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警備活動
第14話 食事
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「じゃあ、海老チャーハン……」
店員がそう言うとアメリアがさっと手を挙げる。オカモチから出された海老チャーハンが湯気を挙げているのを見てアメリアは満足げに店員が差し出したレンゲと箸を受け取った。
「アタシとこいつは排骨麺で……」
「私は回鍋肉定食で」
かなめとカウラの言葉に店員はうなづきながら料理を畳の上に並べていく。
「じゃあいただきます!」
アメリアはかなめが店員の並べた料理を炬燵に載せていくのを待たずに海老チャーハンについてきたスープを飲み始めた。
「いやしいねえ……待つってことを知らないんだな……叔父貴、切るぞ」
『ああ、飯食って充電してくれや』
嵯峨はそう言って通信を切った。挑発するようなかなめの一言にアメリアはかなめを一瞥したあと、無視してチャーハンにレンゲを突き立てた。
「別に貴様の得意のテーブルマナーなどはないんだろ?」
回鍋肉にかけられたラップを外しながらカウラがつぶやく。かなめは面白くないというように箸を口にくわえてカウラをにらみつけた。
「凄んだって駄目よ、かなめちゃん」
一言アメリアはそう言って再びチャーハンに取り組む。
「飯はいいとしてだ。話を元に戻してだ……神前の実家か。車で行くのか?」
排骨麺のスープをすすりながらかなめが誠に目をやる。誠はそのまま視線をカウラに移した。
「幸い神前の実家は庭が広いからな。車の一台や二台停めても大丈夫だろ」
ご飯をかき込んだ後、カウラはそう言って誠を見た。
「でも……下町と言っても都内でしょ、誠ちゃんの家。お母さんの実家なんだっけ?」
アメリアに言われて誠は静かにうなづきながら麺をすすった。
「そりゃそうだろ。高校教師の月給で都内に千坪なんて無理だって」
「そう言う西園寺の実家は」
「カウラ……アタシの家の話はするな」
甲武国、四大公筆頭で帝都に豪邸を構えているかなめのことを思えば、誠の実家などボロ屋も同然だった。しかし、誠がうまく軍で出世しても実家のような規模の家を買うことなど夢のまた夢なのは誠にもわかっていた。
「で、明後日車で移動して……でも混むのよね、高速」
なぜかチャーハンの海老を一つ一つ皿の端に集めながらアメリアはそうこぼした。
「確かにな。平日はトラック、年末になれば帰省の車で渋滞だろうな」
すでに付いていた定食のスープを飲み終えたカウラがそう言ってアメリアに目をやる。
「電車か?勘弁してくれよ……どうせ都心に入ったら何度も乗り換えて、その度に人ごみに揉まれて……」
「西園寺。それは分かったうえで車を出すという話をしているんだぞ」
愚痴るかなめにカウラはそう言って誠に目をやった。一人沈黙して排骨麺を食べていた誠に三人の視線は集中した。
「正月とかだと東都浅間神社の周りは交通規制が敷かれるんで……」
「明後日は正月じゃないぞ。それに東都浅間はどうせオメエの家から歩いて行けるんだろ?行きと帰りの話をしてるんだ」
かなめの言葉に誠は苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。
「じゃあ足はカウラちゃんに頼むとして……って今から細かく決めても……どうせ誰かがめちゃくちゃにするし」
「アメリア。それはアタシのことを言ってるんだな?そうだな?」
排骨麺の肉ばかり先に食べてどんぶりの中に残った麺を箸で漁りながらかなめがアメリアをにらみつける。
「くだらないことで怒るな。まあ、休日だ。どうせアメリアが夏の海に行った時みたいに『クリスマスのしおり』なんて作ってもどうせ無駄になるだけだからな」
「カウラちゃんひどいわよ。その言い方」
アメリアはそう言いながらため込んだ海老を一気に口に入れて頬張った。
「でも事実だからな。オメエの計画。予定通りに行ったことあんのか?」
スープを飲み終えたかなめがタレ目をさらに垂れさせてアメリアに挑戦するようにつぶやいた。
「いいじゃないの!」
海老を食べ終えたアメリアはそう言って誠に目をやる。
「僕がどうかしました?」
楊枝で前歯を掃除していた誠を一瞥するとアメリアは大きくため息をついた。
「神前は悪くないぞ。予定がうまくいかないのは、ほとんど……アメリア。貴様のせいじゃないか」
カウラは茶碗に残った最後の白米を口に入れながらアメリアを見つめる。
「え?私?いつも私は予定の遂行を優先して……」
口ごもるアメリアを横目に、かなめは箸をどんぶりの上に載せて手を合わせる。
「じゃあ、ごちそうさん。アメリア。そんな話はどうでもいいんだよ。なるようになるってことでいいじゃん」
「かなめちゃんはいつだってそうやって行き当たりばったりで……」
レンゲを置いたアメリアはそう言ってかなめに抗議する。
「予定通りじゃなくても問題は起きていない。アメリア、お前の予定ははっきり言って無駄だ」
カウラのとどめの一言にアメリアはそのままうなだれて見せる。
「じゃあ……空いたお皿とかは僕が洗いますんで」
そう言って立ち上がる誠を見て三人は大きくうなづいた。とりあえず雑用は誠がやる。それだけが三人の共通認識らしいことに気づいて、誠はただ乾いた笑みを浮かべるだけだった。
店員がそう言うとアメリアがさっと手を挙げる。オカモチから出された海老チャーハンが湯気を挙げているのを見てアメリアは満足げに店員が差し出したレンゲと箸を受け取った。
「アタシとこいつは排骨麺で……」
「私は回鍋肉定食で」
かなめとカウラの言葉に店員はうなづきながら料理を畳の上に並べていく。
「じゃあいただきます!」
アメリアはかなめが店員の並べた料理を炬燵に載せていくのを待たずに海老チャーハンについてきたスープを飲み始めた。
「いやしいねえ……待つってことを知らないんだな……叔父貴、切るぞ」
『ああ、飯食って充電してくれや』
嵯峨はそう言って通信を切った。挑発するようなかなめの一言にアメリアはかなめを一瞥したあと、無視してチャーハンにレンゲを突き立てた。
「別に貴様の得意のテーブルマナーなどはないんだろ?」
回鍋肉にかけられたラップを外しながらカウラがつぶやく。かなめは面白くないというように箸を口にくわえてカウラをにらみつけた。
「凄んだって駄目よ、かなめちゃん」
一言アメリアはそう言って再びチャーハンに取り組む。
「飯はいいとしてだ。話を元に戻してだ……神前の実家か。車で行くのか?」
排骨麺のスープをすすりながらかなめが誠に目をやる。誠はそのまま視線をカウラに移した。
「幸い神前の実家は庭が広いからな。車の一台や二台停めても大丈夫だろ」
ご飯をかき込んだ後、カウラはそう言って誠を見た。
「でも……下町と言っても都内でしょ、誠ちゃんの家。お母さんの実家なんだっけ?」
アメリアに言われて誠は静かにうなづきながら麺をすすった。
「そりゃそうだろ。高校教師の月給で都内に千坪なんて無理だって」
「そう言う西園寺の実家は」
「カウラ……アタシの家の話はするな」
甲武国、四大公筆頭で帝都に豪邸を構えているかなめのことを思えば、誠の実家などボロ屋も同然だった。しかし、誠がうまく軍で出世しても実家のような規模の家を買うことなど夢のまた夢なのは誠にもわかっていた。
「で、明後日車で移動して……でも混むのよね、高速」
なぜかチャーハンの海老を一つ一つ皿の端に集めながらアメリアはそうこぼした。
「確かにな。平日はトラック、年末になれば帰省の車で渋滞だろうな」
すでに付いていた定食のスープを飲み終えたカウラがそう言ってアメリアに目をやる。
「電車か?勘弁してくれよ……どうせ都心に入ったら何度も乗り換えて、その度に人ごみに揉まれて……」
「西園寺。それは分かったうえで車を出すという話をしているんだぞ」
愚痴るかなめにカウラはそう言って誠に目をやった。一人沈黙して排骨麺を食べていた誠に三人の視線は集中した。
「正月とかだと東都浅間神社の周りは交通規制が敷かれるんで……」
「明後日は正月じゃないぞ。それに東都浅間はどうせオメエの家から歩いて行けるんだろ?行きと帰りの話をしてるんだ」
かなめの言葉に誠は苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。
「じゃあ足はカウラちゃんに頼むとして……って今から細かく決めても……どうせ誰かがめちゃくちゃにするし」
「アメリア。それはアタシのことを言ってるんだな?そうだな?」
排骨麺の肉ばかり先に食べてどんぶりの中に残った麺を箸で漁りながらかなめがアメリアをにらみつける。
「くだらないことで怒るな。まあ、休日だ。どうせアメリアが夏の海に行った時みたいに『クリスマスのしおり』なんて作ってもどうせ無駄になるだけだからな」
「カウラちゃんひどいわよ。その言い方」
アメリアはそう言いながらため込んだ海老を一気に口に入れて頬張った。
「でも事実だからな。オメエの計画。予定通りに行ったことあんのか?」
スープを飲み終えたかなめがタレ目をさらに垂れさせてアメリアに挑戦するようにつぶやいた。
「いいじゃないの!」
海老を食べ終えたアメリアはそう言って誠に目をやる。
「僕がどうかしました?」
楊枝で前歯を掃除していた誠を一瞥するとアメリアは大きくため息をついた。
「神前は悪くないぞ。予定がうまくいかないのは、ほとんど……アメリア。貴様のせいじゃないか」
カウラは茶碗に残った最後の白米を口に入れながらアメリアを見つめる。
「え?私?いつも私は予定の遂行を優先して……」
口ごもるアメリアを横目に、かなめは箸をどんぶりの上に載せて手を合わせる。
「じゃあ、ごちそうさん。アメリア。そんな話はどうでもいいんだよ。なるようになるってことでいいじゃん」
「かなめちゃんはいつだってそうやって行き当たりばったりで……」
レンゲを置いたアメリアはそう言ってかなめに抗議する。
「予定通りじゃなくても問題は起きていない。アメリア、お前の予定ははっきり言って無駄だ」
カウラのとどめの一言にアメリアはそのままうなだれて見せる。
「じゃあ……空いたお皿とかは僕が洗いますんで」
そう言って立ち上がる誠を見て三人は大きくうなづいた。とりあえず雑用は誠がやる。それだけが三人の共通認識らしいことに気づいて、誠はただ乾いた笑みを浮かべるだけだった。
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