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第四章 『特殊な部隊』へと向かう
第23話 遠方の基地
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「豊川ですか?あそこって……住宅街しかないじゃないですか?そんなところに基地なんて……」
車は都心を出る直前だった。車の窓の外に中央環状線の外側に林立する超高層ビルを眺めながら誠はそう言った。
「まあ、国鉄と私鉄。それで一時間前後。いーベットタウンで、開発が進んでるのは事実だがよー。あそこにゃあ、菱川重工の工場があってな」
独り言のように静かにランはつぶやいた。
「菱川重工……東和では航空機や宇宙船建造の四大メーカーですよね」
今のところ話は世間話のようなので、誠は相変わらず外の雑居ビルばかりが並ぶ、国道の沿道を眺めていた。
「まーな。あれだぜ、あそこ、シュトルム・パンツァーも作っててね。先月、採用が決定した東和海軍向けの水中対応型局地シュトルム・パンツァーの『海―07式』を開発したのがあそこだ。アタシも海軍の知り合いに呼ばれて、テストに何回か立ち会ったが……悪い機体じゃ無かったぞ、あれはあれで……」
ランはそう言いうとまた黙り込んだ。
また時間が流れ、誠は窓の外のビルの大きさが次第に小さくなっていく様を眺めていた。
「話は戻るが、行先は豊川。菱川重工豊川工場だ」
今度はランが沈黙に耐えかねてそう言った。
「菱川重工豊川工場……工場に基地……?」
さすがに話が気になってきた誠は車を運転するランの後ろ姿に目を向けた。
「菱川重工豊川……知ってんだろ?オメー野球やってたらしいじゃねーか。そっちのほうじゃ……」
ランは運転を続けながらそう言った。
「知ってますよ、菱川重工豊川。社会人野球の名門じゃないですか。都市対抗優勝43回、東和社会人野球大会優勝25回。毎年のようにプロに選手を送り込んでいた東東和のの古豪ですから。最近は……野球の話はあんまり話は聞かないですけど」
野球経験者なので、誠も当然その程度の知識があった。誠が子供のころはよく話が出た強豪チーム。プロ野球選手を次々と輩出した名門野球チームを持つ重工業工場それが菱川重工豊川だった。
「なるほどねえ……最近は活躍がいまいち……まあそんなもんだろうよ」
少し皮肉めいた口調でランはそう言った。
「クバルカ中佐、野球は?」
「まあ……社会常識程度……そんなもんだ」
少し笑みを浮かべながらランはそう言った。
再び沈黙が流れる。
「さっき、アタシが言ったのは、今の菱川重工の豊川工場ってのがな……」
赤信号で車を停めたランはそう言って一度誠に向け振り返り、再び前を向いた。
「今の豊川工場?」
ランの言葉に単純に疑問に思った誠はそう返す。
「ああ、あそこはな、四百年前のここ東和の建国の際に国策で発足した『豊川砲兵工廠』が元になってる工場だ。そいつが菱川に払い下げられて、まあ……今に至ってるわけだが……」
信号が変わる。ランは静かに車を発進させる。
「まあ、要は古い工場なんだわ。そもそも、内陸部にあんな馬鹿でかい敷地持っててなんの意味があるんだよ。主要取扱品の製造は今じゃ臨海部の新設工場に移転済み。まあ、古いって言っても持ってる設備を遊ばせとくってのもなんだから、まあ……今のあそこの主力はでかい金属の下処理だな……他にも色々あるらしいが……まあたまにあそこの工場の偉いさんの接待とかで飲んだ席で、連中自慢気に話すんだが……アタシ、そう言うの興味ねーから」
ランはそこまで言うと大きくため息をつき、ハンドルを握りなおす。
「まあ、工場としては終わってるわけだ。遊休地もたんまりある……てんで、アタシ等」
誠はランの表情をうかがおうとバックミラーを見た。
「アタシ等の部隊は、その菱川重工豊川工場の敷地の中にあるんだわ。まー広さは結構なもんで……あんだけでけー場所、ほっぽっとくなんて、潰れるんじゃねーの?菱川グループ」
あっさりとそう言う誠に誠はただ呆れるだけだった。
「あと付け足しとくと、シュトルム・パンツァーの開発とかもやってる。まあそれも遠からず他の新鋭設備のある所に移るだろうな……菱川の連中も無能じゃねーだろうから」
再び車が停まる。
「渋滞だ……畜生!」
ランのいら立つような言葉。ただ、その言葉は誠には届かなかった。
「豊川……」
誠はまだ見ぬ新たな土地の名前をかみしめるように口にした。
車は都心を出る直前だった。車の窓の外に中央環状線の外側に林立する超高層ビルを眺めながら誠はそう言った。
「まあ、国鉄と私鉄。それで一時間前後。いーベットタウンで、開発が進んでるのは事実だがよー。あそこにゃあ、菱川重工の工場があってな」
独り言のように静かにランはつぶやいた。
「菱川重工……東和では航空機や宇宙船建造の四大メーカーですよね」
今のところ話は世間話のようなので、誠は相変わらず外の雑居ビルばかりが並ぶ、国道の沿道を眺めていた。
「まーな。あれだぜ、あそこ、シュトルム・パンツァーも作っててね。先月、採用が決定した東和海軍向けの水中対応型局地シュトルム・パンツァーの『海―07式』を開発したのがあそこだ。アタシも海軍の知り合いに呼ばれて、テストに何回か立ち会ったが……悪い機体じゃ無かったぞ、あれはあれで……」
ランはそう言いうとまた黙り込んだ。
また時間が流れ、誠は窓の外のビルの大きさが次第に小さくなっていく様を眺めていた。
「話は戻るが、行先は豊川。菱川重工豊川工場だ」
今度はランが沈黙に耐えかねてそう言った。
「菱川重工豊川工場……工場に基地……?」
さすがに話が気になってきた誠は車を運転するランの後ろ姿に目を向けた。
「菱川重工豊川……知ってんだろ?オメー野球やってたらしいじゃねーか。そっちのほうじゃ……」
ランは運転を続けながらそう言った。
「知ってますよ、菱川重工豊川。社会人野球の名門じゃないですか。都市対抗優勝43回、東和社会人野球大会優勝25回。毎年のようにプロに選手を送り込んでいた東東和のの古豪ですから。最近は……野球の話はあんまり話は聞かないですけど」
野球経験者なので、誠も当然その程度の知識があった。誠が子供のころはよく話が出た強豪チーム。プロ野球選手を次々と輩出した名門野球チームを持つ重工業工場それが菱川重工豊川だった。
「なるほどねえ……最近は活躍がいまいち……まあそんなもんだろうよ」
少し皮肉めいた口調でランはそう言った。
「クバルカ中佐、野球は?」
「まあ……社会常識程度……そんなもんだ」
少し笑みを浮かべながらランはそう言った。
再び沈黙が流れる。
「さっき、アタシが言ったのは、今の菱川重工の豊川工場ってのがな……」
赤信号で車を停めたランはそう言って一度誠に向け振り返り、再び前を向いた。
「今の豊川工場?」
ランの言葉に単純に疑問に思った誠はそう返す。
「ああ、あそこはな、四百年前のここ東和の建国の際に国策で発足した『豊川砲兵工廠』が元になってる工場だ。そいつが菱川に払い下げられて、まあ……今に至ってるわけだが……」
信号が変わる。ランは静かに車を発進させる。
「まあ、要は古い工場なんだわ。そもそも、内陸部にあんな馬鹿でかい敷地持っててなんの意味があるんだよ。主要取扱品の製造は今じゃ臨海部の新設工場に移転済み。まあ、古いって言っても持ってる設備を遊ばせとくってのもなんだから、まあ……今のあそこの主力はでかい金属の下処理だな……他にも色々あるらしいが……まあたまにあそこの工場の偉いさんの接待とかで飲んだ席で、連中自慢気に話すんだが……アタシ、そう言うの興味ねーから」
ランはそこまで言うと大きくため息をつき、ハンドルを握りなおす。
「まあ、工場としては終わってるわけだ。遊休地もたんまりある……てんで、アタシ等」
誠はランの表情をうかがおうとバックミラーを見た。
「アタシ等の部隊は、その菱川重工豊川工場の敷地の中にあるんだわ。まー広さは結構なもんで……あんだけでけー場所、ほっぽっとくなんて、潰れるんじゃねーの?菱川グループ」
あっさりとそう言う誠に誠はただ呆れるだけだった。
「あと付け足しとくと、シュトルム・パンツァーの開発とかもやってる。まあそれも遠からず他の新鋭設備のある所に移るだろうな……菱川の連中も無能じゃねーだろうから」
再び車が停まる。
「渋滞だ……畜生!」
ランのいら立つような言葉。ただ、その言葉は誠には届かなかった。
「豊川……」
誠はまだ見ぬ新たな土地の名前をかみしめるように口にした。
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