特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第八部 「監査が来たぞ!」

橋本 直

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仕事も終わり

第30話 到着と……

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いつものようにかなめお気に入りの歌を流しながらカウラの『ハコスカ』は月島屋近くのコインパーキングに到着した。

 商店街は冬らしく静かで帰りの時間だというのに人通りもまばらだった。

「まだなのか……」

人気のない月島屋の店頭に立ったカウラはワンボックスカーでは追尾不能な運転をしながらあっさりとそう言ってのける。

「あ、皆さんお揃いで」

 月島屋の看板娘、家村小夏がそう言って誠達を迎え入れる。いつもの中学校の制服姿が誠にはまぶしかった。

「今日は余計なのがついてるからな」

「余計なのは……外道。それはテメエだろ?」

 いつものようにかなめと小夏の間に険悪な雰囲気が漂う。かなめは挑発に乗りそうになるがさすがに左脇に下げた銃に手をやるほどではなかった。

「まま、良いじゃ無いですか……とりあえず入りましょう」

 誠はそう言って月島屋の縄のれんをくぐった。

 開店直後とあって人影はなかった。暖房に当てられて火照る頬を気にしながら誠は店内を見回した。

「あら、いらっしゃい」

 この店の女将である小夏の母、家村春子が誠達を迎えた。いつも通り紫色の和服姿でニコニコと微笑んでいる。

「かなめちゃん伝えてなかったの……今日はちょっと面倒な人が来るって」

「面倒か?ああ、面倒だな」

アメリアのささやきにかなめは気にしていないというようにそのまま奥の二階の座敷につながる階段に向かった。

「やはり奥座敷か?」

「アイツにいきなりカウンターなんて無理だよ。寿司屋だってアイツはカウンターは嫌がるんだ……食べてるところを作っている奴に見られたくないってな」

 カウラの問いにそう答えるとかなめは階段を上り始めた。

 月島屋の二階はこじんまりとして気取った雰囲気ではない。こぎれいな座布団の敷かれた座敷で誠達はそれぞれどこに座るべきかと思案しながら立っていた。

「パーラは安全運転だからな……待つか」

 そう言ってかなめは奥の上座に座った。

「そこは上座よ。私が座るわ」

 アメリアは座ってタバコを取り出したかなめをにらみつける。

「まあそうだな……オメエは少佐だし。部長だし、年上だし」

 珍しくかなめは反論することもなくその隣に移った。

「珍しいですね……西園寺さんが何も言わずにアメリアさんに場所を譲るなんて」

「甲武は身分制の国だからな……地が出たんだろ」

「カウラ聞こえてんぞ」

 カウラの苦笑いにかなめはそう言って反論する。

「着きました!」

 最初に二階に上がってきたのはサラと島田だった。

「まだですか?」

 まだお通しも来ていない状況に島田は苦笑いを浮かべながら入り口近くに座った。サラもまたその隣に座る。

「どうしたんだよ……ヤンキー王だろ?もう少しでかい態度でいた方が良いんじゃないのか?」

 かなめの指摘に島田は照れ笑いを浮かべた。

「あのお姫様の話を聞いてたらそんな気分にはなれなくて」

「誰がお姫様ですの?」

 島田の言葉を聞いていたのか、麗子は大きな態度でそこに現れた。

「オメエは本当にいいタイミングで現れるな」

「それは誉め言葉ですわね」

 麗子はそのまま迷いもせずにアメリアが座ろうとした一番奥の上座に座った。全員がそのあまりに自然な態度に呆れている。一人自分の席を取られたかなめは不服そうにタバコに火をつけて部屋の隅に座り込んだ。
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