35 / 43
仕事も終わり
第35話 注文の品
しおりを挟む
「盛り上がってるところお邪魔だったかしら?」
いつの間にか階段のところには家村親子がお盆を手に立っていた。
「いや良いんですよ!並べてください」
かなめはそう言うと自分をにらみつけてくる小夏に嫌味たっぷりの笑みを浮かべる。
「はい、焼鳥盛り合わせ」
小夏は叩きつけるようにかなめの前に皿を置いた。
「それが客に対する態度かよ」
「外道は客には入らないの!」
小夏はふくれっ面でそう言うと見慣れない麗子には満面の笑みで接客する。
ただ一人、この和んだ雰囲気に入り込めない人物が存在した。
「まあ……これが焼鳥ですの……どう食べれば……」
麗子は初めて見る焼鳥を不思議そうに眺めた。茶色い肉の焼いたものの香りは麗子も気に入っているようだったが、その目は不思議なものを見るような色をたたえて皿の上に並べられた焼鳥の串を見つめていた。
「見て分かんねえかな……串もってこうだ」
かなめはネギまを手に取るとそのまま口に運んだ。そのまま一気に口に持っていきがぶりとかみちぎる。
「手で串を持つんですの……ちょっとそれは……」
ためらいがちに麗子はレバーに手を伸ばした。それはあまりに恐る恐ると言う調子だったので新しいビールを飲み始めた島田のツボに入ったのか彼は急に咽始めた。
「ああ、田安中佐。こういう食べ方もありますよ。まず、串を持って」
麗子の目の前に座っていたパーラが気を利かせてまず鶏もも串を目の前の小皿に移す。
「そして一切れ一切れ串から外して……」
パーラは器用に箸で串から肉を離していく。
「パーラ。そんな食い方して旨えか?焼鳥は串から直接食う!それが一番!麗子、やってみろ!」
上品な食べ方を教えようとするパーラを遮ってかなめはそう叫んだ。そしてついでにネギまのネギを口に放り込む。
「串から直接……」
「田安中佐。そんな食べ方したら喉を突きますよ」
レバーをそのまま口に突っ込もうとする麗子にカウラが思わずそう言った。
「見てろ麗子。こう食うんだ」
かなめはそう言うと器用に焼鳥を食べる。
「ずいぶんとまた……豪快ですわね……ちょっと、この肉苦いですわよ」
「レバーは苦いもんだ。それが癖になるんだ」
戸惑う麗子をかなめが鼻で笑う。
「甲武の庶民もこうやって焼鳥を食べるんですか?」
誠は鶏もも串を平らげた鳥居にそう尋ねた。
「まあ……そうですね。軍に入ってからは何度か同僚と行きましたが東和と変わらないですよ」
鳥居はそう言って誠に微笑みかけてくる。
「同じ日本語文化圏だもんね……まあ日本語が使われてるけど遼帝国はちょっと違うけど……でも、味付けとかは?」
アメリアは笑顔で鳥居に尋ねた。
「店によってまちまちなのは東和と同じですよ。自分はここの味付け好きですよ」
「そりゃあ良かった……食え、食え」
かなめはまるで主気取りでそう言った。
「じゃあごゆっくり」
家村春子はそう言って麗子を肴に盛り上がっている一同を二階において出ていった。
いつの間にか階段のところには家村親子がお盆を手に立っていた。
「いや良いんですよ!並べてください」
かなめはそう言うと自分をにらみつけてくる小夏に嫌味たっぷりの笑みを浮かべる。
「はい、焼鳥盛り合わせ」
小夏は叩きつけるようにかなめの前に皿を置いた。
「それが客に対する態度かよ」
「外道は客には入らないの!」
小夏はふくれっ面でそう言うと見慣れない麗子には満面の笑みで接客する。
ただ一人、この和んだ雰囲気に入り込めない人物が存在した。
「まあ……これが焼鳥ですの……どう食べれば……」
麗子は初めて見る焼鳥を不思議そうに眺めた。茶色い肉の焼いたものの香りは麗子も気に入っているようだったが、その目は不思議なものを見るような色をたたえて皿の上に並べられた焼鳥の串を見つめていた。
「見て分かんねえかな……串もってこうだ」
かなめはネギまを手に取るとそのまま口に運んだ。そのまま一気に口に持っていきがぶりとかみちぎる。
「手で串を持つんですの……ちょっとそれは……」
ためらいがちに麗子はレバーに手を伸ばした。それはあまりに恐る恐ると言う調子だったので新しいビールを飲み始めた島田のツボに入ったのか彼は急に咽始めた。
「ああ、田安中佐。こういう食べ方もありますよ。まず、串を持って」
麗子の目の前に座っていたパーラが気を利かせてまず鶏もも串を目の前の小皿に移す。
「そして一切れ一切れ串から外して……」
パーラは器用に箸で串から肉を離していく。
「パーラ。そんな食い方して旨えか?焼鳥は串から直接食う!それが一番!麗子、やってみろ!」
上品な食べ方を教えようとするパーラを遮ってかなめはそう叫んだ。そしてついでにネギまのネギを口に放り込む。
「串から直接……」
「田安中佐。そんな食べ方したら喉を突きますよ」
レバーをそのまま口に突っ込もうとする麗子にカウラが思わずそう言った。
「見てろ麗子。こう食うんだ」
かなめはそう言うと器用に焼鳥を食べる。
「ずいぶんとまた……豪快ですわね……ちょっと、この肉苦いですわよ」
「レバーは苦いもんだ。それが癖になるんだ」
戸惑う麗子をかなめが鼻で笑う。
「甲武の庶民もこうやって焼鳥を食べるんですか?」
誠は鶏もも串を平らげた鳥居にそう尋ねた。
「まあ……そうですね。軍に入ってからは何度か同僚と行きましたが東和と変わらないですよ」
鳥居はそう言って誠に微笑みかけてくる。
「同じ日本語文化圏だもんね……まあ日本語が使われてるけど遼帝国はちょっと違うけど……でも、味付けとかは?」
アメリアは笑顔で鳥居に尋ねた。
「店によってまちまちなのは東和と同じですよ。自分はここの味付け好きですよ」
「そりゃあ良かった……食え、食え」
かなめはまるで主気取りでそう言った。
「じゃあごゆっくり」
家村春子はそう言って麗子を肴に盛り上がっている一同を二階において出ていった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
What a Wonderful World
一兎風タウ
SF
紀元後3518年。
荒廃したこの地には、戦闘用アンドロイド軍『オリュンポス軍』のみが存在していた⋯。
ー⋯はずだった。
十数年前に壊滅させた戦闘用アンドロイド軍『高天原軍』が再侵攻を始めた。
膠着状態となり、オリュンポス軍最高司令官のゼウスは惑星からの離脱、および爆破を決定した。
それに反発したポー、ハデス、ヘスティアの3人は脱走し、この惑星上を放浪する旅に出る。
これは、彼らが何かを見つけるための物語。
SF(すこしふしぎ)漫画の小説版。
我ら新興文明保護艦隊
ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら?
もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら?
これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。
※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
鎌倉最後の日
もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる