理職になれねーぞ。オメーの語学力じゃ無理。定年まで係長か主任で終わるのは嫌だろ?だから潰した。思いやり溢れてるだろ?アタシ。『魔法少女』としてはそう言う客層をキープしておく必要があるわけだ」
そう言ってニヤリと笑う。
『こいつ等全員悪党だ!そして!『魔法少女』ってなんだ!』
誠の心の中はそんな思いで満たされた。
「もし、俺や中佐殿のお眼鏡にかなう会社だったら、別に俺達は悪さしたりしないよ。まあ、うちでもお前の『才能』が貴重だから。お前さんのこと待ってたここの全員が押しかけて、お前の近所が大変なことになるかもしれないけど」
そこまで言って嵯峨は顔を上げ誠を見てニヤリと笑う。
「待ってたんですか……僕を……」
誠は誰かに必要とされているという言葉に少し心を動かされた。
「誤解するなよ。お前にそんな可能性がある。その『才能』で自分達を危機を救ってくれるかもしれない。そう思っただけだ。俺達はお前に納得できる人生を送ってほしいの。でも、それを選ぶのは神前誠。お前だ。決めるのはお前。いいじゃん自分の人生だもの、選択肢があるなら選びなよ」
嵯峨が言いたいのはここに残るかどうか選べという事らしい。
「今……決めなきゃいけないんですか?」
誠はおずおずとそう言った。
「別に、期限なんて野暮なもんは切らないよ。悩んで考えて結論という奴を出しな。それまでうちの所属と言う事で東和宇宙軍に話は付けてある」
静かにそう言うと嵯峨はテーブルの上に置かれていた見慣れない銘柄のタバコを取り出して火をつけた。
「それじゃあとりあえず『特殊な部隊』の面々に挨拶をしないとね。ここの部屋の真下に『運航部』っていう変な髪の色した姉ちゃん達がいるから、そこに挨拶に行って」
嵯峨はそう言うと投げやりに手を振って誠に部屋から出ていくように促した。
「では、失礼します」
誠はとりあえず逃げ出すことは後にでもできると思いなおしてその異常な『隊長室』を後にした。
「それより……誠、一つ言っておくことがある」
いつも母に向ける真剣な表情の嵯峨がそこにあった。
元々嵯峨はアラフィフなのに、見た目は二十代半ば、そして長身で筋肉質な上に二枚目に見えないこともない。格好を付ければそれなりに決まるのである。
「なんですか?」
もう辞める気満々の誠は高飛車にそう言い放った。
その態度にニヤリと笑った後、嵯峨は机に座ったまま頭を下げた。
「ごめんなさい。全部私がやりました。神前の人生をぶっ壊したのは私です。東和宇宙軍のパイロットコースもごり押しで通しました。ですから、ごめんなさい」
突然謝罪されて、これまでの誠のどういう捨て台詞を残そうかと言う考えが吹き飛んだ。
「なんでやった……オメーだけじゃねーだろ。誰がやった……言ってみろ、中年」
ここまで来たらこのキャラで押そうと誠は強気で乱暴な口調で詰問した。嵯峨は謝ったらもう済んだとでもいうように顔を上げ開き直った調子で椅子の背もたれに体を預けた。
「ここの全員。まずさあ、就職活動のインターン5社。1社もメーカーが入ってないから、これは潰し解こうってことで、これを全部潰した。希望者募って電話やらネットでお前さんのあることないこと書き込んで人事関係者に曝したら、どんな担当者も手を引くわな普通」
誠は思い出した。大学3年から始まる企業のインターン。担当者が次第に誠を汚物扱いするようになり、最終的にはすべてが立ち消えになった。
「そんなことしても、お前さんを欲しいという酔狂な会社があるの。2社役員面接まで行ったとこ、あったよね。そこにトドメを刺したのが、隣の人格者の幼女」
そう言って嵯峨はランを指さす。
ランは急に表情を消した顔で誠を見上げた。誠は怒りに震えながら、かわいらしいランをにらみつける。
「トドメを刺したのはアタシだ。オメーが幼女にしか欲情しないド変態で、その嗜好を実行したことを演技と妄想でしゃべったら、落ちるわな、ふつー。あと、どちらも成果主義が売りの会社だから英語できなきゃ管理職になれねーぞ。オメーの語学力じゃ無理。定年まで係長か主任で終わるのは嫌だろ?だから潰した。思いやり溢れてるだろ?アタシ。『魔法少女』としてはそう言う客層をキープしておく必要があるわけだ」
そう言ってニヤリと笑う。
『こいつ等全員悪党だ!そして!『魔法少女』ってなんだ!』
誠の心の中はそんな思いで満たされた。
「もし、俺や中佐殿のお眼鏡にかなう会社だったら、別に俺達は悪さしたりしないよ。まあ、うちでもお前の『才能』が貴重だから。お前さんのこと待ってたここの全員が押しかけて、お前の近所が大変なことになるかもしれないけど」
そこまで言って嵯峨は顔を上げ誠を見てニヤリと笑う。
「待ってたんですか……僕を……」
誠は誰かに必要とされているという言葉に少し心を動かされた。
「誤解するなよ。お前にそんな可能性がある。その『才能』で自分達を危機を救ってくれるかもしれない。そう思っただけだ。俺達はお前に納得できる人生を送ってほしいの。でも、それを選ぶのは神前誠。お前だ。決めるのはお前。いいじゃん自分の人生だもの、選択肢があるなら選びなよ」
嵯峨が言いたいのはここに残るかどうか選べという事らしい。
「今……決めなきゃいけないんですか?」
誠はおずおずとそう言った。
「別に、期限なんて野暮なもんは切らないよ。悩んで考えて結論という奴を出しな。それまでうちの所属と言う事で東和宇宙軍に話は付けてある」
静かにそう言うと嵯峨はテーブルの上に置かれていた見慣れない銘柄のタバコを取り出して火をつけた。
「それじゃあとりあえず『特殊な部隊』の面々に挨拶をしないとね。ここの部屋の真下に『運航部』っていう変な髪の色した姉ちゃん達がいるから、そこに挨拶に行って」
嵯峨はそう言うと投げやりに手を振って誠に部屋から出ていくように促した。
「では、失礼します」
誠はとりあえず逃げ出すことは後にでもできると思いなおしてその異常な『隊長室』を後にした。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第二部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。
宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。
そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。
どうせろくな事が怒らないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。
そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。
しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。
この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。
これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。
そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。
そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。
SFお仕事ギャグロマン小説。
グラッジブレイカー! ~ポンコツアンドロイド、時々かたゆでたまご~
尾野 灯
SF
人類がアインシュタインをペテンにかける方法を知ってから数世紀、地球から一番近い恒星への進出により、新しい時代が幕を開ける……はずだった。
だが、無謀な計画が生み出したのは、数千万の棄民と植民星系の独立戦争だった。
ケンタウリ星系の独立戦争が敗北に終ってから十三年、荒廃したコロニーケンタウルスⅢを根城に、それでもしぶとく生き残った人間たち。
そんな彼らの一人、かつてのエースパイロットケント・マツオカは、ひょんなことから手に入れた、高性能だがポンコツな相棒AIノエルと共に、今日も借金返済のためにコツコツと働いていた。
そんな彼らのもとに、かつての上官から旧ケンタウリ星系軍の秘密兵器の奪還を依頼される。高額な報酬に釣られ、仕事を受けたケントだったが……。
懐かしくて一周回って新しいかもしれない、スペースオペラ第一弾!
トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?”
ajakaty
SF
香坂奏多(こうさかかなた)は、地方理系大学を卒業後、中堅企業に就職して2年目の24歳。休日の趣味といえば、読書に“ぼっちキャンプ”を少々嗜む程度の地味な男....
そんな....多少の悲しい生い立ちを除けば、ごく普通の青年が遭遇した超自然現象「次元連結」
同窓会に出席した帰り道、天文学的確率で発生した「次元連結」に遭遇した彼は....“平行世界の地球”に迷い込む!
そこは剣と魔法、数多の異種族、異形の魔物が溢れる、奏多が居た世界とは“異なる世界線をたどった”地球だった....
“次元間の移動”で発現した空間転移スキル「トランスファー」と....
“神様(=次元の管理者)”が、お供に付けてくれたフクロウ型改造モバイルフォン『異次元生存サポートガジェット』のミネルヴァを相棒に....
彼は異次元世界を駆ける...自身の生存と帰還を懸けて!!!
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
虐げられ令嬢の最後のチャンス〜今度こそ幸せになりたい
みおな
恋愛
何度生まれ変わっても、私の未来には死しかない。
死んで異世界転生したら、旦那に虐げられる侯爵夫人だった。
死んだ後、再び転生を果たしたら、今度は親に虐げられる伯爵令嬢だった。
三度目は、婚約者に婚約破棄された挙句に国外追放され夜盗に殺される公爵令嬢。
四度目は、聖女だと偽ったと冤罪をかけられ処刑される平民。
さすがにもう許せないと神様に猛抗議しました。
こんな結末しかない転生なら、もう転生しなくていいとまで言いました。
こんな転生なら、いっそ亀の方が何倍もいいくらいです。
私の怒りに、神様は言いました。
次こそは誰にも虐げられない未来を、とー
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる