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アイディア
第34話 コスチューム
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「ご馳走様。それじゃあ僕は……」
誠が立ち上がるのを見るとアメリアも手を合わせる。
「ご馳走様です。おいしかったわね。それじゃあ、私も誠ちゃんの部屋に……」
「なんで貴様が行くんだ?」
カウラの言葉にただ黙って笑みを浮かべてアメリアが立ち上がる。その様子を見てそれまで薫の動きに目を向けていたかなめも思い出したような笑みを浮かべる。
「じゃあアタシもご馳走様で」
「貴様等は何を考えてるんだ?つまらないことなら張り倒すからな」
誠達の行き先が彼の部屋であることを悟ったカウラが見上げてくるのをかなめは楽しそうに見つめる。
「ちょっと時間がねえんだよな、のんびりと説明しているような」
そう言って立ち上がろうとするかなめを追おうとするカウラを薫が抑えた。
「なにか三人にも考えがあるんじゃないの。待ったほうが良いわよ、誠達が教えてくれるまでは」
カウラは薫の言葉に仕方がないというように腰掛けて誠達を見送った。
「なあ、悟られてるんじゃねえのか?」
階段を先頭で歩いていたかなめが振り向く。
「そんなの決まってるじゃないの。誠ちゃんが画材を買ったことはカウラちゃんも知ってるのよ。問題はその絵のインパクトよ」
そう言ってアメリアは誠の肩を叩いた。
「なんでお二人がついてくるんですか?」
さすがの誠も自分の部屋のドアを前にして振り返って二人の上官を見据える。
「それは助言をしようと思って」
「だよな」
あっさりと答えるアメリアとかなめに誠はため息をついた。おそらく邪魔にしかならないのはわかっているが、何を言っても二人には無駄なのはわかっているので誠はあきらめて自分の部屋のドアを開いた。
「なんだ変な匂いだな、おい」
「油性塗料の匂いよ。何に使ったのかしら」
部屋を眺めている二人を置いて誠は買ってきた画材が置いてある自分の机を見つめた。とりあえず誠は椅子においてあった画材を机に並べる。
「あ!こんなところにフィギュアの原型が」
幸いなことにアメリアは以前誠が作ったフィギュアの原型に目をやっている。誠はその隙にと買って来た並べた画材見回すと紙を取り出す。
「しかし……凄い量の漫画だな」
本棚を見つめているかなめを無視して机に紙を固定する。誠は昔から漫画を書いていたので机はそれに向いたつくりとなっていた。手元でなく漫画にかなめの視線が向いているのが誠の気を楽にした。
そして紙を見て、しばらく誠は考えた。
相手はカウラである。媚を売ったポーズなら明らかに軽蔑したような視線が飛んでくるのは間違いが無かった。胸を増量したいところだが、それも結果は同じに決まっていた。
目をつぶって考えている誠の肩をアメリアが叩く。
「やっぱりすぐに煮詰まってるわね」
そんな言葉に自然と誠はうなづいていた。それまで本棚を見ていたかなめもうれしそうに誠に視線を向けてくる。
「まあ、アタシ等の方が奴との付き合いが長いからな」
「そうよね。あの娘が何を期待しているかは誠ちゃんより私達のほうが良く知っているはずよね」
自信満々に答えるアメリアに嫌な予感がしていた。完全に冗談を連発するときの二人の表情がそこにある。そしてそれに突っ込んでいるだけで描く気がうせるのは避けたかった。
「じゃあ、どういうのが良いんですか?」
誠は恐る恐るにんまりと笑う二人の女性士官に声をかけた。
「まず、ああ見えてカウラは自分がお堅いと言われるのが嫌いなんだぜ。知ってるか?」
「ええ、まあ」
はじめのかなめの一言は誠も知っているきわめて常識的な一言だった。アメリアは例外としてもそれなりになじんだ日常を送っている人造人間達に憧れを抱いているように見えることもある。特にサラのなじんだ様子には時々羨望のまなざしを向けるカウラを見ることができた。
「それに衣装もあんまり薄着のものは駄目よ。あの娘のコンプレックスは知ってるでしょ?」
アメリアの指摘。たしかに平らな胸を常にかなめにいじられているのを見ても、誠も最初から水着姿などは避けるつもりでいた。
「あと、露出が多いのも避けるべきだな。あいつはああ見えて恥ずかしがり屋でもあるからな。太ももや腹が露出しているビキニアーマーの女剣士とかは避けろよ」
そんな的確に指摘していくかなめを誠は真顔で覗き見た。二年以上の相棒として付き合ってきただけにかなめの言葉には重みを感じた。確かに先日海に行ったときも肌をあまり晒すような水着は着ていなかった。ここで誠はファンタジー系のイラストはあきらめることにした。
「それならお二人は何が……」
『メイド服』
二人の声があわさって響く。それと同時に誠は耐え難い疲労感に襲われた。
「かなめちゃんまねしないでよね!それにメイド服なら私がプレゼントしたじゃない」
「それを着せてそれを参考にして描けばいいじゃねえか。それに神前……」
ニヤニヤと笑いながら近づいてくるかなめに誠は苦笑いで答える。かなめのうれしそうな表情に誠は思わず身構える。
「考えにはあったんだろ?メイドコスのカウラに萌えーとか」
心理を読むのはさすが嵯峨の姪である。誠は思わず頭を掻いていた。
「ええ、まあ一応」
そんな誠の言葉にかなめは満足げにうなづく。だが突然真剣な、いつも漫画を読むときの厳しい表情になったアメリアがいつもどおりに誠に声をかける。
「まあ冗談はさておいて、何が良いかしら」
「冗談だったのか?」
かなめの言葉。彼女が本気だったのは間違いないが、それにアメリアは大きなため息で返す。そんな彼女をかなめはにらみつける。いつもどおりの光景がそこにあった。
「当たり前でしょ?メイド服は私のプレゼントだけで十分。他のバリエーションも考えなきゃ」
自信満々にアメリアは答える。かなめは不満げに彼女を見上げた。
「そこまで言うんだ、何か案はあるのか?」
もはや絵を描くのが誠だということを忘れたかのような二人の言動に突っ込む気持ちも萎えた誠は椅子に座ってじっと二人を見上げていた。
「一応案はあるんだけど……誠ちゃんも少しはこういうことを考えてもらいたい時期だから」
アメリアは神妙な顔でそう言った。
「何の時期なんだよ!」
かなめが突っ込む。だが、アメリアのうれしそうな瞳に誠は知恵を絞らざるを得なかった。
「そうですね……野球のユニフォーム姿とか」
誠はとりあえずそう言ってみた。アンダースローの精密コントロールのピッチャーとして草野球リーグでのカウラの評判は高かった。俊足好打で知られているアメリアと外野の要で一番バッターを務める島田を別格とすれば注目度は左の技巧派として知られる誠の次に評価が高い。
「なるほどねえ……」
サイボーグであるため大の野球好きでありながらプレーができずに監督として参加しているかなめが大きくうなづいた。
「でも、意外と個性が出ないわよね。ユニフォームと背番号に目が行くだろうし」
アメリアの指摘は的確だった。アンダースローで司法局実働部隊のユニフォームを着て背番号が18。そうなればカウラとはすぐわかるがそれゆえに面白みにかけると誠も思っていた。
「それにカウラちゃんのきれいな緑の髪が帽子で見えないじゃない。それは却下」
そんな一言に誠は少しへこむ。
「そう言えば去年の時代行列の時の写真があっただろ?あれを使うってのはどうだ?」
かなめはそう言って手を打った。豊川八幡宮での節分のイベントに去年から加わった時代行列。源平絵巻を再現した武者行列の担当が司法局実働部隊だった。鎧兜に身を固めたカウラやかなめの姿は誠の徒歩武者向けの鎧を発注するときに見せてもらっていた。凛とした女武者姿の二人。明らかに時代を間違って当世具足を身につけているアメリアの姿に爆笑したことも思い出された。
「あの娘、馬に乗れないわよね。大鎧で歩いているところを描く訳?それとも無理して馬に乗せてみせる?」
アメリアの言葉にまた誠の予定していたデザインが却下された。鉢巻に太刀を構えたカウラの構図が浮かんだだけに誠の落ち込みはさらにひどくなる。
「あとねえ……なんだろうな。パイロットスーツ姿は胸が……。巫女さんなんて言うのはちょっとあいつとは違う感じだろ?」
「巫女さん萌えなんだ、かなめちゃん」
アメリアがかなめの言葉を聞くと満面の笑みを浮かべる。
「ちげえよ馬鹿!」
ののしりあう二人を置いて誠は頭をひねる。だが、どちらかといえば最近はアメリアの企画を絵にすることが多いこともあってなかなか形になる姿が想像できずにいた。
かなめも首をひねって考えている。隣で余裕の表情のアメリアを見れば、いつものかなめならすぐにむきになって手が出るところだが、いい案をひねり出そうとして思案にくれていた。
「黙ってねえで考えろ」
誠にそう言うかなめだが案が思いつきそうに無いのはすぐにわかる。
「じゃあ……甲武風に十二単とか水干直垂とか……駄目ですね。わかりました」
闇雲に言ってみても、ただアメリアが首を横に振るばかりだった。かなめはアメリアの余裕の表情が気に入らないのか口元を引きつらせる。
「もらってうれしいイラストじゃないと。驚いて終わりの一発芸的なものはすべて不可。当たり前の話じゃない」
「白拍子や舞妓さんやおいらん道中も不可ということだな」
かなめの発想にアメリアは呆れたような顔をした後にうなづく。それを聞くとかなめはそのままどっかりと部屋の中央に座り込んだ。部屋の天井の木の板を見上げてかなめはうなりながら考える。
「西洋甲冑……くの一……アラビアンナイト……全部駄目だよな」
アメリアを見上げるかなめ。アメリアは無情にも首を横に振る。
「ヒント……出す?」
「いいです」
誠は完全にからかうような調子のアメリアにそう言うと紙と向かい合う。だがこういう時のアメリアは妥協という言葉を知らない。誠はペンを口の周りで動かしながら考え続ける。カウラの性格を踏まえたうえで彼女が喜びそうなシチュエーションのワンカットを考えてみる。基本的に日常とかけ離れたものは呆れて終わりになる。それは誠にもわかった。
「いっそのこと礼服で良いんじゃないですか?東和陸軍の」
やけになった誠の一言にアメリアが肩を叩いた。
「そうね、カウラちゃんの嗜好と反しないアイディア。これで誠ちゃんも一人前よ。堅物のカウラちゃんにぴったりだし。よく見てるじゃないのカウラちゃんのこと」
満面の笑みで誠を見つめるアメリア。しかしここで突込みがかなめから入ると思って誠は紙に向かおうとする。
「それで誰が堅物なんだ?」
突然響く第三者の声。アメリアが恐る恐る声の方を振り向くとカウラが表情を殺したような様子で立っていた。
「あれ?来てたの」
「鍵が無いんだ、それに私がいても問題の無い話をしていたんだろ?」
そう言って畳に座っているかなめの頭に手を載せる。かなめはカウラの手を振り払うとそのまま一人廊下に飛び出していった。
カウラはじっと誠に視線を向けてきた。
「プレゼントは絵か」
「ええ、まあ……」
そう言う誠にカウラは微笑んでみせる。
「とりえがあるのは悪いことじゃない」
そう言うとカウラは誠から目を離して珍しいものを見るように誠の部屋を眺め回した。
「漫画が多いな。もう少し社会勉強になるようなものを読んだほうが良いな」
誠もアメリアも歩き回るカウラを制するつもりも無かった。どこかしらうれしそうなそんな雰囲気をカウラはかもし出していた。
「気にしないで作業を続けてくれ。神前は本当に絵が上手いのは知っている話だからな」
そう言うとカウラは棚の一隅にあった高校時代の練習用の野球のボールを手にする。
「カウラちゃんあのね……」
アメリアがようやく言葉を搾り出す。その声にカウラが振り向く。引きつっているアメリアの顔に不思議そうな視線を投げかけてくる。
「あれでしょ?もらったときに見たほうが楽しみが増えたりするでしょ?」
「そう言うものなのか?クラウゼのふざけた意見を取り入れた絵だったりしたら怒りが倍増するのは確実かもしれないが」
今度はカウラはその視線を誠に向けてくる。確かに先ほどの意見のいくつかを彼女に見せれば冷酷な表情で破り捨てかねないと思って愛想笑いを浮かべる。
「なるほど、内緒にしたいのか。それなら別にかまわないが……西園寺!」
カウラの強い口調に廊下で様子を伺っていたかなめが顔を覗かせる。
「こちらは二人に任せるが貴様の明日の都心での買い物。私もついて行かせてもらうからな」
「なんでだよ。アタシも秘密にしておいて……」
そこまで言ったところで先ほどとはまるで違う厳しい表情のカウラがそこにいた。
「まあ数千円の買い物ならそれでもかまわないが貴様は……」
カウラは呆れたようにかなめを見つめる。誠も昨日、かなめが気に入らないと買うのをやめたティアラの値段が数百万だったことを思い出しニヤニヤ笑っているかなめに目を向けた。
「なんだよ、実用に足るものを買ってやろうとしただけだぜ。アタシの上官が貧相な宝飾品をつけてそれなりの舞台に立ったなんてことになったらアタシの面子が丸つぶれだ」
そう言うと立ち上がり、かなめは自分より一回り大柄なカウラを見上げる。だがカウラもひるむところが無かった。
「身につけているもので人の価値が変わるという世界に貴様がいたのは知っている。だが、私にまでそんな価値観を押し付けられても迷惑なだけだ」
カウラの言葉がとげのように突き刺さったようでかなめは眼光鋭くカウラをにらみつけた。
「そんなに難しく考えるなよ。要するにだ。アタシの満足できる格好でそう言う舞台に出てくれりゃあいい。それだけの話だ」
そこで話を切り上げようとするかなめだが、カウラはそのつもりは毛頭無かった。
「貴様の身勝手に付き合うのはごめんだな。それならアメリアにも買ってやる必要があるんじゃないのか?」
カウラの言葉に手を打つかなめをアメリアはまばゆい光をまとっているような目で見つめる。
「ああ、そうだな。オメエいるか?」
かなめは渋々そうつぶやいた。だが目の前には満面の笑みで紺色の髪を掻きあげるアメリアの姿がある。
「断る理由が無いじゃないのよ……お・ひ・め・さ・ま!」
「気持ち悪りい!」
しなだれかかるアメリアをかなめは振り払う。だが、その状況でカウラはかなめに高額な宝飾品を断る理由が無くなった。
「でもあまり派手なのは……」
そんなカウラの肩に自信を持っているかなめが手を乗せる。
「わかってるよ。アタシの目を信じな」
かなめには自信がみなぎっている。そんな表情は模擬戦の最中にしか見れないものだった。隣のアメリアもうれしそうに妄想を繰り広げている。
「じゃあ私の目にもかなうもので頼む」
カウラは場が明らかにかなめのペースに飲まれていると感じて不安げに誠に目をやりながら引き下がろうとする。だが、この状況でかなめが彼女を巻き込まないはずが無かった。
「あれ?ついてくるって言わなかったか?自分のセンスで選ぶんだろ?まあセンスがテメエにあればの話だがな」
かなめはそう言って目じりを下げる。カウラはおどおどと戸惑う。アメリアはまだ妄想を続けていた。
「安心しろよ。アタシが行く店は信用が置けるところばかりだからな。つまらないものはアタシが文句を言って下げさせて見せるぞ」
かなめは当然のように胸を張る。それをカウラはさらに心配性な表情で見つめる。すっかり四人で中心街に向かうことになってため息を漏らす誠だった。
「で……僕の絵は?」
「楽しみにしている。西園寺の贈り物よりはな」
カウラはそれだけ言うと出て行った。
「結構な出費になりそうね」
そう言ってにやけたアメリアだが、かなめは別のそれを気にする様子は無かった。
「まあ、何とかなるだろ。……神前、あんまり根はつめるなよ」
そう言うとかなめは右手を上げてそのまま出て行く。それにつられて興味を失ったようにアメリアも続いた。
誠はようやく独りになって礼服姿のカウラを想像しながら下書きに取り掛かろうとした。
誠が立ち上がるのを見るとアメリアも手を合わせる。
「ご馳走様です。おいしかったわね。それじゃあ、私も誠ちゃんの部屋に……」
「なんで貴様が行くんだ?」
カウラの言葉にただ黙って笑みを浮かべてアメリアが立ち上がる。その様子を見てそれまで薫の動きに目を向けていたかなめも思い出したような笑みを浮かべる。
「じゃあアタシもご馳走様で」
「貴様等は何を考えてるんだ?つまらないことなら張り倒すからな」
誠達の行き先が彼の部屋であることを悟ったカウラが見上げてくるのをかなめは楽しそうに見つめる。
「ちょっと時間がねえんだよな、のんびりと説明しているような」
そう言って立ち上がろうとするかなめを追おうとするカウラを薫が抑えた。
「なにか三人にも考えがあるんじゃないの。待ったほうが良いわよ、誠達が教えてくれるまでは」
カウラは薫の言葉に仕方がないというように腰掛けて誠達を見送った。
「なあ、悟られてるんじゃねえのか?」
階段を先頭で歩いていたかなめが振り向く。
「そんなの決まってるじゃないの。誠ちゃんが画材を買ったことはカウラちゃんも知ってるのよ。問題はその絵のインパクトよ」
そう言ってアメリアは誠の肩を叩いた。
「なんでお二人がついてくるんですか?」
さすがの誠も自分の部屋のドアを前にして振り返って二人の上官を見据える。
「それは助言をしようと思って」
「だよな」
あっさりと答えるアメリアとかなめに誠はため息をついた。おそらく邪魔にしかならないのはわかっているが、何を言っても二人には無駄なのはわかっているので誠はあきらめて自分の部屋のドアを開いた。
「なんだ変な匂いだな、おい」
「油性塗料の匂いよ。何に使ったのかしら」
部屋を眺めている二人を置いて誠は買ってきた画材が置いてある自分の机を見つめた。とりあえず誠は椅子においてあった画材を机に並べる。
「あ!こんなところにフィギュアの原型が」
幸いなことにアメリアは以前誠が作ったフィギュアの原型に目をやっている。誠はその隙にと買って来た並べた画材見回すと紙を取り出す。
「しかし……凄い量の漫画だな」
本棚を見つめているかなめを無視して机に紙を固定する。誠は昔から漫画を書いていたので机はそれに向いたつくりとなっていた。手元でなく漫画にかなめの視線が向いているのが誠の気を楽にした。
そして紙を見て、しばらく誠は考えた。
相手はカウラである。媚を売ったポーズなら明らかに軽蔑したような視線が飛んでくるのは間違いが無かった。胸を増量したいところだが、それも結果は同じに決まっていた。
目をつぶって考えている誠の肩をアメリアが叩く。
「やっぱりすぐに煮詰まってるわね」
そんな言葉に自然と誠はうなづいていた。それまで本棚を見ていたかなめもうれしそうに誠に視線を向けてくる。
「まあ、アタシ等の方が奴との付き合いが長いからな」
「そうよね。あの娘が何を期待しているかは誠ちゃんより私達のほうが良く知っているはずよね」
自信満々に答えるアメリアに嫌な予感がしていた。完全に冗談を連発するときの二人の表情がそこにある。そしてそれに突っ込んでいるだけで描く気がうせるのは避けたかった。
「じゃあ、どういうのが良いんですか?」
誠は恐る恐るにんまりと笑う二人の女性士官に声をかけた。
「まず、ああ見えてカウラは自分がお堅いと言われるのが嫌いなんだぜ。知ってるか?」
「ええ、まあ」
はじめのかなめの一言は誠も知っているきわめて常識的な一言だった。アメリアは例外としてもそれなりになじんだ日常を送っている人造人間達に憧れを抱いているように見えることもある。特にサラのなじんだ様子には時々羨望のまなざしを向けるカウラを見ることができた。
「それに衣装もあんまり薄着のものは駄目よ。あの娘のコンプレックスは知ってるでしょ?」
アメリアの指摘。たしかに平らな胸を常にかなめにいじられているのを見ても、誠も最初から水着姿などは避けるつもりでいた。
「あと、露出が多いのも避けるべきだな。あいつはああ見えて恥ずかしがり屋でもあるからな。太ももや腹が露出しているビキニアーマーの女剣士とかは避けろよ」
そんな的確に指摘していくかなめを誠は真顔で覗き見た。二年以上の相棒として付き合ってきただけにかなめの言葉には重みを感じた。確かに先日海に行ったときも肌をあまり晒すような水着は着ていなかった。ここで誠はファンタジー系のイラストはあきらめることにした。
「それならお二人は何が……」
『メイド服』
二人の声があわさって響く。それと同時に誠は耐え難い疲労感に襲われた。
「かなめちゃんまねしないでよね!それにメイド服なら私がプレゼントしたじゃない」
「それを着せてそれを参考にして描けばいいじゃねえか。それに神前……」
ニヤニヤと笑いながら近づいてくるかなめに誠は苦笑いで答える。かなめのうれしそうな表情に誠は思わず身構える。
「考えにはあったんだろ?メイドコスのカウラに萌えーとか」
心理を読むのはさすが嵯峨の姪である。誠は思わず頭を掻いていた。
「ええ、まあ一応」
そんな誠の言葉にかなめは満足げにうなづく。だが突然真剣な、いつも漫画を読むときの厳しい表情になったアメリアがいつもどおりに誠に声をかける。
「まあ冗談はさておいて、何が良いかしら」
「冗談だったのか?」
かなめの言葉。彼女が本気だったのは間違いないが、それにアメリアは大きなため息で返す。そんな彼女をかなめはにらみつける。いつもどおりの光景がそこにあった。
「当たり前でしょ?メイド服は私のプレゼントだけで十分。他のバリエーションも考えなきゃ」
自信満々にアメリアは答える。かなめは不満げに彼女を見上げた。
「そこまで言うんだ、何か案はあるのか?」
もはや絵を描くのが誠だということを忘れたかのような二人の言動に突っ込む気持ちも萎えた誠は椅子に座ってじっと二人を見上げていた。
「一応案はあるんだけど……誠ちゃんも少しはこういうことを考えてもらいたい時期だから」
アメリアは神妙な顔でそう言った。
「何の時期なんだよ!」
かなめが突っ込む。だが、アメリアのうれしそうな瞳に誠は知恵を絞らざるを得なかった。
「そうですね……野球のユニフォーム姿とか」
誠はとりあえずそう言ってみた。アンダースローの精密コントロールのピッチャーとして草野球リーグでのカウラの評判は高かった。俊足好打で知られているアメリアと外野の要で一番バッターを務める島田を別格とすれば注目度は左の技巧派として知られる誠の次に評価が高い。
「なるほどねえ……」
サイボーグであるため大の野球好きでありながらプレーができずに監督として参加しているかなめが大きくうなづいた。
「でも、意外と個性が出ないわよね。ユニフォームと背番号に目が行くだろうし」
アメリアの指摘は的確だった。アンダースローで司法局実働部隊のユニフォームを着て背番号が18。そうなればカウラとはすぐわかるがそれゆえに面白みにかけると誠も思っていた。
「それにカウラちゃんのきれいな緑の髪が帽子で見えないじゃない。それは却下」
そんな一言に誠は少しへこむ。
「そう言えば去年の時代行列の時の写真があっただろ?あれを使うってのはどうだ?」
かなめはそう言って手を打った。豊川八幡宮での節分のイベントに去年から加わった時代行列。源平絵巻を再現した武者行列の担当が司法局実働部隊だった。鎧兜に身を固めたカウラやかなめの姿は誠の徒歩武者向けの鎧を発注するときに見せてもらっていた。凛とした女武者姿の二人。明らかに時代を間違って当世具足を身につけているアメリアの姿に爆笑したことも思い出された。
「あの娘、馬に乗れないわよね。大鎧で歩いているところを描く訳?それとも無理して馬に乗せてみせる?」
アメリアの言葉にまた誠の予定していたデザインが却下された。鉢巻に太刀を構えたカウラの構図が浮かんだだけに誠の落ち込みはさらにひどくなる。
「あとねえ……なんだろうな。パイロットスーツ姿は胸が……。巫女さんなんて言うのはちょっとあいつとは違う感じだろ?」
「巫女さん萌えなんだ、かなめちゃん」
アメリアがかなめの言葉を聞くと満面の笑みを浮かべる。
「ちげえよ馬鹿!」
ののしりあう二人を置いて誠は頭をひねる。だが、どちらかといえば最近はアメリアの企画を絵にすることが多いこともあってなかなか形になる姿が想像できずにいた。
かなめも首をひねって考えている。隣で余裕の表情のアメリアを見れば、いつものかなめならすぐにむきになって手が出るところだが、いい案をひねり出そうとして思案にくれていた。
「黙ってねえで考えろ」
誠にそう言うかなめだが案が思いつきそうに無いのはすぐにわかる。
「じゃあ……甲武風に十二単とか水干直垂とか……駄目ですね。わかりました」
闇雲に言ってみても、ただアメリアが首を横に振るばかりだった。かなめはアメリアの余裕の表情が気に入らないのか口元を引きつらせる。
「もらってうれしいイラストじゃないと。驚いて終わりの一発芸的なものはすべて不可。当たり前の話じゃない」
「白拍子や舞妓さんやおいらん道中も不可ということだな」
かなめの発想にアメリアは呆れたような顔をした後にうなづく。それを聞くとかなめはそのままどっかりと部屋の中央に座り込んだ。部屋の天井の木の板を見上げてかなめはうなりながら考える。
「西洋甲冑……くの一……アラビアンナイト……全部駄目だよな」
アメリアを見上げるかなめ。アメリアは無情にも首を横に振る。
「ヒント……出す?」
「いいです」
誠は完全にからかうような調子のアメリアにそう言うと紙と向かい合う。だがこういう時のアメリアは妥協という言葉を知らない。誠はペンを口の周りで動かしながら考え続ける。カウラの性格を踏まえたうえで彼女が喜びそうなシチュエーションのワンカットを考えてみる。基本的に日常とかけ離れたものは呆れて終わりになる。それは誠にもわかった。
「いっそのこと礼服で良いんじゃないですか?東和陸軍の」
やけになった誠の一言にアメリアが肩を叩いた。
「そうね、カウラちゃんの嗜好と反しないアイディア。これで誠ちゃんも一人前よ。堅物のカウラちゃんにぴったりだし。よく見てるじゃないのカウラちゃんのこと」
満面の笑みで誠を見つめるアメリア。しかしここで突込みがかなめから入ると思って誠は紙に向かおうとする。
「それで誰が堅物なんだ?」
突然響く第三者の声。アメリアが恐る恐る声の方を振り向くとカウラが表情を殺したような様子で立っていた。
「あれ?来てたの」
「鍵が無いんだ、それに私がいても問題の無い話をしていたんだろ?」
そう言って畳に座っているかなめの頭に手を載せる。かなめはカウラの手を振り払うとそのまま一人廊下に飛び出していった。
カウラはじっと誠に視線を向けてきた。
「プレゼントは絵か」
「ええ、まあ……」
そう言う誠にカウラは微笑んでみせる。
「とりえがあるのは悪いことじゃない」
そう言うとカウラは誠から目を離して珍しいものを見るように誠の部屋を眺め回した。
「漫画が多いな。もう少し社会勉強になるようなものを読んだほうが良いな」
誠もアメリアも歩き回るカウラを制するつもりも無かった。どこかしらうれしそうなそんな雰囲気をカウラはかもし出していた。
「気にしないで作業を続けてくれ。神前は本当に絵が上手いのは知っている話だからな」
そう言うとカウラは棚の一隅にあった高校時代の練習用の野球のボールを手にする。
「カウラちゃんあのね……」
アメリアがようやく言葉を搾り出す。その声にカウラが振り向く。引きつっているアメリアの顔に不思議そうな視線を投げかけてくる。
「あれでしょ?もらったときに見たほうが楽しみが増えたりするでしょ?」
「そう言うものなのか?クラウゼのふざけた意見を取り入れた絵だったりしたら怒りが倍増するのは確実かもしれないが」
今度はカウラはその視線を誠に向けてくる。確かに先ほどの意見のいくつかを彼女に見せれば冷酷な表情で破り捨てかねないと思って愛想笑いを浮かべる。
「なるほど、内緒にしたいのか。それなら別にかまわないが……西園寺!」
カウラの強い口調に廊下で様子を伺っていたかなめが顔を覗かせる。
「こちらは二人に任せるが貴様の明日の都心での買い物。私もついて行かせてもらうからな」
「なんでだよ。アタシも秘密にしておいて……」
そこまで言ったところで先ほどとはまるで違う厳しい表情のカウラがそこにいた。
「まあ数千円の買い物ならそれでもかまわないが貴様は……」
カウラは呆れたようにかなめを見つめる。誠も昨日、かなめが気に入らないと買うのをやめたティアラの値段が数百万だったことを思い出しニヤニヤ笑っているかなめに目を向けた。
「なんだよ、実用に足るものを買ってやろうとしただけだぜ。アタシの上官が貧相な宝飾品をつけてそれなりの舞台に立ったなんてことになったらアタシの面子が丸つぶれだ」
そう言うと立ち上がり、かなめは自分より一回り大柄なカウラを見上げる。だがカウラもひるむところが無かった。
「身につけているもので人の価値が変わるという世界に貴様がいたのは知っている。だが、私にまでそんな価値観を押し付けられても迷惑なだけだ」
カウラの言葉がとげのように突き刺さったようでかなめは眼光鋭くカウラをにらみつけた。
「そんなに難しく考えるなよ。要するにだ。アタシの満足できる格好でそう言う舞台に出てくれりゃあいい。それだけの話だ」
そこで話を切り上げようとするかなめだが、カウラはそのつもりは毛頭無かった。
「貴様の身勝手に付き合うのはごめんだな。それならアメリアにも買ってやる必要があるんじゃないのか?」
カウラの言葉に手を打つかなめをアメリアはまばゆい光をまとっているような目で見つめる。
「ああ、そうだな。オメエいるか?」
かなめは渋々そうつぶやいた。だが目の前には満面の笑みで紺色の髪を掻きあげるアメリアの姿がある。
「断る理由が無いじゃないのよ……お・ひ・め・さ・ま!」
「気持ち悪りい!」
しなだれかかるアメリアをかなめは振り払う。だが、その状況でカウラはかなめに高額な宝飾品を断る理由が無くなった。
「でもあまり派手なのは……」
そんなカウラの肩に自信を持っているかなめが手を乗せる。
「わかってるよ。アタシの目を信じな」
かなめには自信がみなぎっている。そんな表情は模擬戦の最中にしか見れないものだった。隣のアメリアもうれしそうに妄想を繰り広げている。
「じゃあ私の目にもかなうもので頼む」
カウラは場が明らかにかなめのペースに飲まれていると感じて不安げに誠に目をやりながら引き下がろうとする。だが、この状況でかなめが彼女を巻き込まないはずが無かった。
「あれ?ついてくるって言わなかったか?自分のセンスで選ぶんだろ?まあセンスがテメエにあればの話だがな」
かなめはそう言って目じりを下げる。カウラはおどおどと戸惑う。アメリアはまだ妄想を続けていた。
「安心しろよ。アタシが行く店は信用が置けるところばかりだからな。つまらないものはアタシが文句を言って下げさせて見せるぞ」
かなめは当然のように胸を張る。それをカウラはさらに心配性な表情で見つめる。すっかり四人で中心街に向かうことになってため息を漏らす誠だった。
「で……僕の絵は?」
「楽しみにしている。西園寺の贈り物よりはな」
カウラはそれだけ言うと出て行った。
「結構な出費になりそうね」
そう言ってにやけたアメリアだが、かなめは別のそれを気にする様子は無かった。
「まあ、何とかなるだろ。……神前、あんまり根はつめるなよ」
そう言うとかなめは右手を上げてそのまま出て行く。それにつられて興味を失ったようにアメリアも続いた。
誠はようやく独りになって礼服姿のカウラを想像しながら下書きに取り掛かろうとした。
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SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。
その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。
しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。
さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。
直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。
他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。
しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。
考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。
誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第五部
遼州人の青年神前誠(しんぜんまこと)が司法局実働部隊機動部隊第一小隊に配属になってからほぼ半年の時が過ぎようとしていた。
訓練場での閉所室内戦闘訓練からの帰りの途中、誠は周りの見慣れない雪景色に目を奪われた。
そんな誠に小隊長のカウラ・ベルガー大尉は彼女がロールアウトした時も同じように雪が降っていたと語った。そして、その日が12月25日であることを告げた。そして彼女がロールアウトして今年で9年になる新しい人造人間であること誠は知った。
同行していた運用艦『ふさ』の艦長であるアメリア・クラウゼ中佐は、クリスマスと重なるこの機会に何かイベントをしようと第二小隊のもう一人の隊員西園寺かなめ大尉に語り掛けた。
こうしてアメリアの企画で誠の実家である『神前一刀流道場』でのカウラのクリスマス会が開催されることになった。
誠の家は母が道場主を務め、父である誠一は全寮制の私立高校の剣道教師としてほとんど家に帰らない家だった。
四人は休みを取り、誠の実家で待つ誠の母、神前薫(しんぜんかおる)のところを訪れた。
そこで待ち受けているのは上流貴族であるかなめのとんでもなく上品なプレゼントを買いに行く行事、誠の『許婚』を自称するかなめの妹で両刀遣いの変態マゾヒスト日野かえで少佐の訪問、アメリアの部下である運航部の面々による蟹パーティーなどの忙しい日々だった。
そんな中、誠はカウラへのプレゼントとしてイラストを描くことを思いつき、様々な妨害に会いながらもなんとか仕上げることが出来たのだが……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅
シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。
探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。
その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。
エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。
この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。
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プロモーション用の動画を作成しました。
オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。
https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
3024年宇宙のスズキ
神谷モロ
SF
俺の名はイチロー・スズキ。
もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。
21世紀に生きていた普通の日本人。
ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。
今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。
※この作品はカクヨムでも掲載しています。
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