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帰ってくる問題児
第25話 カオスな展開
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「入っていいわよ」
運航部の部屋から顔を出したアメリアを見ると麗子は咳払いをしてそのまま部屋に入った。
「やっぱり片付けたんですね」
誠はいつも飾られている映画に使った衣装のマネキンやギャグに使うタライや一斗缶が目につかないのを見てそうつぶやいた。
「どう、ちゃんとしたもんでしょ」
ピンク色の髪のラストバタリオンの士官であるサラ・グリファン中尉が部屋の中央で胸を張った。
「自慢になるかそんなこと」
かなめは明らかにやっつけで片づけたことが分かる部屋の隅の布をかぶせた一隅を見てそうつぶやいた。
「田安中佐、見てもそんなに面白いモノじゃないですよ」
水色のショートカットの士官、パーラ・ラビロフ大尉はそう言ってきょろきょろと部屋を見回す麗子に声をかけた。
「これはパラダイスですわね」
「パラダイスだ?」
確かに美女ぞろいの運航部は麗子にとってはパラダイスなのだろう。しかし、アメリアから麗子について何か吹き込まれているブリッジクルーの隊員達は麗子から距離を取っていた。
「聞いていたのとは違って……ずいぶん静かですわね」
異変に気付いたのか麗子はそう言って小首をかしげる。
「どんなふうに聞いてたんだ?」
「なんでも芸人集団でいつも笑いが絶えないとか」
麗子は机にかじりついて彼女と関わり合いになるまいと頑張っているアメリアの部下達の顔をいちいちのぞき見る。
「噂は噂。こんなもんですよ、うちは」
アメリアはそう言ってごまかしにかかった。そんな彼女の思惑を無視するかのように一人写真を撮り続けていた鳥居が布で覆われた部屋の一隅の存在に気づいた。
「田安中佐。これは何でしょう?」
大きなカメラで写真を撮りながら鳥居はじりじりとそれに近づいていく。
「なんでしょうねえ……気になりますわねえ」
麗子と鳥居が布の中にある衣装や小道具に近づいていくのを見てアメリアは素早くその前に回り込んだ。
「うちは見るとこなんて無いんですよ!じゃあ次に行きましょう!」
珍しく焦っているアメリアを見てかなめが噴き出した。
「でも……その布の掛けてある下に何があるのか……」
「書類ですよ!段ボールむき出しじゃかっこ悪いじゃ無いですか!武門の棟梁たる田安中佐にそんなものお見せできませんよ」
アメリアはそう言って不思議そうに彼女を見つめる麗子を押しとどめた。
「書類?そうは見えませんけど」
麗子は長身のアメリアの小脇から顔を出しながら部屋の隅の布の掛けてある一隅をのぞき見る。
「アメリア……どうする?」
他人事であるかなめはニヤニヤしながら慌てているアメリアに目をやった。
「かなめちゃん……なんとかならないかしら」
追い詰められたアメリアはそう言ってかなめに助けを求める。
「貸しだな……麗子。それより叔父貴に挨拶しねえで良いのか?一応監査だろ?部隊長の顔を見ねえで帰るってのは感心しねえぞ」
かなめは満面の笑みを浮かべて麗子にそう言った。
「そうですわね。内府殿には甲武でお会いしてからご挨拶していませんもの……鳥居、行きますわよ」
麗子はもうすでに目の前の不審な物体のことは忘れ果てたというようにそう言って部屋を出ていった。
「切り替えが早いというかなんと言うか……」
その目移りする態度にカウラは呆れたようにそうつぶやく。
「まあ、うちが暇なときは遊んでるってバレると色々面倒ですから」
誠はそう言うとドアの前で立ってそこが開くのを待っている麗子を先導して扉を開いた。
運航部の部屋から顔を出したアメリアを見ると麗子は咳払いをしてそのまま部屋に入った。
「やっぱり片付けたんですね」
誠はいつも飾られている映画に使った衣装のマネキンやギャグに使うタライや一斗缶が目につかないのを見てそうつぶやいた。
「どう、ちゃんとしたもんでしょ」
ピンク色の髪のラストバタリオンの士官であるサラ・グリファン中尉が部屋の中央で胸を張った。
「自慢になるかそんなこと」
かなめは明らかにやっつけで片づけたことが分かる部屋の隅の布をかぶせた一隅を見てそうつぶやいた。
「田安中佐、見てもそんなに面白いモノじゃないですよ」
水色のショートカットの士官、パーラ・ラビロフ大尉はそう言ってきょろきょろと部屋を見回す麗子に声をかけた。
「これはパラダイスですわね」
「パラダイスだ?」
確かに美女ぞろいの運航部は麗子にとってはパラダイスなのだろう。しかし、アメリアから麗子について何か吹き込まれているブリッジクルーの隊員達は麗子から距離を取っていた。
「聞いていたのとは違って……ずいぶん静かですわね」
異変に気付いたのか麗子はそう言って小首をかしげる。
「どんなふうに聞いてたんだ?」
「なんでも芸人集団でいつも笑いが絶えないとか」
麗子は机にかじりついて彼女と関わり合いになるまいと頑張っているアメリアの部下達の顔をいちいちのぞき見る。
「噂は噂。こんなもんですよ、うちは」
アメリアはそう言ってごまかしにかかった。そんな彼女の思惑を無視するかのように一人写真を撮り続けていた鳥居が布で覆われた部屋の一隅の存在に気づいた。
「田安中佐。これは何でしょう?」
大きなカメラで写真を撮りながら鳥居はじりじりとそれに近づいていく。
「なんでしょうねえ……気になりますわねえ」
麗子と鳥居が布の中にある衣装や小道具に近づいていくのを見てアメリアは素早くその前に回り込んだ。
「うちは見るとこなんて無いんですよ!じゃあ次に行きましょう!」
珍しく焦っているアメリアを見てかなめが噴き出した。
「でも……その布の掛けてある下に何があるのか……」
「書類ですよ!段ボールむき出しじゃかっこ悪いじゃ無いですか!武門の棟梁たる田安中佐にそんなものお見せできませんよ」
アメリアはそう言って不思議そうに彼女を見つめる麗子を押しとどめた。
「書類?そうは見えませんけど」
麗子は長身のアメリアの小脇から顔を出しながら部屋の隅の布の掛けてある一隅をのぞき見る。
「アメリア……どうする?」
他人事であるかなめはニヤニヤしながら慌てているアメリアに目をやった。
「かなめちゃん……なんとかならないかしら」
追い詰められたアメリアはそう言ってかなめに助けを求める。
「貸しだな……麗子。それより叔父貴に挨拶しねえで良いのか?一応監査だろ?部隊長の顔を見ねえで帰るってのは感心しねえぞ」
かなめは満面の笑みを浮かべて麗子にそう言った。
「そうですわね。内府殿には甲武でお会いしてからご挨拶していませんもの……鳥居、行きますわよ」
麗子はもうすでに目の前の不審な物体のことは忘れ果てたというようにそう言って部屋を出ていった。
「切り替えが早いというかなんと言うか……」
その目移りする態度にカウラは呆れたようにそうつぶやく。
「まあ、うちが暇なときは遊んでるってバレると色々面倒ですから」
誠はそう言うとドアの前で立ってそこが開くのを待っている麗子を先導して扉を開いた。
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